99、ダンス練習始まる
はあ、はあ、はあ、はあ、
私は今ダンスの練習中だ。
何故かジャージのような服に着替えて柔軟運動から入り、ダンスフロアを走らされた。広いから走れるけどここはダンスするとこだよ!
やっと終わったと思ったらダンスの練習だ。
普通の社交ダンスからアップテンポの曲まで幅広く踊った。
何故か急に授業内容がレベルアップした。
今までのエリザの授業はゆるーい感じだった。
ゆるゆるの授業をだらだらとして時間きたら終わり。的な楽なものだったが急にロイドが現れ厳しい物になった。
特にこのダンスの授業!
全力疾走でひたすらホールを回されているようなものじゃないですか!
「姫様は体力が無いから鍛えておきましょうね。」とか言っている。
途中何度もへたり込むが、そのたびに起こされる。
なんだよ。このスパルタ。
新たなイジメか!?
自分はアレスと戦いたいとか少年漫画な事を言う熱い奴かもしれないけど私は踊り子になるわけでも武道家になるわけでもない!
次からこれをセットでやってくれとか指示しちゃってるけど、無理ですよ。
私が倒れますよ。
体力を使いすぎて本当のお昼寝までしてしまった。
寝てしまったのでその日は夜中にフェルの地下室に行った。
フェルは染め上がった布を沢山干していた。
広い地下室は巨大な洗濯物干し場になっていた。
「いらっしゃーい! あとは乾いたらこれを切るだけだよ~」
おお、フェル頑張ったね。えらいぞ~
最後手伝えなくてゴメン。ダンスの鬼教官に捕まって体力が無くなってしまったせいです。
それにしても地下室全体に干された布……量多くない!?
久しぶりにフェルとお茶をした。
この時間が至福。
フェルはアレスにくっついたまま頬ずりだが、やっとフェルと話せそうだ。
私は急に厳しくなった授業の事を話した。
「お陰でもう筋肉痛だよー」
文句を言っていると、
「それは姫巫女の踊りをするための基礎を作ってくれてるかも……」
意外な言葉が返ってきた。
「神殿も神事も、もうないから正式に教えられる者はいなくなっちゃたんだけど、姫巫女の踊りは結構ハードだよ~ロイくんは踊り自体は知らないけれどすごくハードな踊りって知っているから体力作りしてくれてるんだよ」
「神殿も神事もない? 教えられる人がいない? じゃあ無理じゃない!?」
「うん、ヴァリアルが全部壊してしまったから……でも前にも言ったけど踊りはボクが教えられるよ~」
酷いことするなあ、ヴァリアル。
もうこのおっさんほんと嫌な奴だわ~
「そう言えば前に教えてくれるって言ってたよね。フェルはどうして踊れるの?」
「………」
あ、聞いてはいけなかった!?
「リリアに話してなかったけど……ボクとニーナは、ちょっと珍しい双子でね。小さい頃から精神が繋がってたんだ」
テレパシー的なやつかな?
「だから姫巫女の踊りの記憶はボクの中にある。教えられるよ」
「すごいよフェル、よろしくね。フェルは何でもできるね!」
「……そんなボクでも無理なことがあって、ニーナは死ぬ間際にアレスを助ける為に自分の命を使って時間停止魔法をかけたんだ、死んだ後のニーナの一部がボクに残って今も一緒にいる。でもニーナのかけた時間停止魔法はボクに解けない……アレスが30年あのままなのはそのせいだ」
フェルが苦しそうに語った。
「でも魔法解いたら、アレス死んじゃってるから屍になっちゃうよ」
それはダメ。
「うん、アレスの魂は無くなってたんだ。でも時間停止魔法のせいで魂が抜けたとしたら? 魂が戻れば何とか出来るって希望をもってアレスの魂を取り戻すために何度も魂を召喚した……でも失敗ばかりでダメだった。やっと成功して魂は戻って来ているはずなのに、どうする事も出来ない。魂さえ取り戻せばという考えは違っていた。同時に屍兵のように魔石を使えないかも考えていたから、そっちを主流にしたんだ。とにかくボクは動いてるアレスを見たかったのかもしれない。
だけどここにきてアレスに変化があったとしたら、それはリリアのお陰だと思うよ。リリアはやっぱり何か違うんだよ。」
フェルは沢山苦労したね。ニーナとフェルが繋がっていて意識の共有があるのだとしたら、あの炎の中のニーナとも繋がってしまっただろうか?
命を使ってアレスに時間停止魔法をかけたのであれば、そう簡単に解けるものではないというのは私でもわかる。ニーナの命と想いを掛けた最後の魔法。
「アレスにもう一度会いたい。その為ならボクは何でもするよ。リリアに妖精を育ててもらっているのもそのひとつだよ。ボクは奇跡を信じる。アレスは奇跡をおこせる人なんだ!」
いつも穏やかで優しいフェルだけど本当はすごく強い人だと思った。
私がフェルの言うように何かが違うと言うなら私が転生者だからだろうか?




