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決着!!

次回最終回です!この話を初めてから8ヶ月ぐらい?でしょうか。ようやくここまで来たって感じがします。

『二次元の世界っつーことはつまりここは誰かに作られた世界ってことだろ。そんで、これが世に出回ってるゲームなら、不特定多数の人間にオレらの生活を見られてるんだ。

どこまでの範囲で見られてるんだか分からねぇけど気持ち悪いだろ、自分が知らない間に私生活覗かれてるとかストーカーかよって。

しかも一番質が悪いのはオレたちはそれをなんも罰することができないんだ。

そりゃそうだよな、オレたちの人生は " 物語 " として楽しむために作られたんだから。作者の気持ちとかよく分からねぇけど、普通そこまで考えて物語作る奴とかいるのかって話だ。 だから、まぁしょうがないことなんだけど、気持ちだけはどうにもならないし、まじふざけんなって思ってたんだ。』

加賀見 涼は話終えてから、どこか遠くに思いを馳せるように空を見上げて、息を吐いた。自分ではどうしようもないことだけれど許したくない、そんな気持ちをのせて。

「・・・悪い、いや本当に。」

オレは自分の無神経さを恥じた。同時に今までの自分はかなり無知でガキだったことに気がついた。オレは、この世界がただBLゲームの中だからとどこか偏見の目で見て上から目線で馬鹿にしてたんだ。この世界に本当に住んでいる人がいるのに、それすらも心のどこかで軽く見ていたのかもしれないと思うと腹が立った。

(・・くそっ、どこまでバカ野郎なんだオレはっ!!)

『・・・おい、何しおらしくなってんだよ、キメェな。これからがオレが言いたいことだっつーのに。』

「・・え?」

すると、加賀見 涼はすっかり冷めてしまったコーヒーを一気にぐいっと飲み込んで、そして、ぷはっーーっとまるでビールを飲んだかのように息を吐き出した。その顔は、先程とは違って心なしか晴れ晴れした顔つきだった。

『それをお前が見事にぶっ壊したんだよ。』


彼は笑っていた。



最初は訳が分からなかった。だってここは二次元の世界だ。三次元の人間が作った " ルール " に逆らえる訳もないのにお前はいとも簡単にぶち壊していくんだから。

オレだって最初からこんな性格していたわけじゃない。

このゲームの "ルール " 通りにちゃんと " 主人公 " らしく正義感が強くて、みんなに優しくて、人に向けられる好意に病的に鈍感で、それで悲しいときはヒーローに助けてもらえるような泣き顔が可愛い男の子っつー設定だった。

だから、まぁ・・・・・あんま言いたかねーけど、お前が他のキャラたちと絡んでいるのを遠くから見ていて、オレは一生このまま誰にも気づかれることなく一人このままなのかって

寂しくてずっと泣いてた。そうすればいつか "ヒーロー " に助けてもらえると、それがこのゲームの主人公らしい 行動だって、な。


でもさ、お前の成長を眺めているうちに自分がもとの性格じゃ出てこないような気持ちが出てきたんだ。お前がフラグを折っていくときとか

『あぁなにやってんだよもう!そうじゃないって!』とか、

時にはお前がフラグを見逃してそのままあり得ない方向に失敗したときとか心から笑った。

するとさ、気がついたらオレを含めて皆が生き生きした表情してたんだよ。

しかも殆どの奴らはお前と違って一応この世界のルールを守って生活してたのに、だぜ?

オレはさ、会ったときからお前に対してこんな態度だけどこれでも感謝してんだよ。


たしかにオレたちは物語のなかの一部かもしれない、でもさ自分の人生は人が見て、楽しめるぐらいに面白いものだったんだって、見方を変えることができた。そんで、ちゃんと自分の意志で生きているって教えてくれた。

だから、ありがとう。

まぁ、お前はそんなこと考えもしなかったかもしれないけど。


あ! あと、お前。最初「この世界はゲームだから~」とかでうだうだ悩んでたみたいだけどな、勘違いすんなよ!?

今言った様に、皆自分の意思で生きてんだ。ただお前が主人公だから惚れたわけじゃないって、そこんとこちゃんと分かってろよ!

って、まぁ最近のお前を見てれば大丈夫か。

お前なんだかんだで、ちゃんとこの世界のこと見てくれてたからな。


・・・だからって、おい。


─────・・・・何泣いてんだよ。』

途中から涙腺が緩くなっているのが分かったが、どうしても止められなかった。あんなにも自分はこいつに対しても、この世界に対してもひどい扱いをしていたのに、それでもオレのことを受け入れて、認めてくれていた。

ああ、もう本当に、

(オレは馬鹿過ぎだよ・・)

オレが泣いている間もこいつはただ黙って待っていてくれた。それがまたさっきまでの薄暗い心を優しく溶かしていくようで、また泣いた。


しばらくしてから、加賀見 涼 はその席を立って再び歩きだした。

「お、おいっ、どこに向かってんだよ!」

『ばーか、まだ片付いてない問題があるだろうが。』

「あっ・・」

そういえばそうだった。まだ根本的な解決はしていない。自分の 元・兄である日暮 彰人、彼はオレのせいで更に狂ってしまって、オレを逃がすためにまだあの場所には黒澤が取り残されている。

『で、どうするつもりなんだ?』

「え?」

かなり時間は経っているけれど、まだ自分の中では何をどうするかも決まっていない。そもそも日暮 彰人に対してどうしてほしいかも、自分がどうしたいのかもわからない。何が正解なのかすらも・・。

『お前の兄が再び会ったときお前にどういう対応をするか分からないけど、またなにかあってもお前をちゃんと守るから。

だから、お前は自分が本当に後悔しない道を選べ。』

「うっ・・だけど、」

(どんな道を選んでもお前を巻き込んでしまうのには変わりないのに・・)

そう思ったとき、まるで予測でもしてたかのように返事を返した。

『オレのことは心配すんな。今、こうあるのもオレ自身の意志だ。だからお前はお前の意志でいけ。

たとえ何があろうと、今度は一人じゃないからな。』

するとオレの手がぎゅっと誰かの手に握られた気がした。これはたぶん、オレの気のせいじゃないんだろう。

「うん。」

そうだな。

「黒澤は助ける。だからもう一度あの真っ白な空間に戻るよ。で、あとはアドリブだ。」

『りょーかいっ♪ まったくあんな目にあったのに無理するなぁ』

「お前がいるからな。」

『・・はいはい。』

そしてまた空間に歪みが現れ、オレたちはその中に入っていった。



「やぁ、いらっしゃい。随分遅かったね、なにか対策でも練ってきてたのかな?」

真っ白な空間に入ったとき、日暮 彰人はオレたちより数メートル離れた場所にいた。意外と近くにいたから驚いたけれど、もう今度は怖くなかった。

「別に、なにもしてないよ。ただお茶を飲んでただけだ。」

「ははっ、なにそれ面白いジョークだね。で、何をしに来たの? 僕は考えを変えるつもりはないよ。君がまだ帰れというなら僕は君と心中するつもりだけど。」

一歩ずつ、ゆっくりと近づいてくる。オレは立ち止まったままそれを待った。

「別にそれでもいいよ。」

「・・へぇ、」

「オレはただ、お前に言いたいことがあって来ただけだから。」

あのとき、加賀見 涼にはアドリブで行こうと言ったけれど、実はここに来るまでに何度も考えた。

でも、加賀見 涼と話してちょっとはオレの考え方も広がったと思う。だから、これは正しさとか偽善じゃなくてオレのオレ自身の心の底からの言葉だ。




「彰人お兄ちゃん、オレと────」








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