107、出遅れた! 起こして欲しかったよ!
夜中にふと目が覚めた!
昼間お昼寝をしなかったせいで夜眠気に負けて、眠くて寝てしまった!
部屋を見渡す。
アレスがいない!!
しまった!
ロイドがアレスと戦うために連れていった!?
ひどい、私も見たいのに! こういう時は遠慮せずに是非起こしてほしい!
私は急いでカーディガンをはおり抜け道へ……
抜け道を出ると私は驚いた!
いつもはガランとしてただ広いだけの地下室だが、今はゴツゴツとした岩だらけのステージになっていた。
え? なにこれ? 出るとこ間違えた?
抜け道から出て2メートル位までいつもの石で出来た地面だが、その先からまるで違う。別物だ。部屋の奥がどうなっているのかここからでは全く分からない。
「リリア~来たの~? シールドで覆われてるから中に入れないよ~。危ないしね~」
フェルが隣に現れた。どっから来たの?
「フェルこれなに!? 昼間はこんなじゃなかったよ! いつもの地下室じゃ無いよ!」
「う~ん。すごい~? これね~折角だからバトルステージにしてみました~」
え? 何ですか、それは……
ガシャーン!
中から音が聞こえた。
中で戦ってる? 岩の影からアレスがチラッと見えた。
あ、アレスだ!兜と仮面をつけていないが屍戦士の鎧を着けている。
うわ~うっとり。
そのアレスを追うようにロイドが現れた。両手には前に見たあの変な形に曲がっている剣を持っている。
アレスの前の岩ごと切りつける。
ピシッと岩が切れ、アレスの鎧も切れる。
アレスが後ろに下がり避けたが間に合わなかったようだ。
あれは中身の方は無事ですか?
……ていうか、なにこれ?
思ったよりガチじゃん!!
「フェル! 何? 何でロイドの武器がガチのやつ? あんなの危ないよ!!」
フェルにいっても仕方ないのだが思わず声に出る。
「ロイくんが言うには~ロイくんに負けるなら勇者としてヴァリアルに勝てる事は無いから腕試しってだって~。今のままのアレスが通用するのか、どれくらいの戦力なのか確認したいって」
「通用しないとなったら? 今圧されてたよね?」
「さあ? 取り合えずもっと見えるとこに移動しよう~こっちだよ」
フェルについていくとひとりしか通れない幅の細い階段がある。そこを上っていくとさっきのステージを見渡せる高さのVIP席のような部屋に着いた。
上から見ると不思議なことにいつもの地下室の床の位置よりもずっと深いところが地面のようだ。いつもは上げ底ってこと? どうなってるんだろう。かなり立体的だ。
何だ? ここは……
椅子が二脚用意されてる。
スライムの"ぷるるん"もいた。
お前がVIPか?
どうやら"ぷるるん"も観戦しているらしい。
あんた、分かるの?
プルンプルンしてて揺れている。喜んでいる……?
思わず目がいってしまう。気が散るよ。
「おおっ」
フェルが歓声をあげる。
なに? 見てませんでしたけど!?
アレスがロイドに切り込んだのをロイドの変形した剣が受け流し、攻撃の方向を変えられてしまう。あの変な形の剣は相手の力を諸に受けずに流しやすい形なのだろう。ズルくない?
アレスがんばれ!
よく見ればアレスの剣は勇者の剣ではないようだ。重そうな両手剣だった。
え? これもズルくない?
「フェル、ロイドの武器は自分のなのに何でアレスはショボい剣なの? しかもあんなに重そうで動きづらそうなの!」
またフェルに言っても仕方ないような文句を言ってしまう。
う~んだってずるいよね。
「ショボい剣て……普通の剣だよ~重そうな両手剣なのはアレスに合っている筈の形だからだよ~アレスが使っていた時のエルシオンはあんな感じの形になってたから……でもだいぶ動きが悪いね~」
「そのエルシオンはどこ?」
それを使わせてあげて。
「エルシオンはまた眠ってしまっていたよ~ボクはエルシオンの覚醒を見てないからホントに覚醒したのか疑わしいけど、ただの片手剣になってた」
ガシャン!! ガランガラン
鎧のアレスが岩場から転げる。
ちょっと待ってあんな重い鎧着けてたら動きづらいよ!
ロイドがこちらを見た。
「師匠終了します」
「りょうかーい!」
フェルが手を挙げた。
ゴゴゴゴ
地響きと共に岩場のステージが下がる、そしてゆっくりと横へスライドしていく。隣からいつもの床が出てきた。
床の上に着地するロイド。服が少し破けているが大きなケガは無さそうだ。
「アレスこっちへ」
ロイドが呼ぶとアレスも出てきた床に移動した。
床が迫り上がってくる。いつもの位置まで来て完全に止まった。
なにこの仕掛け? スゴくない?
この地下室って何?




