Phase8-7
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『第16の扉が開きます』
今までと同じように鈍い音を立てて扉が開いた先にはどこか外国のカフェを思わせる野外のカフェテラスの1角だった。
「ふぁ…ねむ…」
「いい加減頭も疲れてきたしちょっと休みたかったからちょうどいいや」
そう言って2人が唯一空いていた席にどかりと座ると、間もなくウエイターの男性がやってきた。
「いらっしゃいませ、ご注文はいかがしますか?」
金髪の男性から発せられた言葉は私でもわかる日本語だとわかってほっとする。
「あの…あなたはどこから…」
「コーヒー」
「オレ、カフェオレ、ミルク多め。ねぇNPCに話しかけてどうすんの?あんたは何も飲まないの?」
「へ?」
「そこらに座っているヤツら全部このフロアのために作られたNPCでしょ。はー…この人には適当にフレッシュジュースでも持ってきて」
「かしこまりました」
手慣れた様子で注文を受けると、ウエイターの男性は一礼してお店の奥へ戻っていった。
「たまにあんだよ、こういう『中立地帯』。階層が多いダンジョン形式のところは特にな。誰もが3日間ぶっ通しでダンジョンクリアなんて出来ねぇだろ」
「思い出のしおりだってクエスト中断に使うけど、置ける場所だって中立地帯が一番いいし。
って言ってもこのクエストだと中断も出来ないけど」
慣れた様子で寛いでいる2人に戸惑いを隠せないのは仕方ないと思ってほしい。
そもそもクエストは2回目で、こんな場所にこられるだけでも相当イレギュラーなはずだ。なんでわからない?という顔をされても困る。
ほどなくして運ばれてきた3人分の飲み物がテーブルに着くと、ウエイターが
「お客様、新聞はお読みになりますか?」
と声をかけてきた。
じゃあ、もらう」
と、斗真くんが返事をすると、一礼した後英字新聞のようなものが運ばれてきた。
「それではみなさん『15時間』お楽しみください』
「え?」
私がそういうと、それぞれのパスが電子音を鳴らした。
慌てて画面を開くとそこには
- ADD 15H -
と表示されていて、クエスト画面の下、時間経過のところにあるタイムのところが15時間追加され固定されていた。
「くそっ、トラップか!」
斗真くんが慌てて席を立とうとしたが、立った先にいつの間にか出現した扉の前
で足を止めた。
「ちっ、この部屋も結局それかよ」
後ろからやってきた正親さんがウエイターが持ってきたと思わしき小さなお金を入れる盆を持っている。
その上にはトランプをいれるカードケースのようなものが置かれていて、中身を見てみるとそこには全て9枚あるカードがあり、カードの右端には「1」「10」「100」「1000」「10000」と小さく書かれている。
「さっきの金髪が持ってきた。『お会計はそちらで順序良くお願いします』だとよ」
「これも…今までと同じ問題の1つ…?」
「そうみたいだな。…ったく…めんどくせぇことしやがる」
何かを差し込むような口はないことから、今回の回答方法はそのカードをうまく使うことなんだろう。
やっと休憩できると思っていた気持ちから一転、今度は15時間のタイムリミット付きの問題を出されて、一気に気持ちが重たくなる。
そんな中でも斗真くんは冷静だった。
小さく鼻を鳴らして元の椅子に座りなおすと、さっきまでの怒りを相手にぶつけるわけでもなく、何ともなかったかのようにウエイターを呼び寄せた。
「何かご用でしょうか?」
「追加注文したいからメニュー持ってきてくれる?」
(あ…頭いい!)
最初に飲み物を注文した時は特にメニューもみずに注文してしまったから、値段も何もわからなかった。
こうやって追加注文を頼めば、お店の人は絶対メニューを持ってこないといけなくなる。
裏に行っていた今度は女性のウエイターがメニューらしきものを持って戻ってきた。
「お待たせしました。決まりましたらお声がけください」
軽く会釈する姿をスルーして、斗真くんがメニューを開き、盛大に渋い顔をした。
「なんだこれ…」
覗きこむより前にメニューを机に開く。
「うわ…」
「まあ無理ないな」
メニューを見ると色々なメニューがかかれていてちょっとしたファミレス並の品揃えだけど、どれも値段のところに『時価』と書かれている。
「これじゃ値段は分からないってわけか。今までだんだんと難易度があがってるんだし無理ないっていえばそれまでか」
ぱたんとメニューを閉じると近くにいたウエイトレスを呼び寄せる。
「とりあえずハンバーグ。ライスも」
「注文するの!?」
「当たり前じゃん。お腹空いてるし」
「俺は…オムライス」
「ええ!?正親さんも頼むの!?」
「どうせ15時間固定で動けねーなら食っておいた方がいいぞ」
(2人とも慣れてるっていうか…神経が太いというか…)
「あんたは頼まないの?後で後悔しても…」
「ああ待って!…ええと…ええっと…‥」
メニューが多くてどれを選んでいいのかわからないでいると、その様子を頬杖をついて見ていた斗真くんのこめかみがまたうっすらと・・・
こいつにお子様ランチでも持ってきて!さっさと行って!」
「え!?や…ちょ…」
「かしこまりました」
(ああ…行っちゃう…)
さほど時間がかからず運ばれてきた料理は湯気が立っていて、おそるおそる口に運ぶとケチャップライスの甘い味が口に広がった。
(あ…おいしい…)
2人を見ると何のためらいもなく運ばれてきた料理を口にしている。
その様子を見ながらスプーンを弄んでいると、その様子に気が付いた正親さんが「毒は入ってねぇよ」とつっこんだ。
現実ではないはずなのに食べ終わった後の満腹感がある不思議な気持ちになりながら料理を口に運んでいると、すでに食べ終わった正親さんがおかわりを頼んでいたコーヒーに手を付けながら、斗真くんが頼んでいた英字新聞を見ていた。
「正親さんも読めるですか?英語」
「ぁー…まあ大まかな内容程度はな」
「オレは読んでるからわかる。大まかじゃない程度に」
「……」
話割り込むようにして口にハンバーグを頬張りながら話す斗真くんは、今までの不機嫌な状態は落ち着いたようで、どことなく年相応に見える。
「斗真くんって…年いくつ…?」
浮かんできた気持ちをぽろりと出すと、目の前でハンバーグを咀嚼していた顔が嫌そうに細められる。
ごくり、と飲み込んで一言。
「はぁ?何、自分の方が年上とかいいたいわけ?年上だからえらいとか思ってるわけ?」
不機嫌状態は落ち着いてなかったみたいだ。




