SAVE2
Phase2
MUD:狂った・イカれた・狂人の
HUNTER:狩人・ハンター
MUD HUNTER(造語)マッドハンター:secret GARDEN内に存在するチーム名
【概要】
secret GARDEN内でも古参のチーム。
構成は不明確で上層部十数名に対し、その傘下が数万人とも言われている大型のチーム。
治安の維持のためにPKを行う『guardian』とは対照的に、主にPK(対プレイヤー殺し)を活動の主とする危険なチームのため、遭遇を極力避けたいところ。
本拠地は逢坂駅の梅打地区。
リーダーは『虎』だが、サブリーダーである『國鷹』の認知度が高く、彼こそがMD内で一番の実力者と噂が高い。
他にも双狂犬として有名な『LiLiCo』と『ネロ』も在籍している。
【補足】
PKの公式場所として有名なクエストではMHの傘下との遭遇率がかなり高いため、実力がないプレイヤーは受注を考えること。
上層部の公式PK場所での出現は今のところ目撃がほとんどない。
【関連項目】
●PK
●双狂犬
Loading2
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「斗真くん!斗真くん!」
とりあえずそう呼んでみるけど返ってくる返事はなかった。
(ここ……どこなんだろ)
一面が短い草で生い茂っている空間、見渡す限りそれは続いていて他に目ぼしいものはない。
私が母親に逢った場所は、どこまで続いているかもわからない川か海の上にかかっていた橋の上。
そこは水さえも虹色に輝いて、どこか幻想的で夢のような場所だった。
(白と……黒の世界)
ここを表現するなら白黒の世界だ。
一面に茂っている草は黒、空は真っ白。かさかさと足元を鳴らしてくれてそれで初めてそれが草だと理解出来る位で、音すらも奪われてしまったら、ここをどう表現していいのかすらよくわからない。
(こんな寂しいところに斗真くん1人で)
「ゆずる、早くしろ。“清掃”が始まってる」
「清掃?」
言葉の意味を掴めずにいると、近くの草をちぎってはうれしそうに笑っていた國鷹さんが、正親さんの言葉を繰り返していた私にわかるように空を指差す。
「色が“消され”とる。これもバグダスターのお仕事の1つやねん」
「実際に遭遇したらあいつ殺されるぞ。まだ『壊錠』の宣言が出されてないってことは、このフィールド外にいるのは間違いないが……」
「全部掃除して回るんやからいつかは遭遇するやろね」
「っ!」
おくびにも出さず口にされる“殺す”の2文字。
それは今まで私が経験していたゲームの世界の中でも体験することはあった。
圧倒的な暴力の前に、ただ言葉も発することが出来ずに蹂躙されていくこと。
そこにはただ純粋に力の強いものが弱いものの全てを掌握するだけの力関係だけが成立していて、その間にはおおよそ人間らしい感情や慈悲は存在しない。
ただ目の前の動物を殺すだけで、理由は存在していない関係性。
(早く探さないと)
恐怖はあるけど、それに勝る恐怖が打ち勝つ。
「斗真くん……っ」
- viewpoint change -
「あたし?今とりあえずライオンのフィールドにいるけど?」
少女は自分のパスから発せられる対複数との会話を楽しみながら、目の前に群がる敵を屠る(ほふる)。
それはテレビを見ながら宿題をしているにも関わらず、ペンの走りが止まらない学生と同じように、一定のリズムで手に持つ刃物をかざす。
ヒュン
「ギャッ」
「結構敵多いしここら辺から片づけるかなって思ったんだけどー……外したっぽい」
ヒュン
「ガアアッ」
「ん?なんかキャッチ入った。ちょい待ち」
ヒュンヒュン
「ギィィィイッ」
「はいはーい、『LiLiCo』でーす」
ブツリ。
「……」
切り替えた先の相手から声は聞こえず、代わりに聞こえてきたのは切断音。
そのことだけで状況を把握したのか、ぽってりとした唇に舌が這い、口角が無遠慮に釣り上げられる。
「アホタカ?“出た”みたいだよ。ドロシーのフィールドにいたヤツが殺されたっぽい」
ヒュンっと音を立てて、右手に光る見慣れた刃物がきらりと光った。
「きゃはははっ」
- 乱入者 ガ アイテム 取得権利 ヲ 手ニ入レマシタ -
- viewpoint change -
「そうなん?とりあえず出たら知らせて」
國鷹さんが誰かと話しているけど、それはここにいる人に対してじゃない。パスから女の人の少し甲高い声と、男の人の声が聞こえるのを聞く限り、どうやら別のところにいる他の2人と話をしているみたいだ。
(パスにそんな機能があるんだ……)
私のパスを見てみるとやっぱり圏外になっている。
それなのに目の前の人物は他のフィールドにいる仲間と会話を楽しんでいる。
パスのメール機能1つにしても電波拡張とか色々あるんだ。そう言われて、本当に自分のものが基本的な性能以外何も持っていない事を改めて思い知らされるけど、きっとそれを私が持ったところで分不相応になるのは目に見えている。
(そう言えば正親さんはその拡張機能も電話機能持っているみたいだけど)
このクエストが始まる時に斗真くんがそんなことを言っていたような気がする。
- 乱入者 ガ アイテム 取得権利 ヲ 手ニ入レマシタ -
「お」
(?)
初めて聞くアナウンスに國鷹さんが何かに驚いたような声をあげると同時にうれしそうに口元をゆるやかに上げる。
目はさながら不思議の国のアリスに出てくるチェシャ猫のそれに似ている。
「どうしよっかなぁ」
迷うようなそぶりと向けられる視線。それが何を意味するものなのかわからず首をかしげていると、視線がかち合った相手から向けられる好奇心に満ちた目。
思わずぞくりとする。
「おれはこのままこっちで様子を見とくわ。助けが要るんやったら助けてーってちゃんと言いや」
間接的な電話越しでもわかる不満に満ちた声が聞こえてきて思わず眉をひそめると、そんな様子を見ていた私に対し、ひらひらと手をふりながらパスのボタンを押した。途端に声が聞こえなくなる。
「大丈夫なんですか?その……お友達の……」
「ん?あぁ、ええよ。それよりこっちの方が“面白そう”やもん」
(面白い……?)
何が面白いのだろうか?少なくとも見渡す限り広がるこの何もない広大なところに、國鷹さんが喜びそうなイベントがあるような気はしないけど。
「あの……さっきの警告って」
乱入者がアイテムの取得権利を手に入れた。そんなことを言っていたような気がする。
「このフィールドに“正規”で入った奴らが全滅したってことだ」
告げる正親さんと周さんの顔は苦虫を潰したような、快く思っていないとはっきりわかる顔をしていのに、それとは対照的に國鷹さんはどこまでもうれしそうだった。
「ゆずるちゃんは同行はしたことあるやんな?同行ってのはイベント参加者の中の1名に“同行依頼を承諾して”もらってイベントに参加するやつ。せやから同行で参加したイベントについてはリプレイの場合報酬はゼロ。前回は『if』ルートで、途中(if)から全員初めてやったから報酬は出たんやけどな」
確かにそんな流れだった思い出がある。
だから野良で同行を依頼する場合は報酬として金銭や物を要求されるのは、基本報酬がゼロだからだろう。
「乱入言うんは、イベント参加者に“乱入を宣言して”イベントに参加するやつ。
宣言するんはタダやけど、同レベル帯や低いレベルだと断られるから、どうしても宣言者はレベルが高こなかったらあかんけどね。
違いは……乱入PTの出現場所を選べへんことと、大体はばらけること……あぁ、今回はちょっとアイテム使ったからばらけへんかったけどな。
後はー……ある“一定の用件”を満たしとったら報酬を受け取ることが出来る位やな」
「用件?」
「最初にイベントに参加しとったヤツら全員を『殺せ』ばええねんで」
「っ!?」
「そしたらさっきみたいな警告が流れて、イベント自体を乗っ取ったってことになるから、報酬も通常通り出るし、イベントも楽しめる。
まぁ相手に直接手を下さんでも、敵にやられてもても同じやけどね」
今のはどうやらバグダスターに遭遇したみたい。そうあっけらかんと言い放つその言葉の軽さが、全く理解出来ない。
(殺す?)
乱入とはそういうものなの?
(何の意味があるの?)
乱入しなくてはいけない事情も事情だけど、そんなシステムを作ったこの世界の意味を掴めない。
いたずらに憎悪を煽った先に何を目的としているのか。
何故それを作ろうとしたのか。
一緒に楽しみたかったら同行だけで十分じゃないのか?なのに、どうして?




