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secret GARDEN- Klotho -  作者: 蜜熊
QUEST5:Intermission
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Phase1-3

- viewpoint change -


「どうしてだよ……」


そうやってオレが何回同じことを言ってもやっぱり答えはない。


ただそうやって人がよさそうな笑みを浮かべながら、『あのとき』もそうやってオレを裏切ったんだ。


『裏切ったんじゃない。元々お前を信じていないんだからな』


「……っ」


そうだ、裏切ったんじゃない。あいつは元々オレを仲間だとも友達だとも思っていなかったんだから。


(それをバカみたいに浮かれたオレが…バカだっただけなんだ)


初めてオレを認めてくれる奴と、友達になれたと思っていた。


学校でもひねくれているこの性格と、それ以上に鼻につく知能を快く思ってくれる奴なんていなかった。


オレはあっという間に学校でもその他でも孤立して、まともに会話出来るのが両親だけになった。幼稚園のときも、小学校のときも、そして今でも、懲りずにオレは孤立を繰り返す。


日本ではほとんど認知がなかったけど、オレは“ギフテッド”というものらしい。

ごくごく普通の学校教師の両親とオレが、その言葉とオレの孤立の名前に気が付いたのは小学校1年の頃。


3人揃ってネットで調べて、日本ではそんなヤツらにうまく適している学校がほとんどないのを知ったけど、ごくごく普通のオレの両親がオレの孤立の全てを救えるわけもなく。

そんなオレを心配して親は能力向上のために学力研究所を紹介してくれたり、趣味になればと頭を使うゲームをやる集会所を教えてくれたりしたが、そこでもオレを受け入れてくれる居場所なんてなかった。


研究所の大人はオレをただの材料として、集会所の奴らは暇つぶしにきたオレを自分達と一緒にするなと、そうやってオレを自分とは違うものとして区別した。


周りの環境が息苦しくても、ごくごく普通の両親がいたおかげで、オレは最後の孤立まですることはなかった。オレよりバカで1人じゃ何も出来ないヤツらに負けて、閉じ籠ることだけはしたくなかった。


学校も行かなくなったら負けだ。

そう言って自分を認めてくれない奴らを“敵”だと認識しながら戦ってきた。


戦うために、人を許してはいけないと思い込んで、そう思いながら生きていくしか出来なかった。


そんな時『こいつ』と出会った。


きっかけはオンラインのとあるチャットルーム。


そこでは将来のゲームについて熱く語る奴らが集まっては夜な夜な自分が考えたゲームの内容と、それに必要なプログラムを披露し合う、ちょっとマニアックな場所だった。


オンライン上ではどこの国の誰ともわからない奴らが、自分の頭の中だけの世界を披露すればいいだけだから、何の気兼ねも気後れもなかった。


そこにやっとオレを受け入れてくれる場所があった。そう思えてうれしかった。


毎日のように顔を出していればその内名も知れてきて、ある日オレ個別で話しかけてくる奴が現れた。それがこいつだった。


『お前すごいな』


その無骨なメッセージが、ストレートな表現に慣れていなかったオレには新鮮で、飾らないその言葉が、何にも混じっていないような感情表現が何よりうれしかった。


会話を重ねる度、こいつがアメリカで電子工学を勉強していて、飛び級で大学院に行ってる程優秀で、将来はプログラマーになりたいと思っていることを知ると、リアルに想像出来た。


このネットの先にいる人物が紛れもなくいるんだと、興奮が抑えられなかった。ますます会話に花が咲いた。


仲良くなりたい そんな子供じみて、忘れようとしていた当たり前の感情が生まれていた。



『トーマって日本人なんだな』


『アメリカとは時差あるからな』


『いっそトーマもこっちきたら?お前なら飛び級で同じクラスとかなれそうだよ』


毎回別れの際に言われ続けた言葉。


あいつにとってはそれが単なる挨拶のつなぎみたいなものだったのかもしれないけど、あの時のオレにとってはその言葉だけが新しい“居場所”で“拠り所”だった。


『トーマ、オレ来週日本に行くから』


『マジで!?』


『折角だから会わないか?明葉原あきはばらを案内してくれよ』


『いいよ』


初めての友達と遊んだ明葉原はいつもより違って見えて、時間も忘れる位楽しかった。


あいつが楽しそうに笑うのが心からだと、信じて疑わなかった。


だからもっと一緒にいたいだなんて欲が出て、両親には相談出来ずにこっそりアメリカに行く準備をした。


受けた向こうの有名な大学の試験だって合格していたし、別にアメリカで学びたいことなんてなかったけど、あいつがいたからなんて単純な理由で憧れもしていた。

オレはあっちに行けば受け入れてもらえて、友達ともっと楽しく過ごせるんだ。


そんな願いに近い希望があったあの頃は、何もかもがキラキラして見えた。


結局はそれがばれて、高校になってから飛び級すればいいって考えていた両親は最初反対してたけど、オレの熱意に負けて最後は折れてくれた。


英語の勉強だって必死になってやった。


もう孤立しなくていい。そのときまではそう思っていた。


「そうだよな……あの時もお前は」


-----------------


--------


『トーマのおかげでプログラムが完成するよ。ありがとう』


『どういうことだ!?』


『もうお前には用はない。その頭脳は惜しいといえば惜しいけどな』


笑顔のまま残酷な言葉を吐かれて、そしてオレは『あのとき』から友達も、憧れも、何もかも失った。


アメリカに行きたいとか大学で一緒に勉強したいと言う気持ちは強い憎しみのような孤独感に変わり、初めて出来た『友達』は『絶望』に変わって、誇らしく思った『知識』は『孤独の塊』に変わった。


アメリカに行きたいと言う気持ちも、友達という言葉も、あのとき全部捨てた。


そして残ったのは結局“孤立”と“孤独”だった。


「“ダグラス”……」


その名前を呼ぶのも捨てたつもりだったのに、どうしてオレはその名前を使うんだろう。


名前を呼んでも冷たく蔑まれることもない。ただうれしそうに笑うだけ。


(オレはこいつに何を求めているって言うんだ……?)


今さらこいつに友情なんてものを求めているんだろうか。


それともオレを裏切ったことに対して謝罪を求めていたんだろうか。


(……わかんない)


ただ、ずっと探していた。それだけだった。


(こいつを?)


それとも別のものを?


「…………」



- タダ今ヨリ クエスト内 ノ 清掃 ニ 入リマス -



どこからともなく声が聞こえてきて、そこでオレの邪魔で優秀な脳みそが、感傷に浸ることなく今の状態を把握するよう命令し始める。


(清掃?)


(今何時だ?)


(あいつらはどうなった?)


(パスが全く鳴らなかったことにどうして疑問を抱かなかったんだ?)


「くそっ」


メール画面を急いで確認するがなぜか圏外になっている。


確かこの部屋に入る前までは普通にメールを送信出来ていたから、ここだけが圏外になっている。

そう考えるのが正しいが、今の『清掃』という言葉がひっかかる。


「おい、何か知っているのか?」


『……』


答えないと分かっていても一応確認してみたが、やっぱり答えはない。


(だよな……こいつきっとNPCだもんな)


とっくの前にわかっていたマジックの仕掛け。それをだまされたふりして続けていたことに、何の意味があったんだろう。


こんな事、オレが1番嫌がっている無駄なことじゃないか。


(……還ろう)


こんなところに、いても何の意味もない。


過去の記憶は、慰めになっても所詮は一時でしかない。


(あいつらのとこに……)


ふと笑い慣れていない1人の少女の顔が思い浮かぶ。

年下のオレに少女なんて言われているなんてわかったらさすがに怒りそうだ・・・いや、あいつのことだから怒るというより困惑するんだろうな。


自傷的な笑いの中に仄かに温かい気持ちが混ざっていることに自覚しながらも、振り払うように目をつぶる。


敏感になり過ぎた気持ちの今では、その感じた気持ちを言葉にして表現するのはどうしようもなくむず痒くて、居心地が悪くて仕方ない。


- 敵影 ヲ 確認 シマシタ -


(敵……?)


そう言われて辺りを確認しようとした時だった。


「!!」


その警告に反応するかのように7色の不思議な草木で染まっていた世界が、遠くの方からモノクロの世界に化学反応していく。その不吉とも取れる白と黒の景色に、思わず後ずさる。


「な!なん…だよ……これ?」


一刻も早く事態を把握しないととんでもないことになる。

何の情報もなく唐突にそう思う。


一度浮かんだ危機感は薄れることなくオレの中にある救援信号を押し続ける。


(早く還らないと)


扉らしきものを探すが、一面がモノクロの世界に変わりつつあるその風景の中には、目的のものを見つけ出すことは出来ずに、そこでここが延々と続く芝生のような場所だったことを認識した。


(把握が遅すぎだ!)


自分で自分を叱咤しながら、目の前にいるヤツ以外に注意を向けようとするが、音はおろか、モノの気配すらない。


だだっぴろい風景の中に、ぽつんと佇んでいる2つの影。それが今オレのいる場所に他ならない。


- コノ世界ニ 乱入者 ガ 現レマシタ -


「!?」


その言葉に瞬間的に目の前にいたヤツの腕をつかんだ。


「走れ!」


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