SAVE2:First Contact
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「…ぅ…」
直前に見ていた夢すらうまく思い出せない。そもそも夢をみていたかすらわからないけど、いつの間にか寝ていたようだ。
「‥夢じゃない」
まだぼんやりとする頭と手足を動かして、近くにあった携帯電話を手繰り寄せるが、昨日みたものは夢のような現実だったようだ。
(だれが何のために私のメールを?)
(いやそれよりもなんで匡のメアドで…?)
匡の携帯はもう使えない。
繋がらない携帯電話がここにあることが何よりの証拠だが、私の携帯に送られてきたメールは間違いなく匡のアドレスから送られてきていることも証明している。
(この相手は匡のアドレスも私のアドレスも知っているってことだよね)
それだけは間違いないが、思い当たる人物なんていない。
匡の時間も私の時間も“あのとき”で止まってしまってから、誰も私達と関わろうとしなかった。
共通の知り合いなんて数えるほどしかいなかったし、そもそもあれから何年も経った今、私にメールを送ってくる理由も思いつかない。
昨晩考えた結果その答えには辿り着いたが、肝心の本当の答えは出ずに終わった。きっといくら誰が考えてもこれ以上の答えは出てこないだろう。
意識が段々とはっきりしてくると、足は自然にリビングに向かっていた。
そう、今はそんなことよりも大事なことがある。
母さん…?帰ってきてるの?」
相変わらず静まり返ったリビングには、やっぱり人の姿はなく、昨日と違うことといえば、リビングに置かれている机の上に2枚の紙が置かれていたこと位だ。
ゆずる
おはよう。ママが帰ってきたらすぐにパパに連絡してくれ。
パパは仕事にいってくる。警察にも連絡してあるからもう大丈夫だ。
お金は置いていくから何か買って食べなさい
そうメモにそっけなく走り書きしてある文字の下に1万円札が無造作に置かれていた。
「パパ…」
父親が忙しいのはわかっている。母親がああなってしまってから、父親はそれをなるべく見ないように、昔以上に仕事に没頭するようになった。
今では“あのとき”までの母親と同じように、ネット越しでしか身近に感じられない存在になった。
(わかってる…)
父親はよくやってくれている。
(わかっている)
両手に自分の髪が触れているのはわかったが、しばらく顔をあげられずにいた。
胸の奥を鈍い何かが走り抜けたが、きつく目をつぶることでしかやり過ごす方法がわからなかったから。
静まり返ったリビングに時計の音はなく、人の気配もなくなっていた。




