105、勇者への期待
スライムのせいですっかり話が逸れた、と言うか、まだ話をしてもいないが……
私はまず勇者復活の噂の事をフェルに聞いた。
「うん、王都から見えなかったけど『光の柱』が上がったのが見えた地域があるって、それで勇者が出たかもって噂があちこちであがって~、その噂が王都にも入ってきたんだよ~」
プルんプルプル……プルプル……フェルがスライムに乗って揺られている。
「そっか。モーモの人達の事も気になるけど……噂ってだけで済んでるなら大丈夫かな?」
「人々の期待もあるからね~。屍兵だらけになった王宮を知っている王都の住人はかなり不安になってるから勝手に噂が広がりやすいんだよ~。噂が噂で広がるから誰も勇者を見てないのに見たって噂もあるくらいだよ~。モーモ村でって話は出て無いようだけどウソなのかホントなのかわからない情報が入り乱れている状態だね~」
プルプルプルン……
「アレスはずっと私と一緒にいるし勇者を見た人はいないはず……あ、サナおばさん!」
サナおばさんはアレスを見たんだ。その後どうなったんだろう?
「唯一の目撃者はその人だね~。でもロイくんが記憶を消したみたい。それでも心配だから今は王都に保護してるみたいよ~」
プルプルプルプル……
ほっ……殺されて無いのね。良かった。
じゃあホントに見た人はいないのに噂がひとり歩きしてるの?
何か嫌だな。
それだけ勇者に対する期待が大きいのか……。
アレス大変だな
ところでさっきからスライムウザイと思ってるのは私だけか?
勇者信仰を抑えたところで人々の勇者に対する期待と言うものが凄くあるのなら勇者ってなに? 何か凄く大変な存在だよ。みんなの期待が大きすぎて重圧スゴくない!?
アレスを見た。
魔王を倒しにいく時のプレッシャー凄かったのでは……?
アレスには私の知らない苦労がありそう……
魔王は倒して欲しい、ヴァリアルも倒すべきだ。
でも……アレスに危険な目にあってほしくないな……
私の中に変な矛盾が生まれた。
それから私はマルタの話をした。
こちらは出来ることなら、なんとしても力になりたい。
ただ前にフェルにマルタとロイドは付き合ってるのかと言う話の時に、フェルに一蹴されている。
フェルが知らないはず無いと思うが、どうなんだろう?
今朝、マルタが話してくれた事を全てフェルに話した。
ついでに、ほらやっぱりあの二人付き合ってたよ。
私、合ってたじゃんと言うアピールも話に織り込んだ。
あ、私、心狭いですかね?




