9、ストレスたまってローリング泣き!
フェルに会えないまま、3ヶ月ほど過ぎた。
会いに行こうとすると止められるし、そしてフェルに会った日は立っているだけだった屍兵はあの日以来私がひとりで動くそぶりを見つけると妨害してくるのだ。もちろん私に危害を加える事はないので進行方向を塞ぐだけだが、益々私にとっては動きづらい。
そして何よりイヤなのは宮にいる屍兵達が以前は仮面を着けてくれていたのに最近は素なのだ。
もう慣れたでしょう?的な感じで骸骨顔を隠そうともしない。
メイドのみんなも不思議と全く気にしてない。
ここの求人があるとしたら"骸骨を気にしてない人"が一番に記載されていそう。
メイドさんの指示で荷物を運んだりいろいろ役に立ってはいるようだが、私は全く親しみを持てない。
だって骨だよ! 骨! 死体! モンスター!
みんなの感覚がおかしいのか、この世界では私がおかしいのか…
"未経験者歓迎!アットホームな職場です。初心者には骸骨がやさしく指導します!"
うっ………変な求人広告を想像してしまった。
あーーーーーもういや!ストレスたまる。
街にもお忍びで行ったり出来るのかと思ったけどそんなイベントも無し。
来る日も来る日も、マナー、ダンス、歴史、教養、もうだめ、もうやだ。
せめて魔法でも教えてくれるならヤル気も出るのに!
村に帰りたい。村での生活がいかに良いものだったのか今ならわかる。
村には屍兵もいなかったし…何よりおじいちゃんに会いたい。手紙送ったけど返事が返ってこない。どうしたんだろう?おじいちゃんは結構ワイルドな人だったし前職が騎士ならロイドにやられたりしてないと思う。きっと元気だとは思うけど…
あーーーーーホントにもういや!村の事思い出したら余計にストレスたまる。
せっかくお姫様になったのに豪華なパーティーも何もない。
マナーやダンスっていつ使うんだよ!
よし!グズってみよう。今まで"良いこ"にしすぎたのかもしれない。
今日はグズる!!本格的にグズってみせる。
何をグズろう?フェルの事は絶対許してくれないだろうから、やっぱ屍兵だよね。こわいし
そこで私はロイドとマルタを呼び、必死にグズってみた。羞恥心を捨て嘘泣きをし、ごろんごろんしてみた。初のローリング泣き!
屍兵がいかに怖いか、この宮に置かないでほしいと…そりゃもう必死に…最後にはストレスたまっていたせいか本気泣きになっていた。わ~~私疲れてたんだねー。
するとついにロイドがかわいそうなイタイ子をみる目で
「フッ…」と嗤う。
「わかりました姫様。そんなに姫様が屍兵をお嫌いだったとは…すぐに対処させていただきます。」と言った。
なんだ。ちゃんとしてくれるんだ。もっと早くに言えば良かった。
もしかしたらここまでのパフォーマンスいらなかった?
ついロイドを警戒し過ぎた?
とにかくやった!私はこの宮から屍兵を追い出す事に成功したんだ。
勝った!
と、私が心の中でガッツポーズをし勝利を噛み締めていると何故かマルタが隣で泣いていた。
「姫様~良かった~ぐすっ…ひっく良かったですね。ううううっ」
何かに感動したのかもらい泣きなのかは分からなかったが一緒に泣いてくれてるらしい。
まあ、いいか。
屍兵が追い出されるってことは、ついに!ついに人間の兵士に会えるのか。
思えば屍兵ばっかりだったもんね。
屍兵がいなくなれば、夜に動くのも怖くない。そして進行方向を妨害される事もない。脱·ホラーハウス!
随分遅くなってしまったけどフェルにも夜中にこっそり会いに行けるかも?
フェルが泣いていたのを思い出す。約束したのにずっと会いに行けていないと思うと胸が痛くなった。
でも、もう大丈夫きっと行ける。マルタとの3つの約束を破る事になってしまうが、行くことを禁止されてるし、ついてきてもらえないのなら気付かれないように行くしかない!
よーーし!!




