10、それは嫌がらせだ!
や、やられた………。
翌朝着替えを終えて部屋を出ると、いつもの屍兵の鎧(銀色)と違う黒い鎧を着た兵士が立っていた。また仮面を着けている。怪しい。
隣には、不気味ににっこり嗤うロイドがいる。
「おはようございます姫様。
今日から姫様のお部屋の護衛は屍戦士が勤めます。下の階の警備も屍戦士を揃えました。これで姫様のご希望どおりですね。」
うわ~~~なんだこれ。
「姫様がどうしても屍兵が嫌だと仰るので屍兵より数の少ない屍戦士を急遽集めて参りました。良かったですね。屍兵よりも強くて貴重な屍戦士ですよ。」
こ…こいつ…
「いやー正直ここまでの数を一晩で揃えるのは大変でした。しかし姫様に喜んでいただけるのでしたら恐悦至極にございます。」
こ、こいつ…ぬけぬけと…わかっててやってるな?!
兵士が戦士になったところで"屍"だったら駄目に決まってるだろ!
私が恥を忍んでローリング泣きをして見せた意味がねえ!
マルタ!今こそお姉ちゃんとして弟に言ってやって!
ーーーと後ろに控えていたマルタを見る!
マルタは瞳を潤ませてうっとりと弟を見ていた。
その瞳は、"よく頑張ってやり遂げましたね。素晴らしいわ。" 的な感じらしい…
あーそうか。マルタはヤバカップルの片割れだった。
私の味方はいないようだ。
「どうかされましたか? 姫様? 姫様の嫌いな骨ではないですよ。ちゃんと肉がついてます。」
そう言ってロイドは屍戦士の兜を上げた。
「!!!!!」
こいつ何てモノを見せるんだ!!
後ろでマルタも小さく驚いたようだ。
マルタが驚いたので流石にやり過ぎたと気が付いたらしい。ロイドが屍戦士の兜を何事もなかったかのように着け直す。
私は結構なショックを受けた。
屍戦士の中身は確かに骸骨ではなかったが、もっとグロいものだった。すぐに目線をはずしたものの中身が見えてしまった。残像の赤い中身が脳裏に焼きついちゃったじゃないか!
中身は木乃伊とかゾンビとかそういったものだ!
あんなの骸骨よりも嫌だ! 悪趣味すぎる!!
だんだん怖さと悔しさで涙がにじんできた。
そして怒りも!!!
何てモノを乙女に見せるんだ! こんないたいけな小さな女の子だぞ!!
ロイド、貴様は絶対に赦さない!
神が赦しても私が赦さない!!いつかお前を泣かせてやる!!
私に"もうしません。許してください。"って泣きつかせる!!
いつか言わせてやるんだーーーーーーーーー!!
私の怒りが頂点に達した時、ふとマルタの豊かな胸に目がいった。
あった!!今すぐにロイドを哭かせそうなネタを思いついた!
前世の少年マンガやアニメで女子同士が『○○ちゃんの胸おっき~い』とか言って胸を触っているのを見たことある。
あれは男子の妄想であって実際そんなコト女子同士でやるわけない!大きいって言う事はあっても揉んだりしない!もしそんなコトしている友達がいれば、普通の感覚の子だったら引く!!友達無くすってものよ!
だけど私は知っている。子供はある程度許されるコトを…
実際私の年齢10歳ではもうやらない微妙な技になっているがマルタはちょっとお花畑が入っているから大丈夫なはずだ!
よしロイドめ見ていろよ!貴様のニヤついた顔を凍りつかせてやる!!
「わーんマルタ~怖いよ~」
私はマルタにしがみつき思いっきりマルタの胸に顔を埋めた。(ゴメンねマルタちょっとだけ罪悪感…)
うほっ すごい肉圧だった。
そして横目でロイドの様子を確認…
真顔だった。
あれ?効いてない?そんな筈はない。イヤだろ?
私はさらにマルタをぎゅうっとしてみた。
チラッ
顔は真顔だが、よく見ると、唇の端がピクピクと歪んだ。 効いている。
ふっふっふっ…勝った!
私は勝利を確信した。
どうだ悔しいだろう! マルタの乳は自分のものだと言いたいだろう!? だが私の受けた傷はこんなものじゃない!! お前の大事な乳にもっと埋まってやる!
「姫様、そ、そのような子供じみた真似はお止め下さい。」
ひきつった声で私をマルタから引きはなそうとする。
「リリア様大丈夫ですよ。屍戦士は見た目がちょっとアレですがリリア様をしっかり守ってくれますよ。」
そう言ってマルタがやさしく私を抱きしめた。
ぐえっ肉に埋まって息が出来ない。
ベリッ
いきなりマルタから引き剥がされる。
ロイドに首元を掴まれて、ブラーンとなる私。
巨乳に潰されて圧死するところだったが、引き剥がされたおかげで助かった。
子供パワーで勝ったと思ったけど大人の実力行使に負けた。いや、巨乳の肉圧に負けた。
マルタが私を抱きしめたのがよっぽど気に入らなかったのだろう。
「姫様は甘えん坊ですね~はははっ…」と言ってロイドが私を"高い高い"した。
笑顔をつくってはいるが目が全く笑っていなかった。
高い高いで天井近くまで放られるのを繰り返されて、そのまま投げられるんじゃないか、天井にぶち当てられるんじゃないかと生きた心地がしなかった。
高い高いってされる方はする方に対しての信用がないと恐怖でしかないという体験だった。
その夜私は更にホラーハウスと化した屋敷の事を考えるとなかなか寝付けなかった。
それでもウトウトしてきた頃に部屋の異変に気がつく。




