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secret GARDEN- Klotho -  作者: 蜜熊
Quest1
41/226

Phase8-6

「椿は『1月』って言ったな。ってことはそこの蒲公英は春…『3月』か『4月』の花あたりか。

知ってないと出来ないってやつか…ここの迷宮はひらめきと知識が要求されるのは下の階もそうだったけど、かなりひねくれてるな」


「お前もわかったか。ゆずる、言うから順番にしてみろ」


正親さんが花の名前を言い、私がそれを慌てて座りなおさせる。


斗真くんはそうやって出来上がったヒントを新しく出した半紙に書き出した。


「これでいいですか?」


「あぁ」


「こっちも出来た」


そう言って新しく書きだした半紙を私達に見せてくれた。



椿つばき1月(赤色)


ひいらぎ2月(白色)


蒲公英たんぽぽ3月(黄色)


海棠かいどう4月(薄ピンク色)


芍薬しゃくやく5月(赤色)


立葵たちあおい6月(紫色)


あざみ7月(薄紫色)


桔梗ききょう8月(黄色)


月下美人げっかびじん9月(白色)


金木犀きんもくせい10月(黄色)


「すごい…ちゃんと1から10月の月の花になってたんだ…」


「これでさっき言った通りに並べ替えるとこうなった」



ひいらぎ

桔梗ききょう

立葵たちあおい

芍薬しゃくやく

あざみ

月下美人げっかびじん

海棠かいどう

蒲公英たんぽぽ


「ひきたしあげかた…」


「2枚目、もしかして…“濁音”と“清音”のことか」


「せいおん…?」


「濁音はわかるでしょ。清音はその反対、濁らず言うこと」


つまり。と斗真くんが言葉を続ける。


「ひきたしあけかた…これで3つ前が濁ると『引き出し開け方』だ」


(すごい…)


「これでローマ字の意味がわかった。つまり…」


そういうと斗真くんは今まで触らなかった机の引き出し、右側の引き出しをすっと開いた。


「あれ?…なにもない」


右の引き出しは何も入っていなかったが、それを予定通りといったかのように元に戻し、次にもう一度右側の引き出しを開く。


それをまた閉じて次は真ん中の引き出し。

斗真くんがしている引き出しの開閉の意味をわからずにいると、隣で同じように事のいきさつを見ていた正親さんが「ぁー」と短い声を上げた。


何も入っていない引き出しを開閉すること8回目。右側の引き出しを開けると、そこには1枚のカードと一枚の封筒が入っている。


「え!?」


「ビンゴ」


嬉しそうにカードをとると、ぽかんと机を見ていた私に向かってカードをぴらぴらと見せた。


「LとかRとかはこの『引き出しの開け方』だったんだよ。

この人形の開け方と同じように順番に引き出しを引くことがこの開け方ってわけ。

最初にいじらなくていいって判断は当たりみたいだったね」


カードの下に入っていた封筒には1枚の便箋が入っていた。


その中には机の上に置かれてあったヒントと同じ人が書いたであろう筆跡で



ただいちどあいたくて



と書かれていた。


「これは…?」


「まあこの部屋の主って設定としてはいいオプションだろうね」


(“ただ一度会いたくて”)


『ああ 離れるのがつらい 何と残酷 ただ今一度 消えてしまう前に よく見せておくれや 貴男の顔 今一度』


きっとこの部屋に主というものがいたとすればそれは消えてしまいそうになる前にだれか好きな人に一目会おうとしたが会えなかった。

そんな悲恋の思いを残した女性・・・ということになるのだろうか。


部屋には物言わぬ人形だけがその最後を見届けて、寂しく消えていったのだろうか。


「……」


「…なんだ、またひっかかってんのか?」


封筒中にしかこめられなかった想いの文字をじっと眺めていると、便箋にかかれていた文字と私を交互に見て正親さんが大げさに溜息をついた。


「それ…」


そういうと順番に並べたままにしていた人形の1つを指した。


「こいつの花言葉だ。昔のやつは今みたいに言葉を伝える手段が少なかったからな。花に言葉を込めて相手に送ってたんだ」


「月下美人…」


そこには他の9体と同じ顔をした人形。表情なんて作れないはずなのに、その花言葉を聞くとそれがまるでこの部屋の主の気持ちを表現しているかのように見える。


ほほ笑みもしてない人形は、どこか悲しく、寂しそうだった。


(私も…この子と同じ気持ちだ…)



ただ一度会いたくて



聞いてみたいことはたくさんあるけど、それよりも何よりもただ一度会いたくて。


場違いだとわかっている場所に足を踏み入れている。


死ぬかもしれない場所とわかっていても、それでもやっぱり会いたくて。


(だからなのかな、この子の気持ちがわかる)


「早く次いくよ」


せかすような口調で出口から斗真くんが呼んでいた。


私はもう一度振り返ると、目の前の白い着物を着た人形はただそこに静かに座っていた。

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