Phase6-2
それが2人の男性により薪に火が移り足元を揺らし始めた瞬間であったのを知り視線を戻したその時、その場のざわめきを掻き消すように大声が広場を埋め尽くした。
「イエス様!ああああああああ!!!イエス様っ!!」
ジャンヌは苦痛に顔を歪めながら絶叫した。
燃え盛る炎の燃やす音に掻き消えることなく、祈りに近い絶叫はびりびりと体ごと震わせる。
たちまち火は勢いを増して悪意をもっているかのように燃え広がっていく。
「お…おい、どうなってんだ!このままじゃジャンヌが…」
ライアンさんが信じられないものを見ているかのように、瞬きが出来なくなった瞳で、震える口元から緩慢に言葉を発した。
身悶えしながらジャンヌはさらに歯を食いしばって叫ぶ。
「ああああああああああぁぁぁぁああああああ!!!!イエスっ様ぁあああああああ!」
「う…っ」
呆然としている私達の中で信じられないといった顔をしている高橋さんの横、キムさんが耐えられないといった風に顔をそむけ体を震わす。
そのむごたらしい史実に、受け入れることを拒んだ体が咄嗟に耳を塞いだが、彼女は叫び続け、その悲痛にも近い祈りの声は塞いだ耳の鼓膜を震わせた。
ぎゅっと固く目をつぶりたいはずなのに、それだけは許さないとばかりに瞳は瞬きだけを繰り返す。
人の悪意の具現は恐ろしい勢いで彼女の体を包み込んでいく。痛ましい叫び声は、煙と猛火だけになっても納まることなく続く。早く過ぎて欲しい。そんな他人事の感情だけで目をつぶり続ける。
「やめてくれ!彼女を早く…早くっ!!」
「そうだ!どうにかなるんじゃないのか!?」
「おい!あいつはどこなんだ!?裏とやらはまだなのか!?」
最初、ののしりの罵声を上げていた群集は、死の淵から精一杯叫び続けるジャンヌの敬虔な態度に感動し、膝をついて声をたてて泣いている人の姿も見える。
膝を折り、周りの声と同様に嗚咽に近い声をあげたライアンさんの頬は涙で濡れていた。
目の前に映るのは真っ赤な炎の柱。
「あー僕は何も聞こえないー、聞きたくないー!」
「神よ…」
その凄惨な景色に目が離れない。塞いでも聞こえる悲痛な声は、開けてはいけない扉をノックし続ける。
「やだ…やだ……」
軋むような痛みが体を走り抜け、その場でしゃがみ込むと、後ろから聞いた声がする。
「みんなその言葉を言うってことは、覚悟は出来とるってことよな?」
振り返るとそこには目を細め、口元に笑みを浮かべた顔が1つ。
その顔はすぐ近くの彼女の姿を見ることなく、私と、私を含めた残りの人を見て目を細めているように見える。
その瞳に、目をいっぱいに開けた自分の姿が映りこんでいる。
その顔がゆっくりと口元に笑みを浮かべた。
周りの雑音にまぎれて聞き取れないほどの声が発せられると、目の前の赤い柱が大きな風の唸りによって掻き消される。
突如現れた突風に何が起きたのかわからず、嗚咽と動揺が広場を埋め尽くす。
その混乱の中、ただ1人事の事態を知る男性はゆっくりと広場の中央、さきほどまで炎が立ちのぼっていた場所へ歩いていく。
火が消えたにも関わらずその場所は未だ熱を帯びていて、薪と燃やしていた『モノ』はぶすぶすと白い煙を吐き出していた。
炭化した薪を踏み砕き、その『モノ』へと近づくと、その声はざわめきの中でもなぜかはっきりと拾うことが出来た。
「守るべき人間にも天にも見放されて」
人懐っこい笑みを浮かべた、モデルのような顔の持ち主は、まるで幼い子供を諭すようにこう続けた。
「でもよかったなぁ、最後に気が付いて」
黒く焼け焦げてしまったが、耳だと分かるシルエットに向けて毒を放つ。
「あんたが声を聞いたのも、祈るべきも、『悪魔』やったんよ」
黒く炭がかった少女の顔から涙が流れ、それはだんだんと赤い血のようなものに変わる。
「ずべで……」
肺から絞り出されるようにして出された声は、女性にしては低いが透き通るようなよく響く声ではなく、地の底を這うような錆びついたものだった。
まるで彼女の体を借りて、別のものが話しかけてくるような、全くの別物に感じる。
その別物がこう言った。
「ホロンデシマエバイイ」
奥底から絞り出されるようにしてこぼれだした悪意の塊は、どろりと鈍い粘度を持ってこの場所を支配し始めた。
最後まで信じていたもの全てから裏切られた。その彼女にはもはやそれ以外残っていなかったのかもしれない。
けたたましいアラームがそれぞれのパスから聞こえた。
-乱入者 トノ戦闘 ニ 移行 シマス-
いつの間にか燃えて壊された磔台の上、空中に黒い物体が浮かんでいた。
STORY:【STORY CHANGE】(IF)百年戦争 START
MODE: NIGHT MARE
WARRING NOT CLEARED
STORY NOT CLEARED
TIME:- -:- -:- -/ 20:18:45 (0/ 1)
SPEED: ATONALITY




