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secret GARDEN- Klotho -  作者: 蜜熊
QUEST3: fairytale book (御伽草子:酒呑童子)
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Phase7-1

「…何の用だ」


短くメガネが答えるが、あいつも振り返りはしていない。

そんなオレ達の様子が面白いのか、言葉にどこか軽薄な感情が乗せられる。


「あんたらも気になるんやろ?“シアター”行かへん?」


男は相変わらず本心から笑っているかどうかもわからないにやついた笑みを浮かべながら、色味が入ったサングラスをつけている。

それで人避けでもしているつもりなんだろうか。


「お前は自分のとこのヤツはいいのか?そっちも大典太狙いなんだろ?」


メガネは相変わらず振り返らず、視線だけ後ろの男に向けている。

そいつはその態度を含めて嬉しそうに目を細めた。


「ええよ。信長と当たったらどうせあいつは死ぬんやし。結果がわかっとるもん見ても面白ないわ。トラも応援もうええ、て言うたし」


「なっ!?」


(こいつ、自分のチームメイトのことなのになんだよそれ)


前に会った時は今と同じように何を考えているかわからないような感じではあったけど、それでもここまで薄情なやつだとは思わなかった。


もう1人いたリーダーに気を使っていたのか、それともゆずるに気を使っていたのか、今の言葉はおそらくこいつの本音であり根本なんだろう。確信する。


「それよか断然ゆずるちゃんの方が興味あるわ。なぁ知っとる?童子切に“色欲ラスト”がおるかもしれんて」


その言葉に弾かれるようにしてメガネが色眼鏡の優男の方を向いた。


「…興味出た?」


「てめぇ…」


色欲ラスト、確かSG内のプレイヤーランキングで上位に入っているやつの通り名だ。


見たこともないがいくつかの噂と、相当危険なヤツだってことは知っている。

強さ的には1位になっていてもおかしくないのにそうならないのは、ムラがあってクエストをしたりしなかったり、挙句中級者のプレイヤーを見つけ次第ちょっかいだしてはPKするためから、というふざけた尾ひれまでついている。


こいつが言うには、そんな気違いがゆずると一緒のフィールドにいるみたいだ。


「な…なぁ!」


まんまと口車に乗せられているのはわかっていたが、そんなことを言われて黙っていられず声を上げると、目の前のメガネが頭を掻いて溜息をついた。


「ぁー…わかってるよ…」


「そんなら行こうや」


促されているからでもなく、焦る気持ちが足取りを早くさせる。


シアターは駅から併設されているモールの上階にあり、通常はコロシアムの映像や、チームのイベントのために解放さているが、不定期のイベント発生のときはそのイベントのライブ中継のために充てられ、その観覧者数はわりと多い人気のイベントにもなっている。


でかいイベントでしか見られない上位のチームの戦い方やプレイヤー、または参加が出来なかったヤツが仲間を応援するといった色んな用途があるが、今回は特に注目度が高い童子切安綱と大典太光世のライブ観戦については、すでにかなりの立ち見客が出ているようで、シアターのチケット売り場では“SOLD OUT”の文字が出ている。


そんな警告などまるで気にしないといったように、売り場の前の特設会場のでかい画面の前で立ち往生しているチケットなしのプレイヤ-の横を通り過ぎると、チケット売り場に立つ。


「いらっしゃいませ、どのイベントの観覧を希望ですか?」


「童子切で」


「誠に申し訳ござません。ただいま立ち見含めルーム全てが満席…」


「じゃこれで3人」


優男が入り口でパスを表示させると、チケット売り場の女性が申し訳なさそうな顔から一変し、恭しいともとれるお辞儀をしてみせた。


「ブラックカードでの観覧希望ですね。VIPルームへどうぞ」


(ブラックカード!?)


確かにこいつのチーム力からしたらそんなものを持っているヤツがいてもおかしくはない。

が、上位プレイヤーの中でもごく一部しか持っていないと言われているプラチナカードとブラックカード。少なくとも今まで野良で組んだことがある他のプレイヤーは持っていなかった、あらゆる優遇がされるカードの所持者と、まさかこんな場所でお目にかかる羽目になるとは思ってもいなかった。


その2つは入手条件も今のところ謎とされている。

カードの名前しか情報として挙がらないのは、プレイヤーの総人口に対して、所持者が1%にも満たないという話は聞いたことがある。


ただ、それを持っているプレイヤーは例外なく『上級者』で、プラチナカードに至ってはその中でもこのゲーム世界に影響を与えるような人物しか持っていないという都市伝説まである位だ。


いつの間にか現れた裏口から案内されて行き着いた先にはすでに何人かのプレイヤーが席に座っていて、それぞれゴーグルのようなものを被っている。


そのせいでプレイヤーの顔までは薄暗い室内では判別することは出来なかったが、部屋全体に感じる異様な雰囲気から、そのどいつもがかなり上級のプレイヤーであることはわかる。


「席に着いたら備え付けのゴーグルを着装してください。別料金で個別のビュー切り替えも可能です。支払い方法はアナウンスに従ってください」


言われるがままにゴーグルを着装すると、画面が平屋造りの家や小高い丘、どこかの川のほとり、竹林や山の山頂と、定期的に画面が切り替わる。


その画面の切り替わりでそれぞれのフィールドに何人かのプレイヤーが動いているのはわかるが、少し離れたところから映しているのか、はっきりとした人物の特定まではいかない。


切り替わったビューに映る鉄の扉の先、そこには多くの人間ではないものがいて、そこだけはアップにされるのか、映った人物は人物と言うより鬼と表現する方がふさわしい。


(こいつらが敵か…)


一番奥の方で酒樽をあおりながら豪快に口を開いている一際大きな真っ赤な熊のようなものが見えるが、おそらくあれが酒呑童子なのだろう。

その近くにはそれより体は小さいが強そうな鬼らしきものが4体、同じように酒を飲んでは陽気に笑っている姿が見える。


(あんな奴を…倒せるのか?)


確かに腕に覚えはあるようで、今までにそれなりの数のPKをしているみたいだったけど、対人を専門にしている危ないヤツかどうかまでははっきりしない。


ここに来る前に、ゆずるが組んでいる周というやつについてメガネと一緒に調べてある程度の実力はわかっている。

多少高かったけど詳細検索までかけてみたわけだし。



こいつはPKいや、正しく言い直せばPKK(プレイヤーキラー専門のプレイヤーキラー)と言った方がいいのか。

クエスト数に対してかなりの数をこなしていることから、討伐という目標に対しては、中身が危ないヤツじゃなかったらそこそこ頼もしい相手なのかもしれない。


武器付加タイプの攻撃方法で、スキルもかなり充実しているが、その他のクリア情報で突出していたものはない。


ゆずるのように見た目もスキルも貧弱な奴が、調べてみたらとんでもない経歴の持ち主だった・・というパターンではなさそうだ。


ただ奇妙な点を挙げるとしたら


(こいつ…“アラート(危険域攻撃)”まで一度も喰らってない)


多少のけがはあるようだが、PKKにしても複数とやる場合、こちらが1人であれば当然多少のけがからアラートレベルまでの攻撃を受けることはある程度覚悟しなければいけないハズだ。


オレのようにシンボルが『回復』タイプであろうと、攻撃を受けてから回復という手順になるから、その点からしても回復が必要な程度まで攻撃を喰らったことがない奴。という結論に達する。


所持しているスキルでも回避に特化したものは持っているような気配もない。


(相当回避に自信があるのか…)


個人的な値まではさすがに検索では調べられないし、まして必殺技ともとれる“シンボル”についてはその詳細を調べることはおろか、特性を把握しない限り、自分自身でもそれがどんなものか、どんな効力を発揮するか全くわからない。


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