3話目
主人公の容姿をここで説明させていただきます。
髪の毛は背中の辺りまで伸びていて、顔はかなり整っています。実は眼鏡っ娘です。体型はぼんきゅっぼんです。身長は158cm程。全体的に華奢です(一部例外)。
シータさんも。
シータさんは緑色の髪の毛を二つ結びにしています。顔は整っています。スレンダーな体型で、165cmはあります。どMも大喜びの御々足をお持ちです。手フェチです。
このような所で説明ごめんなさい。本文に書くのがめんどくさかったとかそんなんじゃないんだからね勘違いしないでね。
俺は再度街の外へと繰り出す事となった。目標は薬草を収集して今日明日の食い扶持を稼ぐ事だ。今日だけで一体どれくらい新しい経験を摘んだ事やら。異世界転生、女体化、etc…うん、どれも碌な経験じゃないな。
「あ、そう言えば俺のステータスを見るの忘れてた…」
ステータスは普段外では見れないらしい。ゲームの中であればメニュー画面を表示させるなり何なりすれば確認出来たが、現実の世界にそんな機能がある筈が無い。ステータスを確認する為には、シータさんが言っていたギルド内にある水晶玉を使わなければならないのだ。少し不便。
街の門の外まで来てしまった今気付いてももう後の祭りだ。ステータスは薬草を収集し終わってギルドに帰ってから確認する事にして、俺は思考を転換させた。
俺の頭の中には、ゲームの内容やダンジョンのマップ、世界地図などの情報がぎっしりと詰まっている。ゲーマーにとってそう言う情報は大切なので、ゲームを一回クリアした後ガイドブックを購入して全て頭の中に叩き込んだのだ。ことゲームに関しては俺は完全記憶能力に近い記憶力を発揮する事が出来る。よって、俺の頭の中には薬草の分布図がありありと浮かんでくるのだ。
ただ、薬草の分布図と言っても所詮は初期の段階で出てくるアイテムだ。なのでかなり広い範囲で分布しているので地道に歩いて行けば見つかる筈なのだが、ここはてっとり早く稼げる方を選ぼう。俺は朝来た方向の全く逆方向の、1つ丘を越えた先にあるとある森へと向かった。街から、体感時間で徒歩20分程の距離だろうか。丘と隣り合わせで広がっている、神秘的な森へと辿り着く。
ルコの森と呼ばれる、ゲームで一番最初に冒険する事になる、チュートリアル的なダンジョンである。ルコの森は妖精達の住まう聖なる森だ。実際に妖精がいるかはゲームに描写が無かったため分からないが、魔物は勿論いる。出てくるのはゴブリンやウルフと言った比較的安易に倒せる弱い魔物ばかりで、一番強いダンジョンボスでもホブゴブリンと呼ばれるゴブリンの長程度である。初心者がレベル上げするには打ってつけの場所である。
ただ、俺は武器を持っていないしブカブカの学生服姿だし、というか胸に重りがある状態だしでレベリングなんてする余裕は無い。今回はレベリング目的ではなく、依頼に必要な薬草目的である。
「これ、マップの通り行けるのか?」
俺は頭の中のゲームの知識と目の前に広がる森の道を比較しながら進む。しばらく進むと、途中で大きく開けた場所に出る。その奥はどうやら巨大な樹を中心に左右二つに分かれている様だ。俺は迷わず右の道へ向かい、その付け根の辺りの茂みを確認する。
「…あった!」
茂みを掻き分けると、そこに隠されていたかの様に伸びていた3本目の道を発見する。どうやらゲーム内のダンジョンのマップ構成と現実世界のダンジョンの地理にはそこまで違いはないらしい。俺はその事に安心しつつ、茂みを大きく跨いだ。
さて、目的地まで後少しだ。ここで、ダンジョンについて少し振り返ってみよう。
ダンジョンというのは、魔力や神聖な力がある一定の場所に一定以上の質と量で沈滞し、その場所にそれらの力が作用して地理や物質、生態系が変化して出来た、天然の迷宮である。中は大抵がかなり入り組んだ迷路みたいになっていて、そこには魔物がいて、罠があって、さらにアスレチックな地形が広がっている。奥に進めば進む程それらは過激になって行くが、同時に一定の距離に所々に置かれている宝箱の中身もどんどんレアになっていくので、ハイリスクハイリターンが狙える。冒険者の殆どがダンジョンに向かうのは、宝箱やレア魔物目当てで一旗揚げようというのが一番の理由だろう。
所々に置かれている宝箱については良く分かっていないらしい。ゲームの説明では、『ダンジョンの魔力が長い年月を掛けて生成したアイテム達が、宝箱の中身となっているのではないか』となっているが、それも推測だったので実際の所は不明である。そしてその謎はストーリーを進ませても何時までたっても触れられる事は無かった。所謂突っ込んでは行けない部分なのだ。
だが、ダンジョンのリターンは何も宝箱だけではない。ダンジョンには『隠し部屋』と呼ばれる、マップにも表示されない謎の部屋が必ず存在するのだ。『隠し部屋』にはレア魔物がいる、宝箱が沢山ある、レアな植物が群生している、などなど、冒険者にとって様々な利益が詰まっているのだ。
俺がここに来た理由は、その隠し部屋が目的なのだ。俺は獣道程の道をずっと歩いて行く。暫くすると、樹々が段々と無くなって行き、先ほどの開けた場所よりも更に明るい広場へとでた。
森の中に、ぽっかりと穴が空いているかの様に、そこだけ晴れたばかりの太陽の光が燦々と降り注いでいた。風に揺れ動く、広場一杯に群生しているのはよもぎに似た植物であるルリミン草、つまり薬草だった。
「大量大量♪」
俺は早速しゃがみ込んで薬草を手づかみでむしり始める。これで依頼達成は確実のものとなった。
「…そう言えば俺、入れ物持ってないじゃん。そのまま持って行って良いのかな?」
そんな事に気付いたが、今更の話である。俺はそれからしばらく、薬草をむしり続けた。
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「これ、どうぞ」
「…これはまた」
シータさんは少しだけ目を見開いた。
シータさんの目の前には薬草の山があった。勿論全て俺がルコの森で採集したものだ。シータさんは山をざっと見て、全て薬草である事を確認して口を開いた。
「ギルドを出て3時間で集まる量とは思いませんね。買って来たのですか?」
「まさか。運良く群生してた場所を見つけたんだ」
俺はおどけて見せた。この世界でルコの森の隠し部屋がどれだけ知られているかは知らないが、念のための措置である。
「そうですか。では、これから査定を致しますので少しの間お待ちください」
「ああ」
「ああ、そういえば…」
ちら、とシータさんは俺の土まみれの手を見て、そしてこう言った。
「あちらの方にお手洗いがあります。手を洗いなさい」
「あ、うん。ありがt…え?洗いなさい?」
「よろしければ、お手の汚れをお流しください」
俺はなるべく考えない様にして、大人しく言われた通りにお手洗いの方へ向かう。が、向かう途中でデカい男と目が合い、俺はぎょっと動きを止めた。
「…へへっ」
男は4人組のうちの一人らしく、無駄にがたいが良く太っていた。その4人はいかにも荒くれ者と言うにふさわしい風格をしていた。しかも男だけでない。他の3人組もこちらをターゲットしているらしかった。男は俺を品定めするようになめ回す様に見て来ている。濁って汚い目が特に胸の辺りに向いている事に気付いて、俺はすぐにお手洗いへと逃げ込んだ。
「な、何だよあいつら…」
まさか元男である俺がああいう目で見られるとは思っていなかった。胸がデカいとこう言う所でも障害があるのか。
だが、まさか最悪な行動に出るような事は無いだろう。何たってここはギルド内である。外であいつらに出くわせば状況が違うが、まさか公然の面前でそそそんな事…そもそも、俺の恥ずかしい被害妄想だったかもしれないしな。うん、きっとそうだ。
俺は蛇口から水を出して手を洗う。この世界の水道は全て魔法によって通っている。飛行機や車何かは流石に無いが、こう言った地味に便利な物は存在するのだ。違いとしてはまだ温度を調整する技術が無く、出てくるのが井戸のそのままの冷水だけだという事ぐらいだろうか。
綺麗になったのを確認して、なるべく先ほどの男の方向を気にしない様にシータさんの所へ戻る。そのとき丁度シータさんは査定の方を終わらせていた。
「5本1束で24束、残りまして3本になります。依頼の額は1束300Zなので、報酬は7200Zとなります。残りの3本はどうしますか?」
「あー…買い取ってもらえる事は出来る?」
「はい。そうなりますと1本54Z、3本で162Zになります」
「じゃあ、売ります」
「では、こちらも回収させていただきますね。こちらは報酬、そして買い取り分でございます」
シータさんがテーブルの上に置いた小さな布の袋を開けると、そこには銀貨が7枚、銅貨が3枚、石銅貨が6枚、石貨が4枚入っている。ゼニーで換算すると7362Z。確かに丁度だ。
「丁度だ」
「はい。初の依頼達成、おめでとうございます」
「…?あ、ありがとう」
シータさんはにこやかに冒険者として初の依頼達成に祝福の言葉を言って、手を差し出して来た。握手しろという事だろうか、と考えることもなく、無意識のうちにその手を握り返す。これって意味あるのか?
そのままさわさわと握手を続けるシータさん。にこやかな顔つきだが、目の奥は何かを見定めるように神剣だ。何か触り方がねちっこい感じがしたので、流石に手を離した。
「そ、それではー」
「はい。またお越しくださいね」
考えたく無い事は考えない事にする。
お金を手に入れたので、次は宿だ。もう精神的にも身体的にもくたくたなので、適当な場所で宿を取る事にする。俺はギルドを出て、ゲームの中で良く世話になった『猫ノ舌亭』へ真っすぐ向かう。
猫ノ舌亭は一階半分が食事処、もう半分と2、3階部分が宿となっている、冒険者が多く利用する宿である。猫ノ舌亭はゲーム時代に登場する、主人公がしばらくガルンの街の拠点とした宿である。ダンジョンのマップ構成が同じなら、この街の構成もきっとゲーム時代とそう変わらないだろう。俺はそう踏んでいた。
暫くして、俺はやっと見覚えのある看板を見つける事が出来た。文字は読めないが、猫のデザインの看板は見間違えようが無い。きっと猫ノ舌亭だ。
俺は木で出来たドアを開けた。
「いらっしゃ…い…」
今は大体夕方になりかけの時間だ。それゆえにまだ客足が薄いのか、数人だけがテーブルについて談笑しながら食事をとっていた。従業員らしき青年は皿を片付けていた様だ。
「あの。泊まりたいんだけど」
「は、はいっ!宿泊ですね!!」
青年はかなり元気な声で返事をした。
「あ、あの!その、何泊されますか…?」
「とりあえず1泊だけ。後で増えるかもだけど、良い?」
「ええ勿論です!で、では早速部屋に案内を…」
青年はカウンターの奥の壁にかかっていた鍵の山から一つ取り出すと、俺の前を先行して歩き出した。俺は大人しくついていく。時折ちらちらこちらの様子を伺ってくるのがかなり鬱陶しい。ええい胸を見るな。
カウンター脇の階段を昇り、2階の奥の方の部屋へと案内される。
「こちら、07室になります。鍵はお出かけの際にカウンターの従業員にお渡しください。無くされた場合はお金を頂くかもしれませんので、ご注意ください」
青年は説明したあと、ごほんと咳払いを一つして、ぺこりと頭を下げた。
「で、ではごゆっくり」
俺は去って行く背中を見送り、部屋の中へと入った。木のドアを開けると、大体6畳程の広さの部屋が広がる。ベッド、簡易テーブル、ランプ、そして壁には服を掛けるのだろうか、フックが備え付けてあった。ドアを閉めて木の杭を差し込むタイプの鍵を掛けて、俺は迷わずベッドへとダイブ、即気を失う様に眠りについたのだった。
男達は変態です(確信)。
お金の計算が壊滅的におかしかったので直させていただきました。