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secret GARDEN- Klotho -  作者: 蜜熊
QUEST4:Over The Rainbow(オズの魔法使い)
132/226

SAVE10

Phase10



虹の彼方のどこか空の高いところに


かつて子守唄で 夢見た国がある


虹の彼方のどこかその空は青く


そこではどんな夢も叶ってしまう


いつか星に願うよ目覚めると雲は晴れて


レモンドロップみたいに悩みは煙突の煙の上で溶ける


そんな場所にいることを


虹の彼方のどこかで青い鳥が飛んでる


鳥たちは虹を超えて飛んでいく


それなら僕にだって 飛べるだろう



-The Wizard of Oz 『Over The Rainbow』一部訳 -


Loading10


--------------------------


-----------------


-side A -


「……」


目の前の老人は見たこともない程穏やかな表情で見つめている。しばらくそれをじっと見ていたが、“それ”が言葉を発することがないのがわかり、心中でほっと胸を撫で下ろす。


千尋ちひろ


そう呼ばれるのなら、こうやって冷静に見ていられる自信がない。


努めて平静を装っているつもりではいるが、両手には力が入っているのがわかる。


“これ”が本物であろうと偽物であろうとも。


私にとっては大した差ではない。


「……」


これがヒントとしてあった『だいじなものはおいていかなければいけない』というものか。


(虹のふもとに逢いたい人がいる)


確かにあの噂は本当だった。ただし、私にとっては逢いたい人が『だいじなもの』とは一致しないが。


すっと相手から手が差し出されて、その手に思い出したくもない“悪夢”が蘇る。


代わりに差し出した右手が閃光を発して、目の前の人物を切り伏せたが、霧を斬るような手ごたえだったはずなのに、右手がしびれている。呼吸も心臓もいつもよりかなり早い。


「……っは……」


短く息を吐くが、動悸はなかなか落ち着いてくれない。


『千尋』


「……黙れ」


『千尋、こっちへ来なさい』


「黙れ」


幻聴を吹き飛ばすように持っていたものをもう一度ふるうが、何も誰もいない空間にわずかな音が響くだけ。


「……お爺様……」


深く息を吐く。感情をコントロールしなくてはいけない。


もっともっと、深く沈めなければいけない。心を乱されないように、もっともっと深く。


目的を達成するためにはなんだって出来る。



あなたを、探し出して目の前に引きずり出すまでは。



-side M -



「……」


(やはり……“お前”か)


目の前に現れたその顔は『あのとき』から少しも変わっていない。最後に見た場違いに微笑んで見せたその顔を忘れたことはない。


「……」


無意識に両手を胸まで持ち上げて確かめる。

そこには『あのとき』から今も血の匂いと感触がこびりついて剥がれない。


その影が近づいてくることもなかったが、離れてくれることもなかった。


そのもどかしい距離感がデジャヴとフラッシュバックのような感覚として、ぼんやりとした思考の中に、過去とも夢ともとれないものとして流れ込む。


ゆっくり目を閉じて、開く。けれど目の前に立っている人影はわずかに持ち上げた口角と優しげな表情そのままに、目の前から消えてくれない。


触れたら昔のままなのだろうか、昔のように土の匂いと、花の匂いがするのだろうか。


「……」


ゆっくりと目を閉じて。


そして意識を集中させた。


痛いと感じていた両手の痛みが、感覚を失っていくように冷たく冷えていくのを感じながら、積もって前が見えない真っ白な視界を思い出した。


どこかが軋んで音を立てた気がしたが、それには気が付かないふりをした。




― シンボル ヲ 使用 シマスカ? -




-side T -


「どうして……」


自然に口元が歪んで情けない声が出たが、そんな恰好をつけていられる状態ではなかった。


ずっと、ずっと


「ずっとお前を探してたんだぞ!」


「……」


オレの呼び掛けには答えず、ただ黙ってわずかに笑う。その姿は思い出の中、一番大事なところに閉まってあった場所にいたそいつと全く変わらなくて。


初めての友達で、初めてのオレの居場所で


「なんでオレを裏切ったんだよ!」


「……」


「何か言えよ!」


感情のままをぶつけるけど返事は返ってこなくて。背を向けることもせずただ黙ってオレを見る。


それが否定されているのか肯定されているのかわからなくて、ぐちゃぐちゃの気持ちのまま、それをぶつけることしか出来なくて。


(情けない……オレ)


ださい。いつもならそう言って皮肉の一言も言えそうなのに、こいつを目の前にしてそんなオレを演じることすら出来ないでいる。


目の前のこいつはオレ達が初めて会った時に来ていたラフなTシャツ姿で、初めて会った時に思わず「ださい」と言ったら、恥ずかしそうに眉を下げた。


その時着ていたものと全く同じ姿をして立っている。


『Hello トーマ』


なんて流暢な英語とちょっとたどたどしい日本語を混ぜながら言ってくるんじゃないか。

そんな期待すら抱いてしまう。それがどんなにバカバカしいことだと自分で否定しているくせに、それを肯定したいと思う女々しいオレもいる。


(ほんと……ダサい)


「何か言ってくれよ……」


名前を呼んだ男は、だけどただ嬉しそうに笑っているだけだった。



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