華麗なる過去編への突入なんだZE☆
ここでいったん過去編へと突入します。まぁ華麗なんだか分かりませんが、とにかく過去編です。
最近書いてて思うことはなぜコメディを前提にした明るいラブコメを書くはずが回をまたぐごとにどんどんえぐくなっていくのか。
不思議だなぁ・・というわけでやっぱり過去編です。
────こんな記憶知らない────
起きて
ねぇ、起きて────
暗闇のなかで声が聞こえた。優しくて、暖かい、安心する声が。
「ほら和也、起きて。学校に遅刻しちゃうよ?兄さんもお着替え手伝ってあげるから、ね?」
まだ起きたばかりで、視界がボンヤリして景色がはっきりわからないけれど、そこにいるのが自分の大好きな人物であることだけは理解できた。
「・・・ぅうん、だってまだ眠いもん・・。」
いくら太陽が眩しかろうと、雀が元気に鳴いていようとこればかりはどうしようもないのだ。春眠暁を覚えず。昔の人はうまいことを言ったもんだ。すごく眠い。
「・・はぁ、しょうがないなぁ。じゃあ あと五分だけだからね。」
「ありがと、彰人お兄ちゃん。」
そしてまた、夢の中に落ちる。その間もずっと青年はベッドで気持ち良さそうに眠る少年を優しく眺めていた。
──三浦(旧姓・日暮) 和也 小学校一年生、六歳の春の出来事だった。
「彰人お兄ちゃん、父さんはまたけんきゅーしつ?」
「うん、そうだよ。だから今日も二人でご飯食べようね。」
「うんっ」
学校の帰り道、彰人お兄ちゃんはよくオレを迎えに来てくれた。今日もいつも通り手を繋いで下校する。
「あぁ、そういえば牛乳がなかったかも。和也、一緒に買い物ついてきてくれる?あと、三丁目の八百屋の田中さんが枝豆いりのご飯くれるって言ってたからそれも取りに行こうか。」
「やったぁ、オレあのご飯好きだよ!」
彰人お兄ちゃんはかっこよくて優しいからみんなの人気者。だから、こうやってご近所さんからご飯を分けてもらうことも少なくない。そんな自慢のお兄ちゃんがオレだけを見てくれるのは弟であるオレの特権だから。ふとしたときに感じるそれがむず痒くって仕方ない。
「ん?和也、僕の顔に何かついてる?」
「あっ、ううんっ、別に・・//」
お兄ちゃん、大好き。
オレの父さんは研究者だ。何を研究しているのか聞いても難しくてよくわからなかったけど、なんか、テレビの中に入るための研究なんだって。成功したらオレを一番に入らせてくれるって約束してくれた。ふふっ、もし入れたら何をしようかな。好きなキャラクターと話せたりするのかな? 楽しみだ。
ちなみにお母さんはオレがまだ赤ちゃんだった頃に死んじゃったらしい。よくお母さんのこと覚えてないから分からないけど、お兄ちゃんが時々 大丈夫?寂しくない?? ってオレより辛そうな顔して聞くからいつも 大丈夫だよ って答えたらまたお兄ちゃんは悲しい顔でぎゅうって抱き締めてくれる。いつも笑顔で、あまり涙とか出さないし愚痴とか言わないから、そのときだけはオレにだけ甘えてくれるようで嬉しい。
父さんはあまり普段の生活で顔を見せない。地下の研究室に籠りがちだから今日も夕飯は二人の分だけ。でもあまりに地下から出ないからお兄ちゃんがいつも心配して父さんの分のご飯を持っていく。そしてそれは今日も例外じゃなかった。
「あれ?お兄ちゃんご飯は?」
「あとで食べるよ。まずは父さんにご飯届けなきゃ。あの人まったく休まないから。和也、先に食べてて。」
はぁ、って深いため息をつきながら地下へと続く階段を降りていく。オレはこの階段が嫌いだった。暗くて先が見えないから、お化けとか怖い世界に引き込まれそうだ。
そのあとお兄ちゃんが見えなくなって、周りがシィィィンと静かになって自分が今ここに一人なんだって気づいたら、怖くなって電気がついてる明るいリビングの方に逃げはいった。地下室の扉がきぃぃバタンッ って不気味な音をたてながら閉まったのなんてオレは聞かなかったふりをした。
一人でご飯をつついてて、いつもよりお兄ちゃんの帰りが遅いなぁって気づいた。いつもならもうとっくに二人でご飯を食べている時間なのに。
ご飯を食べて、食器を洗って、お風呂に入って、もう時計の針は9時になろうとしているのにお兄ちゃんはまだ地下室からあがってこない。すでにお兄ちゃんのご飯は温かさを失って、ラップがかけてある。
流石に心配になったオレは怖いのを我慢して地下室に向かうことにした。ゆっくり、一段一段確認しながら階段を降りる。恐怖を緩和するために胸に抱いているぬいぐるみをぎゅうぎゅう体に押し付けて、なんとかたどりついた。
金属でできたドアの前に立って ごくり と生唾を飲み込む。軽くこんこんっ ってノックをさせてから重いドアノブを回した。
「・・父さ~ん?オレだけど・・。入っていい?」
機械がいっぱいあるのは分かるんだけど、なにぶん電力をその機械に使ってしまっているせいで電気が使えないため真っ暗で ほぼ なにも見えない。数秒してから、いいぞー って奥の方から父さんの声が聞こえた。
床に広げてあるコードに躓いて転びそうになりながらも、なんとか手探りで父さんのいるメインのコンピューターがある場所まで来れた。パソコンの画面の光で父さんの周りが少しだけ明るい。
「あの、父さん。」
「おぅ、どうしたぁ和也。小学生はもう寝る時間じゃないのか?」
「えっと、そうなんだけど彰人お兄ちゃんがなかなか戻ってこないからこっちに来たんだ。
ねぇ、父さん。」
なんでお兄ちゃんそこで寝てるの。
震えた声でなんとか言葉を絞り出した。お兄ちゃんは父さんの足元で毛布もひかずに横になっていた。途中で疲れて眠くなっちゃったのかな? でもお兄ちゃんがさっき持っていったお盆の上のご飯はひっくり返したようにめちゃくちゃになっている。おまけにこちらからは顔が見えないからよく分からないけど、頭から血を流している気がする。
だって、父さんの右手にあるのは────赤い液体がついた金属バットだもの。
「・・父さ、ん、あの、なに、し、てたの?お兄ちゃんが・・・」
「────なぁ、なんで母さんが死んだのか知ってるか?」
「・・・え?」
オレの質問には答えず、何故か母さんの死因について聞かれて戸惑う。なんでだって? そんなのオレが知りたい。だっていくら聞いたって父さんやお兄ちゃんは教えてくれなかったじゃないか。
父さんは、ふーーっ と深いため息をついてオレを見た。
「母さんはなぁ、お前が産まれた日に死んだんだ
────難産でな。」
「・・・・・・・・・・ぇ、」
オレが産まれた日に死んだ? 難産ってそもそもなんだ??
困惑するオレを他所になおも父さんは続ける。
「彰人のときはすんなり産まれてきてくれたんだが、お前はなかなか腹から出てきてくれなくてな。ほんと、大変だったよ。母さんや先生がなんとか頑張ってお前を出してようやく産まれたんだよ。
嬉しかったな、あのときは。よく頑張ったな って何回も言って、周りの人なんて気にならないぐらい顔をグシャグシャにして泣いたもんだ。───そのあとすぐだ、母さんが死んだのは。 」
ぐっ と、なにかをこらえるように拳を握った。父さんは歪んだ笑顔でオレを見つめていた。その瞳にあったのは、愛憎が入り交じった複雑なもの。
「俺だって、俺だって最初はお前を愛していたさ。あいつが体を張ってくれてまで産んでくれた 忘れ形見 だからあいつの分まで育てようって。
でもなぁ、・・なんでだろうなぁ。日に日に母さんの面影が強くなってくるお前の顔を見てると辛くて堪らないんだよ。」
なぁ、なんで母さんはあのとき死ななくちゃいけなかったのかなぁ?
父さんは泣いていた。オレは顔をあげることができなかった。抑えていた涙が、溢れ出てきそうだったから。
ごめんなさい、ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい
──────産まれてきて、ごめんなさい。
「俺が何をしてたかだってな。
お前の兄ちゃんはな、母さんを救うために違う世界へ迎えに行ったよ。」
「・・え!?」
「和也、俺 前にお前に言ったよな? もし実験が成功したらお前を一番に試さしてやるって───テレビの中に入るための実験。 もしこれがあれば母さんをまた生き返らすことができるんじゃないかって思った。」
きっかけは お前への愛を再確認するために昔の母さんのビデオを見ていたとき思い付いたんだ。あぁ、まだ母さんは笑っているじゃないかって、ね。
「でも彰人だけじゃ力不足でな、
─────なぁ和也、行って、くれるよな?」
オレは、迷いもなく頷いていた。
自分の子供が倒れているなか、その男はぼんやりと一点を見つめていた。そして和也が視界にはいったとき、彼はフラフラとした足取りで彼に近づき、しゃがみこんで優しく頭を撫でた。
その顔は涙の痕でグシャグシャになっていたが、表情はとても穏やかで先程の狂乱っぷりを思わせないような優しい、父親の顔をしていた。
「なんで、俺は素直にお前を愛してやれなかったんだろうなぁ、和也。
母さん、ごめんな。せっかく頑張ってくれたのに、俺、今日自分の子供を二人も×しちまったよ。 あああ、ほんと」
父親、失格だよ。
男は、笑いながら泣いていた。
来週この場に居なかったら再来週まで死んでるかなぁって思ってください。
書き直しが激しすぎて間に合わなかったら嫌だなぁ・・。




