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主人公と元主人公

最近終わりかたが同じだ・・・。

今、目の前には自分とそっくりそのまま同じ顔────もう一人の加賀見 涼がいた。

『ったく、お前がそんな態度だから他の奴等が暴走したんだろうが。察しろこの馬鹿っ』

「いや、あんなん見せられたあとも思うのは絶対分かんないって!」

・・しかもなぜか説教されています(泣。



遡ること数時間前──


視界が真っ暗ななか、一筋に光る線を見つけた。それは丁度転生したとき母胎にいたときと同じような温かい場所で、線の場所にオレは思わず手を伸ばした。


『起きて、───』


声が・・・・聞こえる。

『ねぇ、起きて──』

暖かくて、優しい──そう、まるで


お母さんみたいな─────


『っ起きろ っつってんだろうがっ!!いい加減さっさと起きんかい!!』

「いや母ちゃんのほうかよっっ!!」

目を明けガバリと起き上がった先に見えた景色は、───

パチパチ

「・・・・・・・あり?」

一面真っ白な空間だった。雪とかじゃなくて、とゆうか雪どころか風景という風景が何もない、ついでいえば上とか下とか方向が分からないような上下左右全てが真っ白だった。一応自分はここで寝ていたようだけれど、足元がふわふわして地面に着いていないような気がするのでなんとなく地面もないんだろうなって思う。

周りを見渡しみても人を含めた生き物全てが自分以外に存在しなかった。文字通り何もない。

「・・え?どこだここ・・。」

『ここは二次元と三次元の狭間の世界だ。』

「うぉっ、なんだこの声!?頭に直接響いてるんだけど!!こわっ!!」

『直接お前の頭のなかに呼び掛けているんだ。それぐらい分かれよ豚野郎』

「罵倒すご!!」

声の主は目の前にいきなり現れた青年のもののようだった。青年はまるでゴミ虫を見るかのような目付きでオレを見ていた。

「・・あれ、お前・・」

『はぁ、なんでオレの体の中身はこんなクソ豚なんだよ。もっといい奴いただろ。っざけんなよ、人の身体でさんざんやりやがって、

×ねクズ』

「口悪いな!この主人公(加賀見 涼)!!」

目の前の青年は今世の自分の姿にそっくりだった。


~間~


「・・で?なんなんだこの状況は。」

『なんだ?センブリ茶は嫌いか?ゲームの中でもかなりのレアアイテムでなかなか手に入らないのに・・貴重だぞ?』

「ちっげーーよ!!いや違くないけど!つーかよくあんたそんな苦いお茶飲めるな!

センブリ茶がレアアイテムってこのゲーム頭おかしいんじゃねぇの!?何狙いだよ!バラエティーに富みすぎだろ!」

『うるさいな、お前こそ見た目がゲームの主人公だからっていちいち大袈裟に反応するのは止めろよ。見ているこっちが恥ずかしいわ。』

「~~~~~っ!!///」

何故だかオレはこの目の前の自称本来のゲームの主人公、加賀見 涼と名乗る男とお茶を飲んでいた。つーかセンブリ茶苦っ。・・吐き出していいよね?これ。

『ふぅ、・・さて一息ついたところでお前に今起こっていることを手身近に話してやる。有り難く思えこの豚!』

「あれ?!あんた一応ゲームの主人公なんだよな!??」

なんかどっかの悪女と同じ臭いがするぜ! てかなんでオレこんなあっちこっちで嫌われてんの!?

『じゃあとりあえずお前が分かる範囲で今までに何が起こったか説明してみろよ。言っとくけど三十文字以内で。』

「短っ!」

『オレの貴重な時間割いてやってんだ、さっさとしろ。』

・・・・えぇ~。


数十秒悩んだ末に、自分なりに大分大まかにまとめることができたと思う。

「前世で死んだ後ゲームの中に転生し気づいたら殺されて今ココ。」

うわ、自分で言ってて、意味わからんわオレの人生。てゆうかオレ死にすぎじゃね?

『おぉ、ホントに三十文字だ。』

「あんたがやれって言ったんだよね!?」

なんなん?この人。サドか、サドだな。だから今オレが涙目でもスルーしてるんだな。なるほど理解。少しでもいいからゲームの中で攻略対象キャラに好評だったバブミをここでも発揮してくれよ!

言っとくけどオレ、さっき親友に殺された(?)んだからな! こんなテンションだけど傷心中なんだからな! 世界があまりにも厳しすぎるのでせめて自分だけは自分に優しくあろう。 プリン食べたい。

『ふむ、まぁお前が経験したのをまとめたらだいたいそんなん感じだろうな。実際、お前はなんにも事情やらなんやらを理解もしてないしそもそも知らないし。』

加賀見 涼は顎に手をつき少し考えるようなそぶりを見せた。

「はい先生、質問があります!」

『なんでしょう』

「なんで当事者のオレよりぽっと出の先生の方が状況を理解してるんですかっ!」

『それはオレがゲームの世界の神?的な?? 存在だからです?』

「いや、そこは肯定しろよ。」

『じゃあ今のお前は自分が何者かって聞かれて肯定的に言えるのかよ。』

「・・・」

・・似た者同士だった。


『さて、じゃあ今のお前の話にオレが足りない部分を肉付けしてやろう───だがオレは話が長くて最終的に何を話したいんだか分からないようなぐだぐたした説明が嫌いなので、今回は特別にこんなものを用意しましたぁ~』

ジャカジャカジャカジャカ~♪と口で効果音を口ずさみながら何もないこの空間に異次元的な歪みを生み出して何かを取り出そうとしていた。そして欲しかったものが見つかったのかピクリと反応したあとバッとこちらに振り返って今までお茶を飲んでいた机にダンッと勢いよく置いた。

『ジャジャーン!手作りフリップ~♪』

「そんな感じで説明はいんの!?」

てっきり回想シーンとか過去編突入とかそんな話の繋ぎかたするのかと思ったらガチの説明ですやん。フリップて、フリップて!!

『なんだよ、文句あるのかよ。一番分かりやすいじゃんかよ、フリップ。時間もないしとっとと進めるぞー』

「・・へーい。」

半目でこっちを睨む加賀見 涼はまるで威嚇する猫みたいだ。手ぇ出したらこっちが猫パンチどころか噛みつかれて引っ掛かれるやつ。あれは痛い。


そうして目の前の彼は すっと、表紙みたいな紙を一枚取り出してこれまでのことについて説明を始めた──────・・・なんかチラリと見えた絵があまりにも悲惨だったんだが、大丈夫だよね? 嫌な予感しかない。



─────そうして、今全てを知ったオレはというと、あのよくわかんないモジャモジャみたいな絵で説明されたせいで、シリアスな話だったはずなのに、シリアル的な受け止め方しか出来なかった。

(いやだってしょうがないじゃん!! 人間なんだかエイリアンなんだか区別できないし、てゆうかあの絵で理解できたオレマジすげー!)

今まで説明をしていた加賀見 涼はオレの態度があまりにも軽かったのでプンプン怒ってるけど、絶対オレのせいじゃないと思う。

てゆうか絶対もっと良い方法があったし、つーか普通に話したほうがより臨場感が伝わってきただろ。


こほんっ、目の前の加賀見 涼 は咳をした。

『それで、だ。三浦 和也』

「・・・ゴクリ」

『お前はもとの世界でも死に、こちら側の世界でも死んでしまった。』

「・・・」

『だから、今のお前に出来ることはない──────が、

このオレが、ボンクラクズ野郎であるお前のために2つの選択肢を用意した。』

「えっっ!? ・・それってどういう・・」

(つーか、なんでだ?)

『どちらを選んで、その掴みとった選択でこれからどうするかはお前で決めろ。だがな、これだけは言っておく、

──── 後悔だけはするな。』

真剣な目でオレを見る。 だけど加賀見 涼の目に写っているオレも似たような目をしていたので、端から見たらきっと鏡のようだ。


『三浦 和也、お前に残された選択肢はこの2つだけだ。

一つ、──このまま輪廻の中に入ることもなく、魂自体が消えてしまうのを待つか、

二つ、

──今ここでオレと融合して再び2次元の世界に戻り、永遠に終わらない人生を何度も繰り返すか。』


選べ。


なんだよそれ。最初から選択なんてあってないようなものだろ。

「・・は、ははっ。そんなんどっちに転ぼうが録な目に合わないんじゃん。 ・・・・・だったらさ、」


よりハッピーエンドに近い方を選んだ方が得だよな。


そうして、辺りは光に包まれた。





~もう一人の加賀見 涼、独白~


『オレがなんであのクズ野郎を助けたんだって?

・・・・仕方ねーだろ、色んな奴の記憶を覗いていくうちに感化されたんだよ。

なんだよあいつら、このオレこそが主人公なのに、あんなクズにデレデレしやがって。

お陰でオレまでこんなっ・・こんな、・・こん、な・・・・。

っあ"ーーっくそっっ! 分かったよ素直に言うよ!!

一目惚れだよ、悪いかちくしょー!!!///

あーあ、ハーレムの主人公であるオレがまさか失恋するなんて、マジあいつありえねーっ。

・・・・・・これからは一心同体とか、もう叶いっこないじゃんか・・。

・・・っち、とりあえずこれからはあいつに近づくやつのフラグ全部ボッキボキにへし折ってやる! オレの人生あいつに全て捧げたんだ、それぐらい許されんだろ。ざまーみやがれ!』







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