Phase1-2
- viewpoint change -
「珍しいなぁ、あんたから連絡寄越すなんて」
そう言いながらも意図していない人物の来訪を訝し(いぶかし)がることなく楽しそうに受け入れると、席に座るように促した。
しかし、声をかけられた青年はそのもてなしを受けることなく、簡潔に用件を告げる。
「バグダスターが出る。お前らは“乱入”する気だな」
「ちょっとぉ、なんでアンタが知ってんのよ」
席に座っていた少女の1人がむっとした表情をしたが、奥に座っていた青年が腕で軽く制すると、ぐっとその先に続く予定であった文句を口に留める。
逢坂駅直近の梅打地区、そこにSG内でも1,2を争うPK集団『MUD HUNTER』のチーム拠点が置かれている。
その中でも上層部しか入れないチームハウス内には現在数人のメンバーがおり、そのメンバー全員が“上級者”のカテゴリーに含まれているが、実質チーム活動はチームリーダーとサブリーダーの超個人主義から、ほとんどないというのが正しい。
“狂人”と一般的に呼ばれている所以も、その個人個人が突出した能力の持ち主達であるのに反して、チーム方針が『楽しいことだけ集まる』という曖昧すぎるスローガンに、我が強すぎる気質の持ち主ばかり集まったせいだろう。
最も、そのチームの頂点に位置する男達は、その中でも群を抜いて個性的ではあるが。
「今通常クエストしとる奴らがおるから、そのつもりのヤツもおるけど」
「虎さん!?なんでこんな奴に説明してるんだよ!」
「“ネロ”うっさい」
ネロと呼ばれた小柄だがかなり美少年ととれる男がじろりと少女を睨むが、大してダメージはないようで、少女の方はしらっとした顔をしている。
そのチームのやり取りにも、やはり興味がないといった風に青年は眠そうな瞳で瞬きを1つし、奥に座る青年と、隣で肩肘をついて楽しそうな顔をする青年を交互に見た。
「1人取り残されたヤツのために乱入したい」
「まさかゆずるちゃん?」
肩肘をついていた青年がその言葉に反応し、さらに声色に喜色を含ませる。
「ユズルって誰?」
少年が尋ねる。
「アホタカが気に入ってる子じゃなかったっけ?」
少女がアホと称した青年に視線を送るが、それに対しての反応はない。
「なあなあゆずるちゃんなん??」
「“タカ”うるさい」
奥から同じような、しかし陰と陽と揶揄されるにふさわしい声色が聞こえ、その場にいた1人を除いた全員が静かになる。
奥の人物はその1人に向けて声をかけたはずなのに、しかしその人物だけはその注意をさらりと流すとなあなあと続ける。
「違う。でもあいつも入る」
「ならおれも行くー」
さっそく招待メール送らなきゃ。そう言いながら男が嬉しそうに腕に巻きつけてあった自身のミサンガ型のパスを、迷うことなく手慣れた手つきで操作する。
「乱入の定員残数は?」
青年はその様子をちらりと見、そして興味がないように正面に座る青年に声をかける。
「別にそっちの都合でええ。あんたとあの子が入りたいんか?」
奥の人物もまた、盛り上がる男には大して関心がないといったように言葉を続けた。
「もしかしたらもう1人」
「お!!もしかしてあの“制服剣士”くん?」
がばりと向けられた顔は新しいおもちゃを見つけた子供のようで、そんな顔をされると嫌な予感しかしないのは、男をよく知るメンバーなら熟知している事であった。
「うわーでたー。アホタカのおもちゃ癖」
「じゃあ先におれらが替わってくるから後好きにしてええよ」
行ってくる。短く告げて出ていくその姿は、これから行く場所にはおおよそふさわしくない程足取り軽く見える。
「あたしも替わるー」
「俺も行きたいんだけど」
「じゃんけんで負けたじゃん」
「ちぇ」
『替わってくる』『行きたい』、それが先に通常クエストを行っている自分達のチームメイトを“身内殺し”することを意味している。
それをさらりと言ってのける目の前の“本物の狂人達”にうんざりしながらも、青年は決して顔に出すことはしなかった。
「3人でええんやな?」
唯一狂人達の中でも比較的まともなリーダー、虎が青年に声をかけたが、手元のパスで“あること”を確認し、少し逡巡した後首を振った。
「いや、4人だ」
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「残り16分だ」
具体的な数字を言われると、一層緊張感が高まる。
「いいか、出来るだけ早くあいつと合流してさっさと出るぞ」
「はいっ」
「『乱入』ですか?それとも『同行』ですか?」
「先発はもう乱入してる。あいつのことだからばらけることはないだろ」
周さんが正親さんに聞いている意味も説明している意味もよくわからないけれど、その説明を聞くのも今は惜しい。
それに今は気持ちが落ち着かなくて、きっと頭には入ってくれない。
「わかりました。合流相手は?」
「リーダーが誰になっているかわからねぇが……おそらくあいつから連絡くるだろ」
(誰なんだろう)
メールの受信音が私のパスから聞こえ、開いてみるとさっき乱入の誘いが来た相手から、今度は何かのコード付きのメールが届いている。
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PLAYER:國鷹
TITTLE:待ってるよー(*^^)v
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最終の一歩手前まで到着(^○^)<おれ早い!さすがww
かかしのフィールドはおれのとこだからパス送るねー
これならおれと一緒に遊べるおv
PASS:
Intrusion cord????secretGARDEN..org/$TheWizardofOz/%81%A4%E3%81%AE%E5%A4%A7%E7%BD%AA
Log in:6:11:PM
-message from SG
「来たな。転送しろ」
「は、はい」
2人のパスにそれぞれメールを転送すると、正親さんが何かをパスに打ち込んでいる。
「じゃあ行くぞ」
少し前もそう言って4人でバスの前に立った。けれど今は少し前にいた1人はこの場にいない。
それだけのことなのに今度はさっきやったものとは何もかもが決定的に違う。
- オズの魔法使い ノ乱入パスコードヲ確認シマシタ-
- オズの魔法使い ノ乱入パスコードヲ確認シマシタ-
- オズの魔法使い ノ乱入パスコードヲ確認シマシタ-
― 以上3名 様 ノ乱入ヲ確認シマシタ -
初めて聞くアナウンスが無駄に心を騒がせる。
(斗真くん……)
- クエスト ノ 定数 ガ 一時的ニ 8人 トナリマス -
- アイテム『撹拌防止』 ノ コード ヲ 確認 シマシタ -
錆びついた音を立てて、目の前のバスのドアが開いた。




