久しぶりの再会
読み返すと、かなり分かりづらく説明の足らないところが多々ありました。
多分本編が終わった後に補足か番外編のようなものを付け足すと思います。
少しずつ消えかけていく掌。それでも構わず走り続けるオレ。構わず・・かまわ・・
「っぎゃああああ!!! お、オレの手がっ、手がああぁぁああ!!!! 」
『やかましいぞ! 早く あいつ を見つけないとっ 手どころじゃなくこの世界全てが消えるんだからな!?
お前の鈍くささでオレまで死ぬとかふざけんじゃねーぞ!! 走れっ! 足がちぎれてなくなるぐらいに!!』
「もう足も半透明だわちくしょーー!! 」
オレの中にあるもう1人の存在がオレに叫ぶが、そんなんオレだって分かってるもん!(泣
口の中が血の味になってきた。喉も苦しいし、かなりの時間を走っているせいで足がもう動かなくなってきている。それでも動かせてるのは理屈も糞もない、ただの意地だ。
「はぁっ・・はぁはぁっ」
真っ白な世界。走っても走っても終わりが見えることはない。景色も変わらず、オレ以外何も存在していない。
(こんな寂しい場所で、あの人は今もひとりぼっちのままなのか・・)
上下左右何も存在しないこの世界で、ただ1人を見つけるためにオレは走った。
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1人だったんだ。
自分以外誰も信用できなくて、汚い嘘と欲望にまみれたあの世界で今日まで生きてこられたのは、あの子が約束してくれたから。
あの子と一緒に生きられるなら全てを捨てたって構わない。
最後にあの子の隣に僕がいるなら、それでいい。
「僕はね、正直どっちでもよかったんだ。
そりゃあ最初は君を生き返らせようと思ったさ。あの女の姿になっても愛せる自信が充分あったからね。
でもさ、あの世界でそうして生きていけば、また君の一番は取られちゃうかもしれないでしょう?
だから、これは本当に途中で思い付いたことだ。
優しい君なら多分こんな結末になることも想定済みだったよ。
トラックの衝突による記憶障害が起こってしまうのは予定外だけど、それでも良かった。
君が嫌がろうがなんだろうが、君とまた二人だけの暮らしが出来るならばそれで僕は幸せなんだ。」
────本当に?
「・・・本当だよ。だから、今すぐ姿を見せておくれ、僕の可愛い弟。」
空間に歪みを生み出し、そこから手足を出した。1人でブツブツ言っていたのもオレが近くにいたことに気づいてたからだろう、オレは彼の目の前に立った。
「・・久しぶり、彰人お兄ちゃん。」
「僕にとってはさっきぶりなんだけどね。
久しぶり、和也。」
彼──今回の騒動の元凶である男──日暮 彰人だ。
日暮彰人は元の姿ではなく、黒澤 色にそっくりな姿のままそこに立っていた。まるでその姿が彼本来の姿であるかのように振る舞っている。オレは嫌な予感がし、首筋に嫌な汗をつーっと流した。
「オレに見つかっても動揺しないんだ?」
「想定の内さ。」
「じゃあオレが今から言おうとしてることも分かるよね。」
「分かっている上で拒否するよ。いくら可愛い弟の頼みでも、僕と君を引き剥がそうとするものは誰であろうとも許さない。
僕は、永遠に君とここにいたい。」
今まで余裕があるように振る舞っていた彼が、この瞬間、本の少しだけ本性を露にした。
その瞳は まるで餌に飢えている猛獣のように獰猛で、だけれど今にも泣きそうな子供のように不安定だった。
しかしオレは構わず畳み掛ける。
「駄目だ。」
彼が傷ついたように顔をしかめた。
「どんな事情があってもお前はやり過ぎたよ。
関係ない人たち巻き込んで、殺しかけて、お前は現実の世界できちんと裁かれるべきだよ。それで、迷惑をかけた人たちに罪を償うべきだ。」
「裁かれるべきというなら、オレはすぐさまあの世行きだよ。
本当はあまり和也には知られたくなかったけどね、人には言えないようなことをたくさんしてきた。
ね、分かるだろう?行き着く先がどちらも似たようなものなのだから、ここにいても同じことだ。」
彼はあっけらかんとそう言った。
「・・・・本気で言っているのか。」
「だとしたら?」
彼の涼しげな顔が変形するくらいに全力で殴った。
「・・はぁはぁ・・、」
「・・・っ」
肌の色が薄いキャラデザインなので、殴られたところは赤黒くなってて痛々しい。けれどオレは殴るのを止まなかった。
「お前はっ、人の人生をっ、関係ない人たちの未来をっ、潰しかけてっ、ほんっとうにっ、なんとも思わないのかっ!!」
1人はオレの妹。彼女は優しくて、思いやりのある子だった。
けれど、彼女はオレと華の命の板挟みになりあんな決断をしてしまった。
きっとこの先彼女は、知り合いを×しかけたことの十字架を背負い生きていくことになるんだろう。
こいつに騙されていたからとはいえ、結局は彼女が下した決断であり、それがますます彼女を苦しめていくのだろう。
彼女の決断があまりにも幼すぎたゆえに。
次に華。彼女はオレを救おうとして本来失うはずの無かった命を落とそうとした。
結果的に助かったものの、それは完全にというわけじゃない。
なぜなら、この機械は魂をやりとりするため無茶な二次元と三次元を行き来するときに、自身の寿命がかなり削れてしまうものだからだ。
彼女はこのさき長く生きられない。
最後に双方の両親や周りの人たち。とくに両親たちに至っては手塩にかけて育てた娘たちを失うところだったのだ。
みんな、みんな巻き込んだ。始まりはオレの父親だった。
でも、ここまで事を大きくしたのはこの男なのだ。
自分の、自慢の、兄なのだ。
「・・・ぐすっ、はぁぁっ、
────・・お願いだから、もう、やめてくれ。
三次元に帰って自首しよう? これ以上、オレは兄のこんな姿見ていたくない。
オレにとって、自慢の兄のままでいてくれよっ
なぁっっ 彰人お兄ちゃん!!」
彰人は顔を下に向けたまま動かなかった。
腕はだらりとぶら下がり、弱々しさを感じたと同時にどことなく危うさを感じた。
オレはゾッとして後ずさった。
彼は自身の頬を爪で引っ掻いたせいで血が出ている。髪から除いた瞳は瞳孔が開いていて充血している。
あぁ、やはり駄目なのか・・そう感じた瞬間にゆらりと彼が動いき、また空間に歪みが現れた。
そこからすぅぅぅと刀の様なものを取り出した。
多分その刀の本来の目的は彼自身を貫き、本当の黒澤 色に成り代わることだったんだろう。
だけれど、今の彼を見るかぎり貫かれるのはオレになりそうだ。
もしくは二人同時かもしれない。
避けようと足を動かすけれど、恐怖で足が動かなかった。
いくらオレが何度も×んでいるとはいえ、慣れないものは慣れないのだ。
やられるっ!! そう思った瞬間、突然彼が不自然に止まった。
「・・・・・っえっ!!?」
『っよく分からねぇけどっ、今のうちに早く逃げろっ! 加賀見!! 』
彼の口から彼自身の意思とは関係ない言葉が出た。
ま、まさか・・
「黒澤ぁっ!!??」




