表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
REVEN↺ERS  作者: 芹生彡
8/8

第五話 魔女を継ぐ者(3)



「──3、2、1、点火」

 彼は太い鉄線によって繋がれた小さな装置を強く握る。その瞬間、彼らの遥か前方にある鉄の筒が、破裂音と共に小さな火を吹いた。そしてそのさらに先にある、柱に固定された肉片が小さく揺れた。

「……当たったのか」

「はい。では、もう一つもいきます」

 レグネヴァールは、その柱の横、彼らの手前側を見る。そこにも、もう一本柱があり、肉片が固定されていた。その前方には、鉄の筒が伸びた装置が固定してある。

「点火準備」

 白衣を着た男が手元の装置を操作する。鉄の筒の前で、ポッと小さな火が灯る。

「3、2、1、発射」

 カチリと音がした直後、その鉄の筒から炎が鑓のように飛び出す。肉の焼ける匂いが立ち込め、食欲がそそられる。肉片から十分に離れているのだが、彼らの頬も熱でヒリヒリと痛み出す。

「停止します」

 白衣の男の言葉と共に、炎が立ち消える。柱に固定してある肉は焦げ付き、灰色の煙が立ち昇る。

「以上です。一通りご覧になりますか?」

「あぁ」

 レグネヴァールたちは、二種類の鉄の筒の方へと近付く。

「この二つが、『炎銃』でございます」

「ふむ。弓銃とはかなり見た目が違うな」

「はい。弓や弓銃とは、根本的に原理が違うのです」

 そう言うと、彼は手元にある金属製の細長い塊を見せる。

「なるほど。むしろ(いにしえ)のヴェント使いが持っていた魔装具(ストラグナム)に似ているようだ」

「正にその通りです。炎銃の構造は、文献に残っている(ガンド)(カノント)などを参考にしました」

 男は手前の炎の柱を吐き出した鉄の筒を指差す。

「こちらが、ヒ型03号です。フロギストンを炎に向かって放出するだけの、単純な造りです」

「ふむ。飛距離は?」

「およそ10ジャークほどです」

「ふむ、少し近いな。それに……」

 レグネヴァールはまだ熱を放つ鉄の筒に手を(かざ)す。

「これを撃つ者も熱に当てられるぞ」

「そうなのです。加えて、やや扱いが難しく、フロギストンを溜めている鉄缶に引火する危険性もあります」

「それは……、先程の爆气管を背負っていることと同じではないか?」

「その通りです」

 平然と言う男を前にして、レグネヴァールは肩を竦める。

(いささ)か、課題が多いのではないか?」

「そうです。が、技術的にはさほど難しい問題では無いです」

「そうなのか?」

「はい。既に試作04号の着想は得られています。それに、フロギストンの圧縮技術、鉄缶の強度がそれぞれ向上すれば、さらなる改善が期待できます」

「なるほど。両方とも、我々が注力している技術だ。相性が良いのは確かだな」

 レグネヴァールは手前の鉄の筒から、奥の鉄の筒へと目線を移す。

「そちらは?」

「こちらがフ型11号です」

 その言葉を聞いて、レグネヴァールは眉を(しか)める。

「11号か。難航したのか?」

「……はい」

 男の表情に初めて、落ち込みと共に陰りが生じる。

「こちらは、極少量のフロギストンを爆発させ、その力でこの弾丸を飛ばすという機巧です。しかし、その弾丸を射出する仕掛けがどうにも……」

「試作機ばかりに熱中して金を注ぎ込むのは感心しないな。飛距離は?」

 レグネヴァールは溜息交じりで訊ねる。

「50ジャークです」

「50だと!? 目標値の倍以上ではないか!」

 レグネヴァールは喜びに声を上げるが、男の顔は晴れない。

「どういうことだ? 上手くいったわけではないのか?」

「実は……、この飛距離は弾丸の形状を変えることで得られたものでして、肝心の仕掛けの方は未だ……」

「そうか」

 レグネヴァールは顎に手を添えて、少し考えた後、口を開く。

「弾丸の形と言ったな」

「はい。こちらになります。弾丸を球形から錐形にしました」

「ほぉ、吹き矢と同じ原理か。確かにそれは盲点だったな」

「はい。我々も文献を漁る最中でそれに気付きまして。『昨日は明日への地図』というやつですね」

「それはテルネット大陸の(ことわざ)だったかな?」

「はい。電氣技師だった祖父が、よく言っていました」

「凋落したテルネット大陸の言葉となると、重みが違うな」

 レグネヴァールはにやりと笑うが、その皮肉めいた言い方に白衣の男は苦笑いする。レグネヴァールは再び再び鉄の筒に視線を戻す。

「機巧が不十分であるのは歯痒いが、しかし朗報でもある。まだ伸びる可能性はあるのだろう?」

「はい。機材強度には今のところ問題は見られないので、まだ上を目指せるかと」

「わかった。続けてくれ。ただし無駄遣いは許さんぞ」

「ありがとうございます!」

 白衣の男は嬉しそうに笑うと、深々と頭を下げた。

「では、次に行くぞ」

 レグネヴァールは悠々とその場を後にする。その横に、秘書の若い男──ウルティオが静かに近寄る。

「……良いのですか?」

 彼は不安そうに、小さな声でレグネヴァールに訊ねる。

「構わん。続けさせよう」

「しかし、彼は予算を大幅に超過しています」

「この兵器には私も期待しているのだ。個人で携帯できる物としては、破格の性能だ。多めに見よう」

「わかりました」

 不服そうなウルティオに対して、レグネヴァールは不敵に笑う。彼は困りこそすれ、彼女の満足げな顔を見て少しだけ笑みを浮かべた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ