俺、死にました。
今回は主人公の転生までのお話です。
「ねぇねぇ、早く行こう!」
「・・はぁ、焦んなくたって遊園地は逃げねーし、ちょっち落ち着けって、華。」
「ぅ~、なんで和くんはそんなにテンションが低いのさ~、せっかくの遊園地だよっ!?テンションアゲアゲマックスでいこうよっ!」
「アゲアゲって・・古っ!」
今日は幼馴染みである上原 華[うえはら はな]と遊ぶために、遊園地に遊びに来た。
お互い、高校生になってから部活やらなんやらで、忙しくて一緒に遊べなかったから。
ちなみに、冒頭の台詞で勘違いをする人もいるかもしれないが最初に言っておこう。
オレたちはまだ付き合っていない。
たとえ今彼女がいつの間にか育っていた高校生にしては少し大きめな御胸さまをオレの腕に(本人は気付いていない)押し付けながら引っ付いてこようと、オレたちは付き合っていないし、寧ろ健全すぎる関係であると言えよう。
だがしかし!だがしかしだ!!諸君よ!
昔から美少女と言える女の子が天然でこんなことを長年続けられて堕ちないおのこはいるであろうか?
答えは断じて否である!!
初めて会ったとき、前世は傾国の美姫だったんじゃないかと本気で疑われるレベルの可愛いすぎる彼女に"えへっ"と彼女の周囲に花が見えるくらいに眩しい天使のような微笑みを掛けられただけでも、オレの心はズッキュンバッキュンと撃ち抜かれ、もはや顔でお湯が沸かせるんじゃないかと思うくらい真っ赤に染まっていたオレは、今現在も生粋の童貞ぶりを発揮しているわけで、台詞の字面上はなにも気にしていないですよ感を出してはいるが、
その実自身の分身であるジュニアさんは自分の感情に対してひっっっじょうに素直で臨界点マックスの、彼女に言われたからという訳ではないがライブのコンサート並にアゲアゲなのである。
しかし、この状況を何故彼女はスルー、というか気付いていないかというと一重に彼女の純粋さと病的なレベルの天然さにある。
普通の人ならば、今のオレの自他共に認める下手すぎるポーカーフェイスと明らかな挙動不審な姿に少し鈍い人でもなんらかの異変を感じることは必須だが、如何せんこの幼馴染みは普通を軽々と越えるほどの天然さんなのだ。
更にそれに加えて、高校生には珍しすぎるほどの無垢で某主人公並の素直な心をもっているのである。恐らく子供がどうやって出来るのかという質問も自信満々で「え?コウノトリさんが運んでくるんじゃないの?この前、映画やってたじゃん。和くん、ちゃんと勉強しなきゃダメだよー」ぐらいに返してきそうだ。
まぁ、要するにだ。なぜ、お互い忙しい時期に二人きりで遊ぶことにしたのか。
それは、こんなに天然でそういった雰囲気になっても気付かない可愛い幼馴染みとのナアナアな関係を終わらせ、新たな関係を築き上げるために来たのである。
この幼馴染みは大層可愛いらしいため、好意や邪な目を向ける輩がそれはもうゴキブリ並の繁殖力でウジャウジャいるが、この幼馴染みに彼氏がいるという事実はいまだなく、純潔は綺麗なまま保たれている。
一回チャレンジして破れたオレの友人たちによると、断りかたはいつも
「幼馴染みのオレで手一杯だから」
こうやって改めて見てみると、オレを巻き込みつつ、全ての蟠りを押し付けた感が半ぱないが、オレは変な方向にポジティブシンキングだったため、もしかすると自分にも希望があるのかもと舞い上がりこの数ヶ月、考えに考えまくった告白大作戦を実行したのだった。
しかし、現実は漫画みたいにうまくはいかなかった。
彼女いない歴=年齢なオレがエスコートなんてカッコいい真似が出来るわけなく、経験もテクもない童貞がやったことはジェットコースターで白目を剥いて失神し、コーヒーカップでガチの乗り物酔いをし、お化け屋敷の入り口付近で発狂し、挙げ句昼御飯は彼女が食べ終わったあとに自分の分がきてしまい、猫舌な舌をなんとか動かして急いで食べていると、
「あ、あのさ、和くん。そんなに急がなくても華はちゃんと待ってるから大丈夫だよ?和くんが猫舌なのはよく知ってるし・・ね?
よしよし、いい子いい子。」
と逆に気を使われ、幼児扱いされたときにはもしかして自分は恋愛対象どころか男としても見られていないのではないかと泣きそうになった。
まぁ、ともあれ。
なんやかんやあったものの、楽しい時間は時の流れにしたがって終焉を迎えるのであった。
・・・。
いやいや、まてまてまて。まだオレはこの鈍感純粋天然子ちゃんに恥態しかさらしていない。途中から告白のこと忘れて童心に帰った心でわーいと遊んでしまったがそれでも「和くん帰るよ~?」「あっ、はぁーい。」
「・・・って、ちょっと待ったぁぁぁぁぁ!!」
「ん?どうしたの和くん。
帰りのバスに乗り遅れちゃうよ?」
つい、いつものノリで返事をしてしまった。恐るべし、パブロフの犬現象(長年の調教の賜物)・・。
いや、たしかに帰りのバスに乗り遅れちゃったらここから帰るのはタクシーしかないし、高校生にとっては少し、いやかなり厳しい出費をする大問題なことだけれども。
やっぱりそれでも、
「・・大事な話があるんだ。少し時間をくれないか?」
好きな女の子に想いぐらいは伝えたいからさ。
「それ、バスの中じゃダメなの?」
バスの中で告れってかっっ!!?
いくら鈍感でもこれはひどすぎる。彼女頭には邪心を察知すると恋愛フラグ狩りをする妖精さんでも住み着いているのだろうか。
いやいい。彼女が鈍感天然子ちゃんなのは誰よりも長く付き合ってきたこのオレが一番知っている。
たとえ、夕日をバックに男女二人が(片方は真剣な表情で)向かい合っていたら少しは気づいてくれてもいいものだが、そこは幼馴染みクオリティというかなんというかでしょうがないことぐらいは分かっている。どんなに傷付こうと泣きそうになろうと(実は少し目が潤んでいる)オレはちゃんとお前に想いをつたえるよ。
「あのな、オレお前に言わなきゃいけないことがあるんだ。」
「・・・っ!」
おや?少し動揺したように見えるのはオレの希望と妄想と願望が入り交じった幻覚だろうか。
まぁ、いっか。
「オレ、好きな人がいるんだ。」
「・・・」
「その子と会ったときからオレの世界はその子中心に回っていて、
いつだってその子の一喜一憂に心を振り回されて、
その子に彼氏ができたって噂聞くたびに嫉妬してた。
だからな、もうそれを終わりにしようと思う。
華、オレはお前----
が好きだ。そう言おうとしたときに、背後から悲鳴とともに車のエンジン音が徐々に近づくのが分かった。
音はかなり大きくて、バスやトラックみたいな大型車であることが見なくても分かる。
自分の回りだけ、時間が遅くなりいままでの記憶が流れ、コレが噂の走馬灯か、と思ったときには背中に大きな衝撃を感じた。
ドンって鈍い音が聞こえたのをかわぎりに鼓膜が破れたのか一切の音が聞こえなくなって、倒れた体を動かそうにも、力が入らない。
視界が段々ぼやけて、最期に見えたのは自分の血と、泣きながらなにかを訴える幼馴染みの姿。
あぁ、可愛い顔が涙でぐちゃぐちゃだ。早く拭いてあげたいけど、やっぱり体が動かない。華はどんな顔も可愛いけれど、やっぱり笑ってる顔が一番好きなんだ、オレ。
だから、華
「・・泣、か・・・で、
・・・は・・な・・・・」
「和くん!?・・・や、いやだよ、死なないでよ!華を置いてかないで!
和くんっっ!! 」
あーあ、結局告白できなかったなぁ
カッコ悪り、オレ。
最後まで読んでくださりありがとうございました!