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secret GARDEN- Klotho -  作者: 蜜熊
QUEST4:Over The Rainbow(オズの魔法使い)
112/226

Phase1

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「これが童子切安綱を示しているっていう文章なの?」


私の質問に斗真くんは神妙な顔をしてうなずいた。


もう1度目を通した紙には、斗真くんがわざわざ覚えてきてくれたあるサイトの6行の文章が書かれている。


「他にもいくつかあったけど、とりあえずその2つだけ」


少し前にクリアした期間限定イベント“天下五剣”から還ってきた後しばらくの記憶がないと思っていたその間、私は情けなくも寝てしまっていたようで、目を覚ました時にはすでに周さんの姿はそこにはなく、広い公園のような場所にある芝生の上で寝転んだ状態だった。


目には一面の真っ青な景色しか入ってこなくて、あの灰色の景色と甘ったるく、けれど殺伐とした空気は嘘のように消えていた。


私がそんな状態になっている間に子守唄のように聞こえていたみんなの声から、2人は何かを周さんを話していたようだったけど、内容まで詳しくは教えてくれなかった。


ただ、わかりやすくかいつまんで『ソロモンの鍵』と呼ばれているある個人サイトの存在を教えてもらったと教えてくれた。


教えてもらった次の日、さっそくそのサイトに目を通してみたけど、どれも抽象的な詩のようなものがいくつか書かれていた他には、普通攻略サイトにはあってもおかしくない詳しい攻略法や日記、交流板のようなものは、そのサイトには存在していなかった。


けれど驚くことにその不思議なサイトにアクセス数はそこそこあるようで、他のサイトに載っていた話だと、ランダムでその文章は入れ替わったり、不定期だけど意味不明な文章は増えているらしい。


その攻略サイトの攻略サイト・・・とまではさすがに検索では見つからなかったけど、このサイトを運営している“ジョン=ドゥ”という人についてはいくつか調べているうちにわかったこともあった。



1つはSG内では『最速の攻略者』と呼ばれていること。


2つめは誰もその存在を見たことがないこと。

もちろん駅や個人が持っている検索でも引っかかることはない。


3つめはそんな最速で攻略している人なのに、ランク上位者でもないこと。



「ここだけど」


そう言って斗真くんが2つの文章の内の1つ、凶報のから始まる文章の方を指差す。


「凶報は享保、定められし魔穿つものはその時代に制定された国宝の剣を指しているんじゃないかなと思う」


つまり、と続けながら矢印を引いて私達にわかりやすく説明してくれる。


凶報の時世に於いて 定められし魔穿つもの


ペンタクルズの星の1つは 幼い命すら断つ凶星


夜を闊歩する大いなる災厄は 己が主を見定めん



享保(凶報)の時代(時世に於いて)、制定された(定められし)武器(魔穿つもの)


5つの(ペンタクルズ)内の1つは(星の1つは)、童子切り(幼い命すら断つ)凶星(5本の武器が星と表現されている)


「3行目は抽象的すぎて断定できないけど、何か条件を満たせばそれよりレアなクエストが受けられるとか、もしくは別のクエスト受注のマストアイテムになるのかもしれない」


「斗真くんすごい…」


私と同じサイトを見ているハズなのに、私はその内の文章の1つもわからなかった。

確かにこの文章は、私がそのサイトを見たときも書かれていたように思ったけど、それが前回のクエストに繋がっているなんて想像もしていなかった。


素直な気持ちのままそう言ったけど、斗真くんの顔は相変わらず不機嫌そうに口元を歪めていた。


頬にはうっすら赤みがさしている。


「簡単にすごいとか言うな…全部わかんないっつの…」


「そんなことないよ。私全然わからなかったよ」


「…もういい!」


私の顔の前で手を広げてこれ以上言うなと短く言われて黙ると、その隣で黙って私達の成り行きを見ていた正親さんがコーヒーを飲みながらくつくつと笑う声が聞こえる。


それに真っ赤になった顔で睨むと、大きな咳払いをして残りの3行をとんとんとペンの先で指した。


「その次に書かれていたこれだけど、多分この前クエストの一部改正の知らせが来たクエストの事だと思う」


「へぇ…理由は?」


(クエスト改正のお知らせ…)


そう言われて最近サイト側から突然やってきたメールの事を思い出す。

中身は今まで閉鎖していたクエストに新しいNPCを登場させて物語をリニューアルして解放されたクエストがあるというもの。


リニューアルされて間もないからクリアした人の情報もまだ少ない方だったけど、噂が早くも立ち始めているというものだった。



『魔女がすごい美人で、どこかの有名人に似ている程だ』


『虹のふもとには逢いたい人が待っている』


『悲しくて、残酷』


「えっと…『オズの魔法使い』だっけ?」


「そう」


私と正親さんが自然と目を落とした紙、最初の14という数字にわかりやすくまるをつける。


「この14ってのは、原作者が最初に作ったオズの話数、その後別の作者が作った数が15から33話と他の何人かが34から40話までだから、数は当たってる」



起源は14 その源流は枝分かれ33と40の枝へと続く



「そうなんだ」


「進むもの…つまり登場人物はドロシーとかかし、ブリキ、ライオンで4、足りないものはおともの3匹がそれぞれ“知恵”と“心”、“勇気”で3つ、阻むものは西と東の魔女で2人」



進むものは4つ 足りないものは3つ 阻むものは2つ 



「ドロシー達の目的地は『エメラルド・シティ』エメラルドは5月の誕生石で、そのエメラルド・シティに帰る方法があるって話だった」



5の月に導かれし場所にて 望む景色は見えるのか


「本当だ…」


「なるほどな」


私達が納得したように声を漏らすと、今度は少し嬉しそうに口元を緩めた。

それがわかって私もうれしくなりこっそり笑うと、途端にものすごい顔をされてしまう。


「で、お前はどう思ってんだ?」


「え?私…?」


突然矛先を向けられて戸惑う。

斗真くんも正親さんの質問の意味がわからずに不思議そうな顔をしているけど、正親さんはいつもと変わらず眠そうな表情、でもその奥にまた別の感情を隠しているような・・複雑なものだった。


残念ながらそれもメガネにうまくぼやけて輪郭がうまくつかめない。


「過ぎたこと蒸し返したくねぇんだが、お前と組んだ男が手に入れた童子切、あれはレア度が高い。通常のクエストでは報酬として出てこない」


「そうなんですか?」


「何本この世界に現存してるかなんて知らないが…おそらく10本もないだろ。

それを第三者のためにわざわざクリアを助けるような預言書まがいなことしか言わねぇような、そもそも今この世界にいるかどうかもはっきりとしてねぇネット上だけの人間みたいなヤツを信じて動いているあの男と…そのネットのヤツをどう思ってると聞いてんだよ」


確かに正親さんが指摘した通り、調べてわかる範囲だけでも存在自体がすごく矛盾している、それこそ架空の人物と言ってもおかしくないと言える位の都市伝説のようなものだと思った。


眉唾物だと考えるのが普通だしそう思うけど、その人は確かに『いる』と考えている人も多い。周さんがその人の言葉を信じてあのクエストに参加しているのなら、きっと周さんも信じている内の1人になるんだろう。


私も最初調べた時なぜかわからないけど、その人は『いる』と思ってしまった内の1人だった。


(どうしてなんだろう)


根拠なんてうまく説明できないけど、このサイトを作っている人はいて、最速の攻略者がいると“思って”いる。


思っている。それだけ。


気持ちを証明出来るものなんて何もないし出来ない。

もしかしたらジョン=ドゥは偽名で、載せてあるものもただのこじつけに過ぎないかもしれないけど。


(最速の攻略者…)


スタートが出遅れている分、このゲームに隠された真実や、匡のこと、母親のことを知るためには少しでも近道で進んでいかないといけない。


そのために、道しるべが不確かなものであるとしても、足元さえ見えない道のわずかな道標と置いてあるのなら、その奥に潜んでいる者が嘘でも別人でも追及している場合じゃない。

気持ちに理由をつけるとしたらきっとこれ位しか思いつかない。


「わ、私…は」



5の月に導かれし場所にて 望む景色は見えるのか


(匡…ママ…)


「望む景色を…見てみたい」


「……」


それは正親さんが投げかけた答えにはなっていなかった。


言葉足らずで気持ちだけが先走って、追い付いていけなかった私の意志をくみ取ってくれたのか、言葉足らずなその返事に、それ以上追及する言葉は投げかけられなかった。


ただ面倒くさそうに頭を掻くと、その話の流れに了承したともとれるように片手で払う仕草だけ応えてくれた。

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