プロローグ
初小説です。
前半はゆっくり進みます。
後半に色々動きます。長い目で読んでいただけたらうれしいです。よろしくお願いします。
自分が転生者と気がついたのは、5歳の頃だった。
お隣で貰った卵を持ち帰り、搾りたてのミルクを台所でおじいちゃんに渡す時に、これ混ぜて砂糖入れたらプリン作れるんじゃないかな?って思ったのがキッカケで、プリンってなんだっけ?ってところから一気に前世の知識を思い出して、あまりの情報量に卵を落とすところだった。
ーーー前世知識といっても、私の場合すごく大した事ない……無双とか無縁。
思い出したからと言って、プリンは作れなかった。だって便利な調理器具もないし、電子レンジが無いんだよ。薪で蒸し器も無いのに無理だよ。しかも5歳だからね。
前世の私はゲームやマンガ、ラノベやweb小説を読んだりする、スイーツ好きの普通の日本人の女の子だった。
流行っていた異世界転生小説もそこそこ読んでいたので、今の自分がそういう状況なんじゃないかってすぐに察してしまった。
前世の私は、たしか人生最大の失恋で、スイーツでやけ食いをするためコンビニへ、その後転生トラックにDONだったと思われる。
異世界転生!
ここが物語の世界なのか、ゲームの世界なのか、はたまた全く関係ない世界なのか分からないけれど、ここは以前の日本の女子高生だった私がいたあの世界と全く違う世界だって事は分かる。
だって私の住む村の近くの森に、時々魔物出るもん。あきらかに普通の動物じゃない。前の世界に絶対いなかったであろう生き物。ゲームとかに出て来そうな魔物。
まあ、数も少ないし、おじいちゃんがすぐ倒しちゃうから、脅威ではないんだけど、1人きりでは絶対会いたくない生き物。
前世があるって自覚したものの、微妙にうろ覚えで、自分の名前や家族の事も思い出せない。
前世より現世をすんなり受け入れてしまった。だって気が付けばもう五年もここで暮らしていたわけだし、今更どうにも出来ないでしょう。
それに、今いるこの世界。いわゆる剣と魔法の世界っぽい。中世、いや近世ヨーロッパ風?っていうの?
ここは田舎だからよくわからないけど、そうね。前世ゲーム知識でいうところの、冒険に出る前の始まりの村的なイメージの田舎の村。特に何もない場所。
そういうと、まるで私がこれから冒険に出る勇者みたいだけど、全くもってそれは無い。
私は勇者でも聖女でもなく、ましては悪役令嬢とかでもない。
たぶん異世界転生だけど、何かの物語ではなさそうだった。
普通?に前とは違う世界に生まれたってだけなのかも。
ただの田舎の村人っぽい。
名前はリリアという平凡な女の子。
お母さんは私を産んですぐに亡くなっていて、お父さんはいなかった。
なので身内は祖父がただひとり。
現在おじいちゃんと二人暮らし。裕福とは言えないけれど、食うに困ってはいない。
現代日本の生活からすると裕福でない、とか言ってしまうが、たぶんこの世界では普通。
親なしだけど、普通に食べるに困らず暮らせるって有難い。育ててくれるおじいちゃんには感謝です。
おじいちゃんの手伝いをしながら、のんびりとした生活の中、大きくなったら冒険者とかになっちゃう?と、妄想したりもしてみたが、実際モンスター討伐なんて怖そうな事はしたくない。ダンジョンとかも迷いそうだし、普通に怖いと思う。ゲームなら何度でもやり直せる事でも、今ここで生きる私にとって、ここは現実なので痛いのも苦しいのもイヤ。出来る限り平和に過ごしたいと考える。
実は何かチート能力を持っているのではと期待もしたりしてみたが、検証結果として特に何も持っていない様だった。どんな検証をしたかというと、恥ずかしくなるのだが、呪文を叫んだり祈ったり、ステータスって言ってみたりという思いつく限りのお約束な感じの事をしてみただけ。でも何も出来なかった。全く夢のない異世界転生だ。
そして前世の異世界知識で楽をしたい、良い生活を、と思ったけれど、前世は蛇口を撚れば普通にお湯が出るし、無いものはコンビニでほぼ手に入るし、スマホもパソコンもないこの状態で、私が人より優れて出来るなんてモノは無いのだとすぐに気がついた。
もともと特別では無い私は、転生しても普通の人なんだ。
救いがあるとしたら、この世界に魔王はいない。
なので村が魔王の手先によって、焼き討ちに合うって事はない。平和で良かった。
どうやら30年位前に魔王は勇者に倒されたらしい。
今でも多少魔物は出るが、魔王がいた時の100分の1以下っておじいちゃんが言ってた。
そう、勇者。
この世界、過去に勇者もいたそうだ。
その時代に生きていたら、勇者のパーティ入れなくても、モブとして遠くから姿くらい拝めたのになぁ……
勇者、憧れるよね。見たかったな~
ここで言う勇者とは、昨今物語に出てくるダメなクズ勇者じゃ無くて、理想は正統派の勇者ね。ちゃんと強くて正義なヒーローよ。
まあいないものはしょうがないし、平和になった時代に生まれて良かったと思う。
魔法というものは存在するらしいので期待していたが、どうやらスゴイ攻撃魔法を使ったりする魔法使いはこんな田舎の村にはいない。そして自分も魔法なんてつかえない。
せいぜいこの村で見られる魔法は、ランプに火を灯す程度のショボい生活魔法くらいだった。いやそれだって前世の感覚からしたら、凄いと言えば凄いのかもだけどね。この世界ライターないし……
私の村はのんびりとした田舎で羊のようで牛みたいな家畜がいっぱいのモーモ村(モーモって家畜の名前ね)
大人達の自慢は昔この村に勇者がいたってこと。
なので通称《勇者の村》と言っている。(たぶん言ってるのこの村の人だけね)
村の広場に勇者の像と勇者の神剣があるがウソっぽいとか思ってしまう。
だって台座のあたりとかボロボロだし、斜めってるし、元々別の所にあったのを持って来て置いたって風で、どうせ作るならちゃんとしようよって思う。
昔はこれで観光客を呼ぼうと考えていたらしいけど、こんな田舎の胡散臭い銅像なんて誰も見にこないよ。
時々村のお年寄りが拝んだりしてるくらいで寂れてますわ…
そんな感じで私の人生は田舎の村でスローライフってやつか……と思っていたある日、事件?がおきた。