Phase2
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「もうそこに行かない方がいいんじゃないの」
「珍しく意見が合うな」
「う…」
私だけの問題じゃないしと思い、その日の夜2人に夕方起こったことについて話をしてみたら2人とも口と表情を揃えた。
「だってそいつの住んでるところにある図書館じゃないんだろ?なのに高頻度でそこにいるのかもわかんないし、あいつの言葉をそのまま鵜呑みに出来ない」
匡についてのやりとりについては2人にはそこまで話をしていない。
いや、しないのではなく自分でも2人に伝えられる自信がなかったというのが本音になる。
ただでさえ何の質問にも答えられなかった。
これを1から自分で説明するというのはそれよりはるかに難しいことになる。
それを2人に包み隠さず話すには、まだ私には早すぎる。
「さ…探し物をしていたみたいです」
「『ソロモンの鍵』のヒントを?まあ解けたとしても特に疑問はないけど、でもなんでゆずるに声かけてくるわけ?」
あんたそいつに目をかけられる程強くもないのに。と言われてぐうの音も出ない。
斗真くんのそういうストレートな言い方、嫌いではないけれど、時々ぐさりとくるのはメンタルが弱いとかそういう次元の問題でもない気がする。
「…大方俺達が3人組のPTで、後1人足せばオズのクエストに行けるからとでも思ったんじゃねぇか?あのクエストは女が必須になるからな」
「なるほど、てっとり早いは早いか」
2人の話の流れを汲みとる限り、2人ともあまり周さんについて快く思っていないことは伝わってくる。
私達がクエストに行っている間のことは、シアターと呼ばれる特殊な場所で観覧していたようで、ある程度のことは知っているようだけど、特に彼にひどいことをされたとかのけ者にされたとかそんなことはされていないはず。
なのに2人ともどうしてだか警戒しているように見えるし、私と接触させることもよく思っていないみたい。
それが何故なのかは、なんとなく聞けない雰囲気ではあるけど。
「えと…じゃあ國鷹さん…誘い…」
「はぁっ!?なんでそうなるんだよ!!」
「おまっ!?なんであいつなんだよ!!」
(あ、綺麗にハモった)
とそんな感想は言いとして。
「え?だって2人とも周さんあまりよく思って…」
「そりゃその通りだけどさ!その代わりがなんであの関西男なんだよ!」
「…両極端過ぎだ」
(確かに周さんと國鷹さんだと性格的に真逆になるのかもしれない)
かと言って今の私には斗真くんと正親さん以外の知り合いの人がその2人しかいない。
最後の1人を野良で入れても、とは考えてはみたけれど、なんとなくどうせなら知っている人と一緒にやりたいという気持ちが強い。
その気持ちを察してくれたのか、正親さんが私の顔を見て「ぁー…」と声を漏らした。
「お前フレンドそれ位しかいねぇもんな」
(周さんとはフレンドにもなっていないけど…)
こくりとうなずくと納得したように溜息をついた。斗真くんは
「野良が嫌ってのもわかるけどさ…」
と眉間に皺を寄せながら渋い顔をしている。
きっと頭の中で周さんと國鷹さんを天秤にでもかけているのだろう。
2人がわかってくれたように、出来るなら知っている人とクエストをしたいという気持ちがあるのは正直なところだけど、それで2人が嫌な思いをするのはもっと嫌だし、私ばかり意見を言うのもと思い、せめて2人の知っている人を入れてもらえないかと提案してみたが、どういうわけだか2人とも私が國鷹さんの名前を挙げた時以上に渋い顔をして黙り込んでしまった。
(どうしよう…もしかして触れちゃダメなところだったのかな)
私が思い当たる限り、私がログインしているときはほとんどと言っていい程一緒にいてくれている2人が別の、それこそ自分達のフレンドとどこかへ行くといって誘いを断ってきたことはなかったはずだ。
知らないクエストの名前を挙げたときもそれは野良の人とだったり、ソロでだったりで、“フレンド”というくくりで誰か他のプレイヤーの名前を聞いた覚えはない。
それが1人では何も出来ない私への気遣いと優しさだということは痛い程自覚しているつもりだったし、紹介してくれなんて図々しいことは言うつもりもないけれど、まさかそこに地雷がひそんでいるとは考えもしていない事だった。
(だって2人ともとても優しいし強いし)
だから私なんかよりも大事にすべき仲間は他にいてもおかしくはない。
私と同じように頼りにしている人はいるだろう。そう思っていてもつい甘えていて、今までそれを言いそびれてしまっていた。
それを2人から言ってこない時点でそれを勘づくこと位出来たはずだったのに。
「あ、あの」
何とか話題を替えようと慌てて話題を探したけど、普段あまり人とコミュニケーションがとれていない私に話題をそらせられるような話術があるわけでもなく。
2人の様子を見ながらあわあわと青い顔をするだけしか出来ないでいると、頭をがしがしと掻いていた正親さんがちらりと眠たそうな目を向けた。
「だから、また変な事考えるなって。“チーム”か“リアフレ”でもない限り、こうやって毎回ひっついている方が珍しいだけだ。変なところ気を遣うな」
「そう…なんですか?」
「オレもこの世界で知り合っただけの“フレンド”は正直あんまり信用してないし」
とそこまで言って突然斗真くんがはっとしたように「一部だけど…れ、例外もあるけどな!」と何故か慌てて付け足してくる。
「そっか…」
(そうなんだ…)
2人が同じように言うという事は、きっとこの世界では本当に仲いい同士で“チーム”を組んで活動するか、“リアルフレンド(現実世界での知り合い)”とプレイするのが定番のスタイルなんだろう。
そういえば今までにやったことがあったオンラインゲームもそんなスタイルだった気がする。チームに入ったこともなかったし、特別仲がよかった他のプレイヤーもいなかったから忘れがちになっていたけど、きっとどのゲームもそれが定番なんだろう。
私の中では2人と一緒にいることが単に当たり前になっていただけで、チームでもなければリアフレでもない私達が、これだけ頻繁に集まるというスタイルは珍しい方なのかもしれない。
(私達って…なんなんだろう)
2人の詳しい事情は何も知らない。口ぶりから2人ともチームに入っていることはないみたいだけど、今の今までチームに入っているかどうかもわからなかった。
ただの知り合い、組んだことがあるちょっとした仲。それをこの世界では“フレンド”と呼んでいるけど、2人はどう思っているんだろう。
他のゲームとは違って命に直結するような危険なゲームに、志を同じにしたチームメイトでもなければ、リアルの姿を知っている者同士でもない。
フレンド・・と呼ぶにはあまりにも曖昧な関係。
「……」
考えて黙っているのを納得してそれ以上追及してこないと取られたのか、私の様子に何となくほっとしたのかように見える2人が、元の問題の思案に戻る。
「…」
「おい」
しばらくして斗真くんが不意に正親さんを呼ぶ。
「…ぁ?」
「あんたはどっちがいいと思ってる?野良を入れるか、ゆずるの提案通り“あいつ”を入れるか」
斗真くんは用件だけを伝え、正親さんの反応をじっと見る。
私も正親さんの方をじっと見ると、2人の目線を少し鬱陶しそうに受け止めた後、短く息を吐いた。
「後者だな。あいつの実力はお前も『観て』ただろ?」
「…決まりだな」




