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secret GARDEN- Klotho -  作者: 蜜熊
Quest1
35/226

Phase7-6

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--------



「ええっと……『今ログインしました』…と」


2回目にこの世界に入ったときに目の前に見えたのは、真っ白な便器だった。


(なんでトイレ!?)


そう思いながらも几帳面に便座に座り、いつの間にか私の腕に戻ってきているパスを操作している自分がいる。


よくよく考えれば大きな駅の構内でいきなり襲われるような危険な場所とかから出てこなかっただけマシなのかもしれない。


これがランダム要素なのか、駅からスタートする時はいつもトイレからなのか、調べてくれば良かった。


パスと同時にいつの間にか私の足元に戻ってきていた靴の先を眺めながら便座に座りぼんやりしていると、軽快な着信音が聞こえる。


「あ、早い」







PLAYER: 正親



TITTLE:



--------------------------------


お前何駅にいる?




Log in:6:12:PM

 -message from SG




『清宿駅です』


『じゃその駅の北口フェリー乗り場集合』


『わかりました』


短くメールを返すと、トイレの出口に出る。その出入り口には


“一方通行逆戻り禁止 よい旅を”と書かれていた。


(…親切なんだか不親切なんだかわからない…)


全くの初心者じゃなくなったとはいえ初心者に毛すら生えていない私は、せめて1回目の教訓位は生かそうと、出来るだけ人の波に逆らわないような場所を選びながら北口を探した。


北口改札を通過するとその人の流れは一気に少なくなり、歩いている人もまばらなモールには客引きをする店員の声すらほとんど聞こえない。


足を動かしながら左右に広がるショップを見ても、『武器』『防具』といったお店はなく、まばらに点在しているお店のほとんどが『雑貨』のカテゴリーのお店だったり、自動販売機のようなものだった。


(道間違ってないよね?)


確認するが『フェリー乗り場』と書かれた看板はまっすぐ先の矢印で書かれている。


場違いな気がしてきて思わず足早に駈け出すと、後ろから声がかかった。


「あの」


「ひゃ!」


思わず変な声が出た。


多分猫だったら逆毛が立った状態になっていただろう。


後ろを振り向くのは怖かったけど、おそるおそる振り返る。


振り返った先には紺色の制服に赤い紐リボンのようなものをきっちり締め、着崩すことなく着ているどこか不機嫌な表情をしている1人の男の子が立っていた。


その男の子は私のぼさぼさの髪形に一瞬目を丸くしたが、すぐに表情を戻し、私に向かって小さな紙を差し出した。


「これ、落とした」


右手に持っている小さな紙を受け取ってみると、それは匡の部屋で見つけた付箋の内の1枚だった。


(体のどこかにくっついたまま持ってきちゃったのかな)


「あ…ありがとうございます」


噛むことなく言えたお礼とともに軽く一礼すると、受け取った紙をコード化した。


その様子を見ていた男の顔がまた不機嫌なものになる。


「そんな紙切れをコード化するなんて…よっぽど大事なものなのか?」


「え…あの…」


全くわからない。といったように首を軽くかしげると、そのまま男の子は私の目の前を通り過ぎて先をすたすた歩く。

身長は私とほとんど変わらない位だと思うが、姿勢はしゃんとしていてどこか自信のようなものを感じさせる分実身長より大きく見えるかもしれない。


その後ろを気持ち小走りに歩いていると、前を歩いていた影がぴたりと止まり、ちらりと視線だけ向けられる。


「何?なんか用?」


「え…いや…私もこっちに…」


そういってフェリー乗り場の看板を指すと、まだ幼さが残りつつもどこか神経質そうな表情をしていた男の子の眉が上がった。


「あんたも?」


そう言って一瞥される。


「武器は…持ってなさそうだけど…そんなナリして『格闘タイプ』?」


「格闘タイプ?」


「……」


「……?」


「…まあいいや。オレには関係ないし」


「?」


「あんた…電車でいけるやつと違ってフェリーは特殊なチケットがないといけないのわかってるよな」


ほら。といって目の前にあるフェリー乗り場の乗り場案内の電子掲示板を指差す。


「今日出てるのはその中でもレアチケットがないといけないものしか出てない」


看板を見るとフェリー乗り場は2つしかなく、『本日の運行スケジュール』の内1つは『討伐』とある。


もう1つは『特殊』と書かれているだけで、討伐と書かれている看板にはクエストのタイトルの下に内容が記されているが、特殊の方にはクエストのタイトルだけしか書いてない。


「ちゃんと見えた?日付間違ってない?」


「あ、間違ってないからあってると思います」


そう言って私が『特殊』の下に書かれてあった『迷宮からの脱出』のクエストタイトルを指差すと、今まで以上に不機嫌な顔をされた。


「あんたが?とろそうなあんたがクリアしたの?」


「とろ…っ」


(まあ確かにどちらかというとどんくさい方かもしれないけど)


とはいえ初対面の人に言われてうれしい言葉なはずでもなく、少なからずショックを受けていると、後ろから少し低く、でも耳当りがいいテノール声が聞こえてきた。


「お前…ガキ同志で喧嘩してんじゃねーよ」


「正親さん!」「オレは喧嘩なんかしてない」


一斉に声の方へ振り返ると、相変わらずのぼさぼさなんだか天然の髪質なんだかわからない緩やかなウエーブの黒髪に黒縁のメガネ、変わったことと言えば今では絶滅しているだろうと思っていた田舎ジャージの上下ではなく、襟元がゆったりとしている7分袖のカッターシャツに、細身のパンツを合わせたスタイルだったことだった。


「…なんだよ」


「あ、思ったより普通の恰好出来るんだなって…」


ぽろりと本音がこぼれて慌てて口元を抑えたが、言ってしまった後でもう遅い。

言われた本人はがしがしと頭を掻くと手を口元に当てて何やらぶつぶつ言っている。


「あれは実習中の…汚れてもいい服だったんだから仕方ねーだろ…」


「はい?」


「ぁー…うるせぇ、なんでもねぇよ。それよかこいつ…」


― まもなくフェリーが出向いたします。 ご利用の方は乗船をお急ぎください -


「え?」


「これに遅れると次は7時間後だ。乗るぞ」


「え!?」


「どんくさいなこの人…早く乗れっていってんの」


「は、はい!ま…待って!」


会話を無理やり分断すると3人揃っての入り口に設置されていた機械にパスを通す。


- 迷宮カラノ脱出 ノパスコードヲ確認シマシタ-


- 迷宮カラノ脱出 ノパスコードヲ確認シマシタ-


- 迷宮カラノ脱出 ノパスコードヲ確認シマシタ-




― 以上3名 様 デノプレイヲ確認シマシタ -


「「「はあ!?」」」



汽笛が鳴り響き、フェリーが陸から離岸した。


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