SAVE4
Phase4
「おまえ…どうして…」
あいつとは腐れ縁だった。小学校中学校とずっとバカみたいにつるんでいた。
あれは事故だった。目の前で冷たく、何も言わなくなったあの事件はただの事故だったんだ。
中学校の林間学校、あの日を忘れたことは15年経っても1度もない。
川なんかで遊ばなきゃよかった。あの日はふざけずに言われたことをすればよかったんだ。
目が覚めて、それでいつもその後悔を繰り返す。
じいちゃんよりもばあちゃんよりも先に見送った親友の最後。
線香の匂いが今でも忘れられない。
それから誰とも極力仲良くなり過ぎないように生きてきた。
「…なぁ…」
「俺を恨んでいるのか?」
あいつはあのときのまま、あのとき着ていた中学校のジャージを着ている。
これはなんだ?悪い夢なのか?それとも今までが夢だったのか?
「なぁ…何か言ってくれよ」
でもあいつは何も答えてくれない。
Loading4
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「うーん…」
そう言いながら店先に並ぶ数々の品物を眺めることすでに30分、いい加減に店員がしびれを切らして声をかけてきてもおかしくない。
ただもし声をかけれらていたら全力で逃げる自信がある。
店の奥の薄暗いカウンターにいるのは紛れもなくこの店の店員だとは思うけど、もしかしたらこの店唯一で絶対の支配者、店長なのかもしれないけど、その人相が歌舞木町の一角で背中に芸術的なキャンバスを持っていてもおかしくないような方に見えるから尚更性質が悪い。
(もしかしたら冷やかしとかに見えているのかもしれない)
決してひやかしでもないんだけど、ここまでただじっと店先に並んでいるものを見ながらも決めきれず、かといって店員に声をかけることもしないとなると怪しまれても仕方ないのかもしれない。
(相談すればよかったかな)
と、自分の行動を顧みる(かえりみる)ことすでに数回どころではない。ただ、その後すぐにそれぞれに言われるセリフまでも忠実に再現出来そうな気がして、メールも画面を開くところで止まってしまう。
『金の無駄。向いてないんだからやめとけば?』
(そうだよね…)
『当たらないように逃げとけ』
(はい…)
もしそういう逃げ足のスキルでも強化できるならぜひとも欲しいと自分でもわかっている。
(売ってないかななんてちょっと期待しちゃったけど)
当然あるわけもなく。かと言って手ぶらのまま危ないと言われているクエストに参加出来るほど根性が据わっているわけでもなく。
うろうろと落ち着きがない動物のようにお店の外を行ったり来たり、そろそろこの世界に警察というものがあったら通報されそうなレベルになるのかもしれない。
「お前」
「!」
突然かけられた声に悲鳴が出なかっただけ上出来だったかもしれない。ただ毛穴は開いて汗が大量に流れ出したのと、体が数センチ位浮かび上がってしまったのだけは許してほしい。
振り返りたくなかったけど振り返るしかなくて、おそるおそる後ろを向くと、そこには何故か私と同じようにびっくりした顔をした1人の大柄な男性と、その隣にメガネをかけた女性が笑いをこらえるように体を曲げていた。
(この2人)
どこかで見たことがある。
特に大柄の男性はインパクトがあったから顔は覚えている。残念ながら名前までは覚えていないけど。
「『信長』っ、かわいそうじゃん…怯えてるし…」
そう言いながらも言葉の端には笑いが多分に含まれていて、気を抜くと爆笑してしまいそうだと言わんばかりに、目尻にはうっすらと涙が溜まっている。
そんな長身の女性の脇腹を拳で殴ると、真っ赤になった男性、信長さんは目が合った私にしまったとした表情をした後、聞き慣れない言葉でぼそぼそとつぶやいた。
「…?」
その音量も言葉の意味もわからずに首をかしげていると、信長さんの一撃で別の意味で体を曲げていた女性が下から声を出した。
今度も言葉尻は震えていたけど、それが笑いを含んだものと痛みを我慢しているものも入っているように聞こえる。
「信長が無事でよかった…ってさ。ほら、あなた…イベント出てたじゃん?」
「あ…」
言われてこの人達と途中まで同じクエストをやろうとしていたこと、途中で國鷹さん達がいる東響駅へ移動してしまったこと、その後の途中経過まではわからないけど、國鷹さんがメールで勝てなかったといっていたことを思い出した。
(勝てなかったってことは…この人達が勝ったのかな…)
でも私がレアを手に入れたときはすごく悔しそうにしていたのに、チームの人が負けたと言っていたときはずいぶんあっけらかんとしていたような気もする。
もしかしたらあのイベントに参加することに重きを置いていて、特に景品とまでは考えていなかったのかもしれない。
それ以上何も言わなかったからそう考えることにしていたけど。
チームの応援って言っていたし、チームで活動するというのはそういう損得のない楽しむ関係のことを言うのかもしれない。そういうのはすごく憧れるけど、自分からチームに入れてほしいとかは・・言えそうにない。
「あの…おめでとうございます」
「ん?」
「えと知り合いから『guardian』の人達がイベントクリアしたと聞いたので…その」
ぺこりと頭を下げると、私の言葉の意味を理解したのか、女性がにっこりと笑う。その表情がすごく爽やかで、そんな雰囲気にほっとする。
こんな素敵な女性もこのゲームに参加していたなんて、ちょっと奇妙な感じだ。
「当たり前だ」
その隣で大きな咳払いをして、真っ赤になった顔で信長さんが短く答える。
「それで?今日はこんなところでどうかしたの?」
「あ、えと」
どこまで答えていいの変わらずに答えに詰まる。視線だけで店先に置いてあるものをうろうろと物色させていると、目の前の大岩が突然動き、視線の先にあった商品を鷲掴みにした。
「これか?」
意味が全くわからずにパチパチと瞬きだけを繰り返す。
そうこうしている間にも岩の一角のようなたくましい腕は私の目の前でカードを見せるかのように順番にちらつかせながらどれを見ていていたのか問いただす。
「どれどれ…あ、これなんかいいんじゃん?」
女性がその内の1つ、今にも握りつぶされそうなアイテムをトランプのように手元から引き抜く。
「これは…」
それを見た岩山が突然ぶるぶると震えだす。
「ま…まさにJapanische Emotion!!《大和撫子のためのものだ》!女性のたしなみはこうでなくてはいけない!」
「…へ?」
真っ赤に噴火した男性の迫力に、目が点になる以外のリアクションが全く出来なかった。




