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エピローグが長すぎる件2

ほんとに最後!

ぴっ


▼ゲームをリセットしますか?

・ハイ

・イイエ



ぴっ────


ーーーーーーー



桜の花びらが舞い散る時期、新入生や新しい学年になって学校中が少しうかれている時期、

オレにとっては高校生活二度目の春だ。

我が弟である加賀見 夕崎はこの春めでたくオレ達が通っている高校に入学した。つーか首席入学した。

そんな最中、オレが何をしているのかというと──

「──こちら加賀見、応答せよ応答せよ!現在 " ターゲット " の状況について情報求む!!」

「こちら黒澤、・・・あー、現在ターゲットである " 生徒会会長 波風 遥人 "に特に怪しい動きは無し────なぁ、加賀見。これって本当に意味あんのか? いくらこの世界がそういったゲームだとしても " あの " 生徒会長だぞ?」

「いや、あの人とはオレがここに入学する前の学校見学でもうフラグがたっていたらしい。

いいか、黒澤。この世界の男は皆フラグ建築を狙ったハイエナと考えるんだ! 」

二回会ったら友達どころか ラバー だからな。恐ろしい世界だ。

「いや 、それだとオレやお前も含まれるんだが・・」

「オレとお前でフラグが建つことは今後一切可能性すらないから大丈夫だ!」

「・・・・・・・言ってろ、」ボソッ

オレは現在、入学式という攻略対象たちにとっての絶好のフラグ建築イベントから自身の貞操を守りきるために絶賛逃亡中である。

『つぅかこれ、事情を知らない人間から見たらかなり自意識過剰な奴に見えるな。しかも相手はハイスペックイケメン・・くくっ』

自分の中にいるもう一人の人格である涼がようやく起きてきたようだ。今、オレと体を共有している彼は名前が同じでややこしいので分かりやすく涼と呼ぶことにした。そしてオレは前世の名前で呼ばれている。

「るっせぇ! しょうがねぇだろ、オレは華との約束もそうだけど自分の貞操が惜しいんだよ!」

『・・お前、それあの女に聞かれたら百年の恋も冷めちまうんじゃねぇの・・。』

呆れたように言うが、お前も実際そうなったらただじゃすまないんだぞ。

『へーへー、んじゃ次はどこに隠れるよ?』

「お前ちょっと楽しんでるだろ・・。

いいかっ!? これはな───」


「ねぇ」


「ぎゃああああ!!?・・・だ、誰っ、って夕崎!? お前どうしてここにっ、入学式は??!」

背後からいきなり声をかけられて、隠れている最中だったのに思わず大声を出してしまった・・。

恐る恐る振り返ると、そこには先ほどまでホールの壇上で素晴らしい挨拶を披露してくれた我が弟の姿が。

彼はやや冷たい目で、オレを見つめていた。

「もう終わったし、ていうか にい こそ 入学式さぼってこんな校舎裏で何やってるわけ? 告白でもするつもりなの? 」

オレの周りにブリザードが吹雪いていた。なんだ、一体何が不満でそんなに激おこなんだ。

「い、いやあのっ、つーかお前よくオレがサボってたの気づいたなっ!

一年の場所からかなり離れてるし、ぶっちゃけ先生にも気づかれなかったのに・・ひぃっ!」

またも弟から壁ドンをくらってしまった。 あれ? 壁ドンってこんなに殺伐としてたっけ??

「質問に答えてないんだけど? もしかして本当に告白でもするつもりなわけ?」

瞳孔が、開いておりまするん。 ひえええ。

「めめめ滅相もございません!! ただ隠れんぼ、・・そうっ! 逃×中みたいな隠れんぼしてただけなのぉっっっ!!」

「友達殆どいないくせに?」

「うっせぇ!!」

涙目で主張し続けるオレに呆れたのか、そのまま夕崎は踵を返して歩きだした。

あっ、と夕崎が声をあげた。

「そうだ、思い出した。にぃ も分かってると思うけど今日ちゃんと早めに帰ってきてよ? お母さんもお父さんも居ないから二人だけで入学祝いのパーティーするって言ったの、にぃだからね!」

「分かってるって。じゃあお兄ちゃんは忙しいのでまたあとでな。」

「なにが忙しいだ、遊んでるだけの癖に。じゃあまたあとでね!」

そのまま姿が見えなくなるまで見送ったあと、涼がそれを見て話し出した。

『なんつーか、本当にあいつ変わったな。オレといた頃とはまるで別人じゃねーか。 根本的なとこは変わってないみたいだけど。』

「まぁ、頑張りましたので。」

えっへん、と胸を張って言う。しかしスルーされた。

『" 兄弟 " っていやぁお前の兄も変わったよな。 』

思い出したようにしみじみと話す。正直あのときのことは今思い出しても、よく皆無事に生き残れたなと思っている。

「あぁ、でも黒澤 、よく彰人お兄ちゃんを自分の精神の中に受け入れられたよな? いくらいずれ消えてしまうからといっても・・」

『・・・まぁ、あいつらはちょっと似た部分あるからな、どっかで通じあったんだろ』

「? ふーん。」



──同時刻、校舎内では。


「お、生徒会長が動き出した。 しかも・・あれって加賀見の方向か?

まじか、すげーな加賀見。こんなことって本当にあんだな。」

『だから僕はさっき校舎の中に入るように指示しろって、言ったんだ。

和也にフラグが一つでも立ったら僕はお前許さないから。』

体を乗っ取るぞ、と日暮 彰人。

「・・はいはい」

今日も元気に自身に住み憑いている住民の過保護がうるさい。たしかに加賀見に俺以外の仲良しができてほしくないけど、これってやりすぎなんじゃ・・。

『なに? 僕のやり方に不満でもあるの。 僕はお前と違って和也も友達も欲しいとかふざけたこと抜かす贅沢野郎じゃないから。和也だけいればいいの。』

「なっ、 いっとくけど加賀見は友達だからな! 勘違いすんな!!」

『・・ふーん、" 友達 "ねぇ。じゃあ一生友達のままでもいいよね?クスクス』

「っ、うぐぐぐっ、」

オレは一度もこいつに口喧嘩に勝てたことはない。そもそも体を共有しているためその時の感情も共有できるからといってこいつは常に加賀見への異常な愛を隠しもしないで堂々としているから、いまだにそういった部分をだすことに恥じらいを感じている俺が勝てるはずもないんだが。なんか悔しい。

『まぁ、一応体を借りている身だしね。 キスは許さないけど、手を繋ぐくらいになら協力してやってもいいかな。』

俺が傷ついたのを感じ取ったのか、フォローをいれてくれた・・のか?

『その代わり僕にも体貸してよ。和也、いっつも僕が外に出ると目も合わせてくれないんだから。』

違うわ、これただ俺を利用しようとしているだけだわ。


「・・もう、なんだかなぁ」

『あっ、そんな馬鹿なことやっている間にも、今度は須藤 瀬利まででてきた! ほら早く急いで!!』

こいつが消えるまで俺の苦難は続きそうだ。



──放課後


あのあと、何故か生徒会長にくわえ、須藤 瀬利とオレが黒澤以外にも手を出しているビッチ野郎と勘違いした如月 悠里に追い回されたオレは軽く町内一周し、気づけば辺りはオレンジ色に染まっていたのだった──

「はぁっ、はぁっ、・・あいつらっ、本気で追いかけやがって、」

『目がまるで獲物を見つけた猛獣のようだったな。

というか、和也いいのか?』

「・・あぁ?なにがよ。」

『夕崎と約束していたじゃないか。早く帰らなくても大丈夫なのか?』

「あ」


もうすぐ、日が沈む。



その頃、加賀見宅では。

「おっそい!!!」

イライラしすぎて叫んでみたけれど、結果更にイライラしただけだった。

「なんなの? だいたい今回言い出したのだって にい からでしょ?? なのに約束破るってどういうことだよ!!」

テーブルに置かれたご馳走は今はもう温もりがなくなってすっかり冷えきっている。

「・・・一緒に、祝おうっていたくせに。」

(・・忘れちゃったのかな、)

まさか、このご馳走のように自分たちの関係はすっかり冷めてしまったのか。最近では、何故か学校での友達も増えてきたみたいだし、自分のようななんの面白味もない弟には関心がなくなってしまったのだろうか。

かつての父と母のように。

「・・・・にい、」

ぐすっ、と涙が溢れそうになったとき、玄関からインターホンの音が鳴った。

「! 」

急いで駆けていく。鍵を回してドアを開くと、そこには、──


「いやー遅くなってごめんねー、ちょっと色々あってね──」

「にい!!」


玄関先とはいえまだ外にいるというのに、周りの目も気にせずに抱き付いた。

(・・あぁ、この温かさはにいだ、)

「にい、にい!」

「・・・」

昔から好きだった にい の安心する匂いが鼻孔をくすぐる。にい は最初驚いていたようだったけれど、直ぐに気を取り直して俺を抱き締め返した。

「・・え?」

「本当にごめんな、夕崎。」

肩に湿り気を感じて、なんだろうと にい の顔を見ると、にい は──

「にい、 泣いてるの?」

「うん? あ、本当だ。」

にい の泣き顔はお世辞にも綺麗とは言えないような不細工な泣き顔だったけれど、その目はちゃんと俺を捉えていた。

いつもみたいに、壁一枚隔てたような目じゃなく、俺を通して誰かを見ていたときのような目でもない。


ちゃんと俺を加賀見 涼の弟として、加賀見 夕崎として初めて見てくれた。


「・・っうあ、ぅぅぅうああああん!!」

気づけば俺も声を上げて泣いていた。そしたらにい がおろおろしだして、近所の人からにい が俺を泣かせていると思われてだいぶ騒ぎが大きくなってしまったけれど、泣き終わったあと、いつも心にあったモヤモヤは全て無くなっていた。

「悪かった、本当に悪かった。兄ちゃんもう絶対夕崎泣かさないから、」

「は? 俺がにい に泣かされるわけないでしょ。

あれは目に大量のゴミが入っただけだから。」

まじかよぱねぇ、とか言っている にい は無視だ。


それにしても、と思う。

(さっきのにいはちょっとだけ格好よかったのに、)

慰めるように、優しく頭を撫でてくれたのはもしかして俺の幻だったのだろうか。

さー、パーティーするぞー! とにい の張り切る声がキッチンから聞こえた。

「夕崎、早くこいよー」

「ふふっ、はいはい」

まぁ、楽しめればなんでもいっか。


さて、明日は何をしようか。




ご愛読ありがとうございました!今までで一番長く続けてきたこのお話もようやく幕を閉じました。色々と回収しきれてなかったりまぁ、あの、色々あるんですけどとりあえずこのお話はここで終わりにさせていただきます。

今まで付き合ってくださったみなさん、本当にありがとうございました!!


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