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番外編:真実と謎の男

他の作品もそうですが、基本的にオタッキーが考える名前は適当なので深く考えずとも大丈夫です。なんかそれっぽい感じのノリで決めてることが多いのであしからず。

「・・・・・・・・は?」

「あっははだよねぇ、普通、そんなこと言われたって信じてもらえるはずもないよね。しかもこんな怪しいやつから言われたら尚更。

うん、そうだこうしよう、お互いに軽い自己紹介をしようじゃないか。

どうせこれから長い付き合いになるんだし。

僕の名前は日暮 章人、君たち風に言うなら

ただのマッドサイエンティストだよ。」


それが、その男───日暮 章人との出会いだった。



日暮 章人と名乗った男が言うには、初めはとある実験だった。そして、そのとき身近にいた丁度よい実験体として選ばれたのが三浦 和也──わたしの大切な幼なじみ。

彼の実験では本来ならば和くんが死ぬことはなかったのだという。しかしあの日、様々なアクシデントが重なり、結果彼は件の通りになった。

「まぁ、実験の方はある意味成功したんだけどね。」

「・・その実験って?」

「ん? やっぱ気になっちゃう?・・あ、ごめんなさいそんな冷たい目で見ないで・・・。」

こほんっ、と男はわざとらしく咳をする。

「一言で説明するなら、"二次元" に入れる実験だよ。」

色々と語弊はあるけどね。

「昔さぁ、思ったことない? もし、このアニメの住民になれたらなぁ・・って。

漫画やゲームの中のキャラクターたちと話してみたいとかあんなことやこんなことがしたい、とかね。

僕はそれに近い形で実現させたのが今回の実験である──────IS実験さ。人の魂を画面のなかに飛ばしてキャラクターに憑依させ

あたかもそこの世界の人間になれたかのような錯覚を起こさせる、まぁ簡単に言うと生き霊だよね。」

そのあとはペラペラと、専門用語の入り交じった説明をされわたしの耳は右から左へと流れていった。つまり、殆ど理解ができなかった。

唯一理解できたのは、彼は日暮の実験とやらで意識が二次元に飛ばされ、そしてそこの住民として産まれ変わってしまったということ。

「馬鹿げてる・・そんな、そんなことが本当にあるわけが・・」

「うん、だから "ある意味" 、成功したんだ。

この意味はただ彼が二次元の世界に入れたことだけを意味している。

そして、その後のリスクが実験がもたらす結果より───遥かに高い。」

彼はあのゴチャゴチャとした機械の通常より長めのキーボードを慣れた手つきで叩いた。

「・・これ、見てくれる?」

画面の中のゲームではどうやら動画が固まってそのまま制止しているようだった。

「ゲームだからさ、バグが起きるのは仕方がないんだけどね。

でも、彼のいる世界ではそれは世界の崩壊を意味する。」

「え?」

「人間の魂ってさ、輪っかのようになっているんだよ。輪廻転生って知らない?

魂は何度も使い回しされるんだよ。

だけど、僕が行った実験は失敗で、結果彼は世界の理から外された。

運よくこのゲームの主人公に入り込んでそのまま本来存在しているゲームの世界の住民として生きられたようだけどね。

で、だ。問題はこの世界は実際にあって、そして、それのパイプ役となっているのがこの機械ってわけ。

三次元と二次元を繋げているんだ。それなりの負荷は懸かる。例えば、──」

ニヤリと笑い言う。

「──両次元の消滅、とかね」

「・・日暮さん、ふざけてないで早く話を進めてください」

琴乃ちゃんは段々調子を取り戻してきたのか、先程の恐怖は見えなくなっていた。けれど、まだ警戒は解けていないのだろう。頑なにわたしの方を見ようとしない。それがまたわたしに先程の出来事を思いださせる。

「ふざけてないのになぁ・・ん?あぁそうそう、それでねこのバグは簡単には直んないから、実際に二次元の世界に行って歪みを直そうかなぁって思って。崩壊しちゃったら世の理から外されてしまった彼は存在ごと消滅してしまうからね。」

「さっきからべらべらと話してますが、それとわたしになんの関係があるんですか。」

「せっかちだなぁ。君にはというか彼のご両親たちにも悪いことしたなぁっていう気持ちぐらい僕にだって持ち合わせてるんだよ?

まったくもー、そんな風に言われるんだったら二次元の世界にいる彼に最後の言葉を届けてあげるの、やめよっかな。」

「っっっ!!!??」

「あのときの人体実験で、じつはもう大方仕上がってるからさー、僕これからゲームの中に行こうと思ってね、じゃあついでにみんなの伝言でも頼まれてあげよっかなーって。」

「なっ、」

「・・・ふふん、いい食い付きっぷりだねぇ、

ねねねやってほしい? ほしいでしょ?? しょ???」

「・・・」

「いたっ、ちょっ、琴乃ちゃんストップ!」

突然のドヤ顔を出してきた日暮は調子を取り戻した琴乃ちゃんに足蹴にされていた。

というか、琴乃ちゃんはまだ小学生なのに足蹴にされてダメージを受けるなんてあの人は琴乃ちゃんよりもアレな人なのかもしれない。

華の中で力のヒエラルキーが決まった瞬間だった。

「えー、こほんっ・・君らと話してると話の節々で脱線するんだけど・・・。」

誰のせいだと思うけど口には出さない。

「で? どうかな華ちゃん。最後に彼に言いたいこととかある?

なんなら無料でお願い聞いちゃうよ?」

「ひとつ、お願い聞いてもらってもいいですか?」

「ん? なんだい??」

「というか、命令。」

すー、と息を吐き、言う。

「──わたしも和くんのところに連れていきなさい。」

「それは無理だね」

「・・・っ、」

日暮はまるで刃物のような鋭い視線でわたしを貫いた。今までのふざけた態度がまるで嘘のように場に緊張が張り詰める。日暮はゆっくりとわたしの方に歩み寄り私の目の前に立った。

「言ったでしょ、それなりの負担がかかるのに普通人間一人無傷で違う次元に転送させるのだって奇跡に近いんだ。しかも一度往復させたらきっとこの機械もお陀仏になるだろうね。

二人を転送なんて、無駄死にするようなものだよ。

悪いことは言わない。決して転送のときに無理にでも入り込もうなんて考えない方がいい。

それが君のためだよ。」

わたしと日暮の目線がぶつかる。彼の目には相手に有無を言わせない強さがあった。

それでも、わたしは諦めたくなかった。

「・・・はぁ、分かりましたよ。第一貴方の言うことを全部信じたわけじゃありません。無駄死にするような真似はしたくありませんし、貴方と心中する気もありませんから。」

「えぇ、まだ僕のこと信じてくれないのぉ?

さすがに警戒固すぎだよ~。悲しくなっちゃうなぁ」

ピエロのようにおどけてみせる日暮に殺意が再燃しそうになった。

「っ、そもそも貴方がそんなに凄い機械を作ったということだって信じられないです!!

だって貴方、だいたいわたしや和くんと同い年ぐらいじゃないですか!」

日暮の見た目はだいたい十代後半、それも高校生ぐらいなのだ。頭部は何故か白髪だが、肌の張りや顔のまだ大人になりきれていない幼さは彼の外見の年齢を表していた。日暮は自身が身に纏っている白衣をふわりと翻しながら、嬉しそうにはにかんだ。

「えへへっ、そう? 僕まだ17才ぐらいに見えるの??

ふふっ嬉しいなぁ、じゃあまだ制服着ても許されるかなぁ?? 僕の希望としては学ランとか着てみたいなぁ」

ちょいちょい、と琴乃ちゃんがわたしの腕をつつく。

「・・華ねぇ、あの人若く見えるけどもう二十代後半だぜ。」

「えっ!? 嘘っ!!」

「ほんとほんと~」

日暮はまだくるくる回っていた。


「じゃあ決行は明日にするね。今日はもう遅いから、狭いけど僕のマンションに泊まっていきなよ。」

やっとあの拘束から解放された頃には、もう深夜になっていた。

彼のマンションという名の実質高級ホテルのような建物にわたしたちは今までいたらしい。しかもこのマンション自体彼の持ち物であるため全フロアには私たち以外人がいなかった。(何者だよと思うが聞くと闇が深そうなので止めておく)そしてキッチンやその他諸々がついた豪華すぎる部屋を一室彼に貸してもらい今日のところは就寝することになった。

ドアノブを回し、廊下に出ようとすると思い出したように彼がわたしたちを呼び止めた。

「あ、そうだ。君たちが泊まる部屋は基本どこに入ってもいいけど、803号室だけには入らないでね。

大事な機械とかあるから。」

「へぇ。」

「へぇ。じゃなくて。特に君に言ってるんだからね! 華ちゃん!!

絶対に!! 入らないように!! あそこはコードが外まで繋がっているから鍵掛けられないんだよ。だからずっと開けたままになってるけどほんと入っちゃ駄目だからね!!

いい!? これはフリじゃないから!!」

「うんうん、わかったわかった」

「・・・・華ねぇ・・・」

呆れた目でわたしを見る琴乃ちゃんなんて知らないっ!

日暮は長く重たい溜め息をついた。

「さっきも言ったとおり、わたしは飛んで火に入るような間抜けな虫さんじゃありませんから!」

「・・もー、ほんとに頼むからねぇ?」


その夜、マンション中に警報が鳴り響いたのはお約束といえよう。


「もーーまるっきり夏の虫じゃないかぁ!!!」

「・・華ねぇ、やっぱりやると思った・・。」

ガックリ


やったぜ!次回からは大好きなホモタイムじゃ!!

というわけで日常回に戻ります。

二回話をまたいだせいで本編を忘れてしまったかもしれない方に少々あらすじを語らせていただきます。

涼は黒澤にハンカチを届けるという名目でデート(?)に誘われました。

それでは今回もここまでお付き合いいただきありがとうございました。

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