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secret GARDEN- Klotho -  作者: 蜜熊
QUEST4:Over The Rainbow(オズの魔法使い)
133/226

Phase10

- viewpoint change -


声が


出ない


「……っ」


虹のふもとには逢いたい人がいて


「……ぁ……」


その逢いたい人に逢えたとき、私はどうすればいいかなんて考えもしなかった。


その人はぼんやりとした視線を辺りに彷徨さまよわせていた。着ていた服の半分は溶けてしまっていたけど、その溶けてなくなっている部分からすらりと伸びている肢体は相変わらず綺麗で、思わず見惚れてしまう。


その視線が私を見ることは今も昔もなかったけど、私はずっとずっと大好きだった。


ずっとずっと、『もしも』に憧れていた。


それがもし叶うなら、私は代わりに何を差し出せばよかったんだろうか。


「ま……ママ……」


掠れてしまった声は相手に届くことはなく、相手は私以外の何かを探し続けるかのように危うい視線を彷徨わせ続けている。


「ママ」


物心ついた頃から母親が私を見ていない事なんて、幼心にわかっていた。

笑ってくれるその顔の先に匡を見ていたのもわかっていたけど、匡の傍にいた私を疎ましく思っていたこともわかっていたけど、私は必死になって母親のぬくもりを探していた。


気まぐれに向けられる優しさを、愛されていると勘違いして喜んで、向けられる別の感情を見ないふりをして、いつか母親が私を匡と同じような目で見てくれると信じて疑わなかった。


世界がひび割れて、匡がいなくなった後の世界で、母親が私じゃない“私”を見ていたとしても、やっと私を見てくれることがうれしかったはずなのに。


うれしかった世界の色彩がだんだんと剥げ落ちて、白黒の世界になっていくのにそれほど時間はかからなかった。


壊れてしまった世界でも、それでもいつか母親が私を見てくれて、いつか匡が帰ってきてくれる。そんな期待にすがらないと生きていけなかった。


「ママ……」


(なのに)


どうして母親は私を見てくれないのだろうか。それでもいいと思っていたけど、どうかこの時だけは私を見て欲しい。


2人きりのこの世界では。


2人しかいない、あの家(世界)では。


「マ……」


涙が頬を伝うけど、それでもそれを見てくれることはなかった。もう何が悲しくて泣いているのか自分でもよくわからない。


(こんな世界)


残酷だ


(こんな現実)


なくなってしまえば いいのに


「…………」


「!」


彷徨っていた視線がゆっくりと私に向けられ、危うかった瞳に光が戻っていく。


花が咲いたようなその笑顔に、胸が苦しくなる。


「マ……マ」


右手がすっと差し出される。それにすがりつくように、左手を伸ばす。


かすかに動いていた口が動いて、それが何かを言っていたけど、内容までは聞き取れなかった。


けれど、何を言っていてもかまわない。目の前の母親が、私を見て私に手を差し出してくれている。

その単純な構造が純粋にうれしくて、周さんが教えてくれた注意も何もかも投げ出して手を伸ばしながら近づく。


「ママ!ママ!」


もう少しで指先が触れようとしていた。


やっと逢いたかった“母”に逢える。


それが幻でも願望でも、なんだっていい。


もう少しで私の願いが叶う、そのぎりぎりの距離になってやっと、ずっと動かしていた口が何をしゃべっていたのかを聞き取ることが出来た。



「タスク……」



「っ!?」


手先が不自然に動くとそれっきり空中でぴたりと止まる。


(どうして……)


まるで体が凍り付いてしまったのかと思った。


伸ばしていた手も、足も、何もかもがその場で凍り付いてしまったかのように、微動だに動かすことが出来ない。

その氷の重さに耐えかねて、伸ばしていた手がだらりと、その場に力なく垂れ下がる。


(こんなときでも…ママは……)


辛うじて動く口と目でもう1度名前を呼ぼうとしたけど何も出てこない。空気を噛むような情けない動作だけを繰り返しながら、耳は匡の名前だけを聞かされる。


まるで呪いのように


苦しくて目を固くつぶり、唇を噛みしめながら目を開くと、見つめる女性の瞳の中に私以外の誰かが映っている事に気が付いた。


軋む音がしそうな緩慢な動きで後ろを振り返る。


「……ぁ」


言葉が出たのは偶然だった。


続いて聞こえたのは、どさりと何かが落ちる音。それは振り返った私の後ろで鈍く聞こえると、後ろから聞こえていた音がぱたりと止む。


後ろを向いてそれが何だったのか確かめなきゃいけないのに、体が自分のものじゃないみたいに命令を聞いてくれない。


母親の代わりに私をじっと見つめるその姿は、どこか霞かかっていて全体的に薄いシルエットであったけど、それでもそれが人だと認識することが出来る。


確かどこかの国のお祭りで使われる真っ白でところどころ鮮やかな色が入っている仮面


その仮面から全くその表情はわからなかったけど、仮面の奥の視線が私だけを見ているのだけは痛い程伝わってくる。


その腰元に怪しく光る不思議なフォルムの2つの刃物からは血の滴りはなかったけど、それでもこの人が私の後ろに倒れているだろう人に『何か』をしたのだけはわかった。


「ぁ……なたは……誰……?」


私のとぎれとぎれの質問に対して一切答えは返ってこない。

もう1度同じ質問を繰り返すけど、それが聞こえていてもやっぱり、言葉が返ってくることはなかった。


瞬間、シナプス回路のようにある言葉が頭の中を走り抜ける。


『ジョン=ドゥ』



『最速の攻略者』




「ジョン……ドゥ……?」


そう口にした瞬間、仮面の奥に隠されている顔が笑った、ような気がした。


(え……)


霞かかっていたシルエットから霧が晴れ、目の前の人物がはっきりと形を成して目の前に現れる。


ヴェネチアのカーニバルで使われているような仮面に、白無地のワイシャツと黒スーツの後ろはスワローテイル(燕尾服)。


それに真っ白な手袋と真っ赤なスカーフを身に着けた姿は執事のように見えた。


その執事姿の男性がもう1度私を見ると、そのままゆっくりと後ろへ下がる。

そして瞬きを1つした視界の先で、虹の屈折のようにぐにゃりと歪み、景色に溶けて行った。


それはまるでタネが決してわからないマジックを見ているような感覚で、今さっきまで目の前で起こっていたはずのことなのに、それをどう認識していいのかわからない。


(そうだ……ママは……)


やっと思考が戻ってきて、勢いよく振り返りたい気持ちとは裏腹にゆっくりとしか動かせないまま振り返ったけど、そこにはあるはずの姿がない。


「え……」


ぽつんと取り残された世界で、ぼんやりと光る鍵のシルエットと無機質な機械音だけが響いた。




- クエスト ヲ クリア シマシタ -






     STORY RESULT



QUEST:オズの魔法使い CLEARED



PARTY:4/4 FULL



MISSION SIDE1: Scarecrow  CLEARED


MISSION SIDE2: Tin     CLEARED


MISSION SIDE3:Weakling lion CLEARED


MISSION SIDE4:Dorothy    CLEARED


MISSION2    : CLEARED



TIME:14:57:44/ 16:55:21 (1/ 1)



GET:NOTHING


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