名前は大事
主人公の死後、たどり着いた先は・・?
暗闇の中で、声が聞こえた。
・・・ん?なんだ、ここ・・
初めに聞き取れたのは明るい女の人の声。
「×××さん!よく頑張りましたね!
元気な男の子ですよ!!」
・・なんの話だ・・・?
オギャアア、オギャアア!!
「×××!ホントよく頑張ったなぁ・・・
うぅぅっ、良かった・・!」
次に男の人の涙声。男泣きをしているのかしゃくりあげながら鼻水をズビズビとかんでいる。
「・・・はぁはぁ、、息子・・を、抱かせてくれる・・?」
そして、最初の女性とは違う女性の声が聞こえたあと、オレの景色がかわり、オレは女性の前にいた。
・・・というか、さっきから赤ちゃんの泣き声がやたら近くから聞こえるんだが、どこかにいるのだろうか。
「・・・可愛い、私の息子・・」
そう言って、その女性はこちらに手を伸ばし、抱き寄せた。
ん?あれ、もしかして息子ってオレのこと指してるのか?
そういえば、さっきから気になっていたけど、周りにいる人?たち
・・・
やたらデカくないか?!!?
いや、ずっと自分の身長の倍近くあるし、なによりやや平均よりモヤシな体型をしているとはいえ高校男児の体を女性たちが軽々運んでいたことに疑問は抱いていたけど、いかんせんいままでずっと夢現だったせいか、頭がボーッとして働かなかった分、今になってやっと正常な反応というか驚きがきたというか、てか、なんか体スースーするし、あ!そういえば、さっきの告白どうなったんだ!?なんで、あの場から、どうやってこんな状況になったんだ!??
混乱して無性に怖くなってきたとき、気が付いたら思いっきり赤ん坊の泣き声の音量があがっていた。
オギャアアアオギャアアアアアア!!!
「えぇっ?!?どうしたの!?・・よしよし、どうちたんでしゅかー?」
「ちょっ、ナースさーん!?ちょっとーー!?」
ドタバタとまた慌ただしくなる室内でオレはまたひとつ、新しいことに気付いた。
あぁ、オレって首の骨安定してないんだなぁ
いままでの赤ちゃんの泣き声が自分だったということに気づいた瞬間だった。
あのあと色々と落ち着いてきたオレは体が乳児であるせいか泣き疲れて3秒で眠りについてしまった。
某ロボットの主人公顔負けの早さである。
さて、落ち着いてきたところで今の自分の状況を整理してみよう。
幼馴染みとデート→告白未遂→
トラックに轢かれる→赤ん坊になる
・・・。
・・・やばい。全然分からねぇ。
これはオレの頭がポンコツだからか?
もう一回整理してみるか。
幼馴染みとデート→告白中にトラックに轢かれる→気が付いたら暗闇→オレ赤ん坊
分かる気がしねぇっっ!!
なんだこの状況は?!改めて考えてみても分からねぇよ!?
ちなみに、さっきの男女は夫婦でこの世界でのオレの産みの親らしい。
だってさっきから子供の目の前でめっちゃイチャついてるもんな。(今すぐこの場からダッシュで逃げたい。)
二人の雰囲気から、恐らく新婚でオレが第一子なんだろうなって思う。
あと、それから。
もうひとつだけ、確実に分かったことがある。
オレは華の目の前で一度死んだ。
痛みこそはないものの、轢かれる瞬間を今でも鮮明に思い出せる。
あのときの、目の前が真っ赤に染まった景色も、あいつの泣き顔も全部。
となると、オレは前の世界の記憶を持ったまま、また赤ん坊として転生したのか?
夢かとも考えたが、ちゃんと痛覚だってあるし、まず夢にしては長すぎる。
どうしたものかと悩んでいると、母親と父親がオレの名前について話し合っていた。
「・・・う~ん、やっぱり男の子だから男らしい名前がいいかなぁ? 」
「あんまり男臭すぎるのは嫌だなぁ。
暑苦しいのも嫌だし・・・」
「じゃあ"涼"は?涼しいって書いてりょう!
これなら暑苦しくないわっ!」
ホワッツ!?
なんつー適当な決め方だよ!仮にも息子の名前だぞっ?!
一生それで過ごすんだぞぉ!!?
へーこうやって親は子供に名前つけるんだーって思ったけどこの母親は適当すぎると思うっ!!
「キミが決めたのなら間違いないね。
うん。決めた!この子は"涼"だ!」
ブルぅタスぅぅ!!お前もかぁぁいっっ!!!
こうして、オレの名前は加賀見 涼となりましたとさ☆
言いたいことは色々あるけれど、とりあえずお父さんとお母さんは一回寿限無を調べて出直して下さい!!
次回、友達ができました。
毎度読んでくださりありがとうございます!