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secret GARDEN- Klotho -  作者: 蜜熊
QUEST4:Over The Rainbow(オズの魔法使い)
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Phase9

動かしていた足取りがずんっと重たくなる。

考えれば最初の1人が予定より早かっただけで、2人は予定通りやっていたのかもしれない。


そう考えられればよかったはずなのに、いつものマイナスな考え方がするりと頭の中に入り込んでしまって、なかなかそれを否定出来ない。


それが進めなきゃいけない足取りをさらに重たくさせ、それは今にも止まりそうなほど鈍くさせる。


「2人……」


ぽつりと零してしまって、それが心の中に反芻はんすうする。


(また……誰かを失うの……?)


誰も助けられなかった。今は誰もいない。


忘れようと、乗り越えようと、切り替えなければいけないと思って振り払ってきた過去のものは、何かにつけて私の弱い心に入り込もうとする。


(ダメダメ)


そんなことない、だってみんな強い。



- ジャンヌのクエスト(あのとき)の人達だって強かったハズ -



「っ!」


ぴたり、と足が止まる。


ここには誰もいなくて、私の考えをバカだと諌めて(いさめて)くれる人もいない。


自分の考えに、自分で呑み込まれてしまいそうだ。


(強くならなきゃって……そう思ったのに)


思うだけだ。時間が経っても私は強くなれない。


ずきりと胸が痛んで傘の柄を持っていた手から力が抜けたその瞬間を、相手は見逃してはくれなかった。


「あ!」


その瞬間をずっと待っていたかのような素早い動きで、傘が手元から落とされる。それと同時に右手に痛みが走る。


「いたっ……」


しびれる右手を見れば、は爪の端がひっかかったのだろうか、細い傷が数本出来ていた。


慌てて傘に駆け寄ろうとする私の動きを先回りして、鼻で弄ぶようにして傘を空に高く舞い上がらせると、それは私の手元にはすぐに戻ってこれないような少し離れた先にふわりと着地した。


(どうしよう……)


確か武器は体の一部が触れていないと手元に戻す事が出来なかったはずだ。それが駆け寄っても間に合わない位置にある以上、あの武器をしまうことも呼び寄せることも出来ない。


「グルルルル……」


訪れた好機を待っていたかのように目の前の敵が歯を不気味に鳴らし出す。かろうじて動く足を後ろに引くと、一層姿勢が低くなったのがわかった。


(くる!!)


まもなく訪れる危険を鋭く察知することは出来たけれど、それに対抗出来るものが何もない。

相手のうなり声と勢いに任せて人間の回避行動でもある目をつぶる仕草をすると、目の前に小さな風が流れた。


- アイテム 『トト』 ヲ 共通コード化 シマシタ -


「ワンワンワンワンっ!!!」


「……え……」


機械的な声をかき消すように、けたたましく聞こえる動物の鳴き声は、薄目を開けた先に映る目の前の茶色い体から発せられている。


目を開けてそれがずっと探していたものだと認識して思わずその名前を呼ぶと、私の声に反応するかのように小さく「クゥン」と鳴いてみせた。


「ワンワンワンっ!」


小さい体からは想像出来ない程大きな鳴き声で敵を威嚇し続けるその姿は、ずっと心細かった私の心に大きな火を灯してくれる。


それと同時に、目の前の敵が鳴き声を嫌がるように両足で耳を掻き始める。それでも止まることなく鳴き続けたトトの前に、それよりも大きい敵が蜘蛛の子を散らすかのように逃げていく。


「や……やった……」


安心してずるずるとその場にしゃがみ込むと、遠くに投げ出されてしまっていた傘の取っ手を器用に口に加えながら近づいてくる。


それを受け取りこわごわとその体に触れると、手にふんわりとした感触。それが久しぶりに感じる自分以外のぬくもりで、思わず気持ちが緩む。


「トト……」


頭をゆっくりと撫でると気持ちよさそうに目を細める仕草。

それが何とも言えなくてしばらく座ったままその感触を味わっていると、私より先に満足したのか膝からするりと抜ける。


その体は小さいながらもしゃんとしていて、それが私の知るある人に似ているような気がして口元の力が抜ける。


「そうだよね……私も頑張らなきゃね……」


傘をパスに戻し、のろのろと立ち上がる。その足元に嬉しそうに尻尾を振りながら近づく。


少女と犬1匹、ふりだしにやっと戻れた。


足取りも1人の時よりもずっと心強い。


1人に慣れた気でいたけど、こんなときは特に人とのつながりの強さを強く意識する。


今までは耳も目も塞いで、それで身を小さくしていれば大丈夫だった。自分の事じゃないと言い聞かせていれば痛みも感じなかった。泣き出したい気持ちも、誰かのものだと思えば寂しくなかった。


だけどこの気持ちは自分のものだと、この痛みも寂しさも、弱さも。全部自分のものだと思えばそれだけ痛みはある。


それは時として耐えきれない程辛くて苦しくて、投げ出したいと思ってしまうときもあるけど。


(あるけど)


なぜだろう、今のこの気持ちをないものとして手放したくない。そう思う。


その先にわずかでも誰かと繋がっている、そう感じさせてくれるこの気持ちを、手放したくない、そう思う。


「みんな……」


みんな同じように頑張ってくれていた。それが今はっきりとした形となって目に見えるのがうれしい。


それを、うれしいと感じることが出来てうれしい。




- アイテム 『銀色の靴』 ヲ 共通コード化 シマシタ -




「よかった……」


足元にすうっと光が集まり、いつの間にか両足にきらきらと輝く靴が履かされていた。


パスを確認すると、それぞれの無事が伝えられる文章が届いていて、その短い文章にもその人の姿が想像出来て安堵の溜息が自然にこぼれた。


「よかったねトト」


隣と歩いてくれる健気な存在に声をかけながら森を足取り軽く歩くと、目の前がだんだんと開けていく。


小高い丘になっているその頂上には、場違いな真っ白な扉が1つ。そこに鍵穴らしきものはなく、開いた扉の先はまるで虹のふもとのような色とりどりの光がこぼれている。


(虹の彼方みたい……)




虹の彼方のどこか

その空は青く

そこではどんな夢も叶ってしまう



「空……」


初めて見上げたそこには真っ青な空が広がっていた。




QUEST:オズの魔法使い PLAY NOW


PARTY:4/4 FULL


MISSION SIDE1: Scarecrow  CLEARED


MISSION SIDE2: Tin     CLEARED


MISSION SIDE3:Weakling lion CLEARED


MISSION SIDE4:Dorothy    CLEARED


MISSION2    : NOT CLEARED



TIME:12:50:08/ 16:55:21 (0/ 1)



SPEED: ALLEGRO



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