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17.

 ぐだぐだ言わずに結論から言うぜ。

 おれはホモ野郎を殺さなかった。

 リリオ・ロペスを殺さなかった。


   †


 やつはたしかに《天国へ一番近い場所》にいた。丘の一番上で昇り始めた朝日を浴びてあんず色に光っていた。やつは野営したらしく焚き火の上にコーヒーポットがのってたのを覚えてる。

 おれはマヌエルに馬をまかせて麓に残すと、カービン銃のボルトを動かして、薬室に弾を滑り込ませた。

「やあ、天使がやってきた。来てくれたんだね」

 背中を向けていたが、声の調子からやつがニコニコしてるのがわかった。おれは、ああ、はるばる来てやったぜ、このホモ野郎って決め台詞を言ってから、頭を狙って撃った。

 やつの頭から帽子が飛んでった。もちろんわざとだ。ぶっ殺す前にびびらせて、こいつのニコニコした顔をしかめっ面にしてやりたかった。ぶっ殺すのはそれからだ。

「よーし、ホモ野郎」おれは銃を肩にやると、指を組んで思い切り前に伸ばしボキボキいわせた。「おれになめたマネしたツケを払ってもらうぜ」

「悪気はなかったんだよ」

「カービン銃とリボルバー。どっちで撃たれたい?」

「きみを見た瞬間、感じたんだ。この子は天使なんだ。ぼくをこの革命で疲れきった地上から天国へと連れていってくれるんだって。そうしたら、もう抱きつかずにはいられなくなって……。でも、あそこで殺されるのは嫌だったんだ。もっと革命や銃から離れた場所で死にたかった。だから、逃げたんだよ」

 やつは《天国へ一番近い場所》でおれに殺してもらうために、天国へ連れてってもらうためにニコニコしながら、そこにいた。

 いまこいつを殺したらニコニコした死体が一つ出来上がる。

 そのことを考えると急にむかついてきた。

 ふざけんじゃねえ。

 がっちゃん! カービン銃のボルトを引いた。ボルトを戻すと、銅で覆われた弾丸が薬室に滑り込んだ。

「ぼくを天国へ連れていってくれるんだね」

 がっちゃん、がっちゃん、がっちゃん! 何度もボルトを引いた。ボルトを引くたびに弾丸が、きーんと高い音を鳴らして弾倉から弾き出された。同じ動作を五回繰り返して弾倉も薬室も空にすると、おれはカービン銃をリリオ・ロペスに放り渡して怒鳴った。

「気をつけい!」

 リリオ・ロペスはあっけらかんとしていたが、おれがもう一度怒鳴ると気をつけの姿勢を取った。おれは怒鳴った。

「控え銃!」

 リリオ・ロペスはとまどいながら控え銃の姿勢になった。

「捧げ銃!」

 リリオ・ロペスは捧げ銃をやった。

 それからたっぷり三分間、おれは軍事教練に書いてあるライフルの保持姿勢を繰り返した。

 やつは汗みどろになってへたばった。

 おれは「よーし教科終わり、今日はこのへんで勘弁してやらあ」と背を向けた。

 ホモ野郎を赦してやっちまったのだ。

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