111、協力者になってしまった私
ちょっとワクワクしながらマルタに続いて私とアレスが三階へ昇る。
冒険だ、とワクワク。一応私の冒険セット、ポシェットとぬいぐるみを持ってきた。
ところが階段が途中で封鎖されていた。
木の板で通れないようにしてある。
残念行けないか。と思ったが、
マルタがスカートをめくったと思ったら中から"バールのような物"を出してきた。
マルタまでそんなところに武器? を隠してるの!?
うちのメイドさん達のスカートの中はどうなっているのか!?
「えいっ!」
マルタは封鎖してある木をバールで外そうとしている。
「うーーーん!」
パキ!
惜しい! 力がないせいで周りが少し割れただけ……
これは三階に行けないね。
でもマルタは諦めずにもう一度頑張る。
顔を真っ赤にして力を込めて頑張っているが全く歯が立たない。
その姿は一生懸命でかわいい。
「アレス、手伝ってあげて」
アレスが木の板を掴んだ。
バキバキ!
壊した。
おお、あっさりと……
さすがあの重たそうな両手剣を扱うだけあるのか。
派手な音がしたから気づかれちゃうかな?
まあ、早めにロイドが迎えに来た方が平和だろうし……
誤解なんだから仲直りした方がいいよ。
ロイドが来たら私はサッと退散だ。
着ぐるみウサギを着て逃げようと思っていたが、アレスがいたら私もいたのは、ばればれだ。
封鎖されていた先に行く。
マルタが足を止めた。
四階に行く階段を見つめている。
四階への階段は三階の封鎖と違い物凄い完全に閉ざしてある。蟻の一匹も通さない感じでガッチリ封鎖されていた。
これに比べたら三階の封鎖など、通ろうと思えば通れちゃう軽いものだ。
マルタが震えている。
四階の階段を見つめたまま動かない。
ちょっと様子が変だ。
「マルタ? どうしたの? 上には行けないなら三階でいいじゃない?」
三階のフロアを見た。暗いから怖そうに見える。
はあ、はあ、
マルタの呼吸が荒くなってきた。
震えて冷や汗も出ている。
これは不味いのでは!?
マルタには何か病気もある筈!
急に体調を悪くしたの?
「アレス、マルタを抱えて、下に戻ろう!」
急いで階段を降りると、ちょうどそこにロイドがいた。
さっきの音で見に来たのだろう。
「ロイド、マルタの様子がおかしいの!」
アレスからマルタを受け取る。
ロイドがマルタを抱えた。呼吸がおかしい。
「マルタ、落ち着いてくれ、もう大丈夫だ」
手を握り落ち着かせようとする。
マルタの瞳からは涙がポロポロ出ている。呼吸はどんどん苦しそうになっていく。
私はどうしていいか分からずおろおろした。
ロイドの口がマルタの口を塞いだ。
!?
それ、"ちゅう"だよ!?
私は固まって見ていた。
何分? 1分? 2分? いや、3分くらいそうしてた?
チュウ? チュウだよね?
子供の前で何してんの?
あ、でも西洋っぽいから私の感覚よりオープンなの?
私が混乱していると
フーーーーー。
マルタの様子が落ち着いたようだ。
何だったん?
あ、これは強いストレスでくる過呼吸とか、そんなんだったのかな?
「ロイ……ごめんなさい」
マルタが謝った。
「怖いことを思い出すから上には行くなと言った筈だ」
あ、禁じられてたのに行っちゃたの?
しかも私、協力しちゃってるじゃん。マズイ。
今から逃げても遅いよね……?




