SAVE6: Tin①
Phase6
- side Weakling lion -
どさりと音がして目の前の不思議な動物が倒れる。それを見て周りの同じような動物が威嚇しているかのような、サルに近い奇声をあげる。
- 増援 ヲ 確認 シマシタ -
(またか)
確かに戦闘がメインだと言われていたしある程度の覚悟もあった。けれどそれにも限度があるだろう。
もしかしたら敵の出現ポイントが無限なのかもしれない。
(だが…)
ちらりと手元に光る刃物を見やる。前のクエストで手に入れたそれは驚くほど手にしっくりと馴染む。本来なら真剣はもっと重たいものであるはずだが、その重さを感じさせない軽さとしなやかさ、そして
「ギィッ!」
切れ味がある。
(さすが…国宝童子切安綱)
実際に博物館で本物を拝見したことはあったが、それとは少し形状が異なる気がする。
さすがに実物のそのものをトレースすることまでは出来なかったか、それとも意図的にしなかったのか。そんなことはどちらでもかまわない。
斬れ味を確認するように剣先についた液体を乱暴に振り払う。
ひゅんっと風を切るような音がして血液なのか体液なのかわからない液体が地面に全て落ちる。
これなら手入れの必要もさほどなさそうだ。そう思いながら辺りを確認する。先程の無限湧きの可能性もあながちハズレではないかと思うほど、いつの間にか敵に囲まれている。この偏りを見ると、今回のクエストはばっさりと役割によって担う内容が異なるようだ。
詳しい内容まではさすがに知り得ることが出来なかったが、自分が受け持つ内容など調べをつけなくても察しがついていた。
(斬り試しが出来るしちょうどよかったかもしれない)
彼女と行動を共にしている2人から手放しに歓迎されていないことなど最初からわかっている。
だからどの役割が回ってこようがそれに対応するだけだと思っていた。
ある程度の適性を考えて“ライオン”の配役を充てがわれたのは少し驚いたが。
やはりあの2人は頭がいい。自分達が何を得意として、私が何をするのが一番害の及ばない結果になるか以上に、何をすれば最大の効力が得られるかわかっている。
そのために私情を極力挟まないようにしているのも好ましく、受け入れやすい感情だろう。
(それにしても)
敵が多い。
単調な攻撃もここまで続くとそんな単純な感想しか持てない。
どれもそれほど手をわずらわせるようなレベルではないので苦戦はしなさそうだが、それ以上に数が多い。
視界の先に見えている城までたどり着くのにも骨が折れそうだ。
(仕方ない)
一度剣を手元に戻すと、左腕のパスを見る。
「スキルコード『飛翔』、使用。両足に付加」
目の前に翼のマークがついているカードが浮かび上がり、瞬時に燃え尽きる。
最後の1回だったが、それを惜しむよりも使ってしまった方が得策だろう。
ふわりと体が浮かび上がると、目の前にそびえ立つ建物を見据えた。
Loading6
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「ただではあげられないわね」
目の前の妖艶な女が嬉しそうに目を細めた。
この話の展開、わかってはいたがそれでもやはり労力をかけずに済むならそれに超したことはない。面倒事は勘弁してほしい。
穂積 正親はそう思い面倒くさそうに溜息を吐いた。
本来ならばブリキ以外のものをやろうかと考えていたが、自分よりも適性があるものがいるならばそれがやるべきなのが筋だろう。
特に戦闘力としては頼りないが、知識に関してはある程度の実力がわかっているヤツがいるし、自分がやった方が楽だと思っていた戦闘に関しても戦い慣れているあの男でも大丈夫だろう。
そうやって消去法で考えて、自然と一番面倒なものを自らやる羽目になってしまった話の運び方には問題があったが、それを今さら悔やんでも仕方ないことだ。
もう一度溜息を吐くと、目の前のうれしそうな女をちらりと見る。
(ちっ、何が楽しんだよ)
NPCのくせして。
「…で?何をやればいいんだよ」
押し問答をしても仕方ないことだと、それならばさっさと話の流れに乗ってしまった方がいい。そう考えて続きを促すと、女はふふっと笑った。
その雌を強調させる笑い方が妙に鼻に付いたが、見ないふりをする。
「そうだ、どうせなら退屈な私の暇つぶしに付き合ってちょうだい」
ふわりと持っていた杖を振りかざすと、場所が一瞬にしてどこかの集会所らしき場所に変わる。
そこには自分と女を含めた10人の男女がいて、その中には見た顔が何人か交じっていた。
「ゆずる!?それにお前…」
一瞬ぎくりとして、そしてすぐにそのからくりを理解した。
(…オレの情報を読んでNPCをキャラメイク(作り直し)したな)
にしては性質が悪い。
ゆずると、あのガキ、それに優男を含めた8人のNPCは、それが与えられた役割であるかのように戸惑いと驚きの表情をしている。
「正親さん…どうしよう」
その内の1人、ゆずるの役を与えられているNPCの女があいつと全く同じ声色と表情で俺を見る。
(胸糞悪ぃ)
答えるのも億劫だったので聞こえないふりをしていると、その隣で男にしては高めの声で
「相変わらずあんた冷たいね」
その聞き慣れたセリフを吐いたが、冷えた笑いすら起こらない。
「早くその暇つぶしとやらを説明しろ」
言葉を遮断するようにしながら目の前の女に声をかける。それは俺の内面の怒りを敏感に感じ取ったかのように愉悦に歪んだ。
「つれないわね、折角だからあなたと縁のあるキャラメイクにし直したのに」
「それは大層な悪趣味だな」
「そんなこと言わんと。楽しまなあかんわ。」
(こいつらもか)
「さて、僕は何をすればいいんだ?」
ダークブロンドと濃い緑色の色彩の男は、俺が知るあいつと全く同じように流暢な日本語で続きを促す。
舌打ちしたい気持ちを抑えながら、近くにあった椅子の1つに腰を下ろすと、目の前にカードが裏返しで置かれていた。
「『牢獄の悪夢』ってゲーム、知ってる?」
「ふん、『人狼ゲーム』だろ。知ってるも何も最近有名だよ」
生意気そうにガキが答えたゲームの名前には憶えがある。
ある村に、村人に化けた狼が潜んでいる。見た目は村人と同じなため、誰が狼なのかはわからない。狼は夜になると、村人達を一人ずつ攻撃して食べていく。
ひとり、またひとりと減っていく事態に村人達は協力し、話し合いをしながら狼と思われる人物を一人ずつ処刑していく。と、いうのがおおまかなゲームの流れだったはずだ。確か一度流行る前に大学のゼミ生でプレイした気がする。
「そう、日本ではそう呼ばれているわね。私やったことないの、やってみたいわ」
ぱちんと音が聞こえると、仕切る魔女のような格好をした女を除いた10人全員がいつの間にかカードを持っている。
机の上に乗っているカードをちらりと覗くと、甲冑の恰好をした人物像が書かれていた。
(『騎士』か)




