学校見学に来ました
受験生がよく言われる言葉。夏を制する者は受験を制する。
あれ、本当だったんですね。
恋愛ゲームには、大体主人公以外の異性も現れる。
それは、モブキャラであったりサポートキャラであったりするが、一番出番がある異性のキャラクターは古今東西これしかないだろう。
悪女。
これほどにやりやすく、分かりやすい役柄はない。
彼女らは主人公の恋を前進させるための大事な鍵や、ときにはラスボスへと変化自在なとても万能キャラなのだ。
しかも時々主人公よりも可愛かったりするので二度美味しい。
まぁ、何が言いたいのかというと
「・・・はぁ、可愛いなぁ・・あの子。」
「・・涼?何見てるの?
ちゃんと説明に集中しなきゃダメでしょ?・・・ほら、」
ゴキッ
「ぎゃあああああああああ!!」
首がぁぁっっ!!
よそ見をしていたら、幼馴染みに強制的に顔を前に向けられた。
ぶっちゃけかなり痛い。
こいつ年々力強くなっていくからなぁ。しかもオレより。
昔のあの天使のような可愛らしさはどこに消えたのだろうか。
まぁ、それはそれとして。
オレの視線の先にいるのはこの世界で悪女キャラの一人として現れるはずの女子生徒がいた。
作中でも人気者キャラとして描かれているがこの頃からすでに可愛いとか反則だろ。
よく勝てたな、主人公。
しかしオレは至って健全な男の子なため可愛い子には好かれたいって思ちゃうわけですよ。
つまり、あの子を絶対に悪女になんかさせてやらねぇぜ!!
小悪魔ぐらいでおねっしゃっす!!
「・・・ぐへへ、まってろよ小悪魔ちゃん・・じゅるり。」
「・・・ムカつく」
グキッ
「首がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
コイツ!まじで力加減を覚えろよっっ!!
月日が経ち、今やオレ逹は中学三年生。所謂受験生となっていた。
世間は夏休みなので俺達はこの機会に色々な高校を見学して、最終候補を絞り出そうと思い、学校の説明をきいているのだが、・・・
「ねぇ、あの人チョー格好よくない?!」
「あとで声掛けにいこーよー!!」
「というか、この学校の生徒会レベル高くね?」
「はぁぁ、お近づきになりたいっっ!!」
なぜだか、攻略対象キャラが揃っていた(夕崎を除いて)。
早いだろっ!!なんでゲーム始まる前から全員集合みたくなってるんだよっっ!!
まぁ、生徒会がいるのは仕方ないとして。
同学年の奴等とも日にちが被るなんて!主人公補正が著しいとしか言えない・・。
「・・はぁ、この学校やめよっかなぁ」
「え?なんで??」
瀬利が首をかしげてオレの方を見てくる。その際他の見学者から「ちっ、なにあの平凡」「まじ、ムカつく。そこ代わりなさいよ」などと嫉妬と殺気の入り交じった鋭い視線を向けられた。視線で人を殺せるのならオレはすでに蜂の巣となっているだろう。
いや、別に泣いてないけど。
・・・ほんとにっ泣いてないん、グスッ、だからねっっっ!!!
「・・涼、誰かになにかされたの?
涙が・・」
「・・いゃ、ナニモナイヨ・・?
あと、これは涙ではなく汗です。」
「・・いや、普通はそんなところから汗はでないと思うけど・・・
・・・涼、大丈夫だよ。
一人で抱え込まなくて・・俺が守るから」
ギュッ
なにこれなにこの状況ぅぅ!?
・・ねぇ瀬利さん?ここどこだか知ってる?高校の体育館ですよ?今現在高校見学中デスヨ?
すごく静かななか眠りそうになりそうな説明を聞いている最中ですよ?なんでオレをバファリンよろしくやさしくギュッと、まるで少女マンガのヒロインを慰めるがごとく抱いているんですかね。男同士の抱擁とかよっぽどのことがない限り引きしか生まないよ?ねぇねぇねぇ、もう周りの女子の悲鳴が半端ないんすけど。説明中だというのに視線が説明案内の先生じゃなくてオレ逹なんですけど。しかもオレに突き刺さる視線がめちゃくちゃいたいんですけどぉぉぉ??!!
「・・もうっやだっっっ帰りたいっ。お家に帰りたいよぉうっっっ!!」
頭を抱えて羞恥に悶えているオレ。最初に狙っていた女の子(後の悪女)はオレを虫けらのような目で見てくる。もう人前で男が泣くのが恥ずかしいなんて言ってられっか!!泣いてやるっワンワン泣き叫んでやるぅっっっ!!!!あぁ、誰か助けてくれっっ!!
オレはホモじゃない!!
「ウワァァァンン!!うえっ!ゴホッおぇぇぇ!!」
「よしよし」
ちなみにあとで先生にたっぷり怒られたのは言うまでもなかった。
??「くくっ、あいつ、面白れーな。」
??「・・・」
別々の場所で二人の男子生徒がオレを見ていたのは誰も気づかなかった。
次回、ようやく高校生になりました!