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カイコ  作者:
9/52

ピアス

痛い表現が有ります。

あれから既にふた月、季節はすっかり夏だ。


夏と云えば夏祭り。


ここいらは水の精霊の加護の強いところで(←このへん実感わかないから、全くの棒読みで)


まぁなんかわかんないけど、夏祭りが一番盛大な祭りらしい。


その準備にグレンさんは狩りが忙しく、なんだか最近はさすがに疲れてそうな感じもする。

今度肩でも揉んでやろう。


私は夏仕様の戦闘服、水色メイド服を標準装備に日々こっそり自立、自活の為の準備運動を進めている。


動きやすいようにスカートを短くして欲しいという注文は、ニーソを着用することでなんとかクリアされている。


当面、グレンさんについていくことで生活は保障されたみたいではあるけれど、それが本当に私ののぞむことなのか、ちょっと地に足がついていない感じが落ち着かないのだ。


だから世の中を知ろうとするこの行為はグレンさんを傷つけるのかも知れないけれど、やっぱり自分で納得できるまでやりたいと思う。




ニアミス一転プロポーズ大作戦の夜、グレンさんからピアスをもらってつけた。


このピアスが既婚者の証らしい。

微妙に既婚者じゃないことはつっこまないことにした。

このピアス交換会も、色々アレだったのだけど、済んでしまえばいい思い出?


そして、正式に婚約が済んで、私についての届け出がだされた。

そしたら、保護機構から役人さんみたいなのが来て、私の代わりにピピンさんを連れて帝都なる所へ連れて行った。


私の権利と義務、ともなう細則の教育は専門員が行わなきゃいけないので、私が機構に行かなくなった代わりに、ピピンさんはその教育員資格をとりに行くらしい。

夏祭りまでに帰ってこれるかな?



私はそんな存在をウッカリすっかり忘れてた。

グレン城が余りに居心地がよくて、考えるのを避けていた。



役人さんは、私にすでに後見人にもなる婚約者がいて、機構へは行かないというのを残念がっていたが、ピアスを見せたらようやく納得した。



それで何故まだ自立、自活の準備かというと、保護機構というのは、私からみて人身売買組織だったからだ!

このグレン城をでなければいけなくなったとしても、ちょっと勘弁して欲しい、っていうか、絶対行きたくない!


最低でも3年に一度は子供を産みに貸し出!!されたり、そうじゃないときは体液を採取されたりするかわりに衣食住と安全が保証されるって、それはどうよ?


保護機構が無かった時には、蚕というのはそれは大変な人生を歩まねば成らず、現状の待遇はそれでも素晴らしいって、自画自賛かよオイ!


と、保護機構の役人さんの話には、まったく何の感慨もわかなかった。

どちらかというと、嫌悪感。


私の中で、保護機構に行くという選択肢はかき消された。

二重線でくっきりと消しておく!






OOOOOO






それで、その、ピアスなんだけども。

嵌めたら取れない系だった。


魔法マント事件、その日、なんだか皆から祝福されまくった。

皆が知っているというけとが、羞恥の極みな事件だけど、、、イザベルさんなんて、涙浮かべて、感極まるって感じで、ちょっと怖かった。


正直、その夜いきなり夜のアレやコレやがいきなり繰り広げられたらどうしようと、こればっかりは聞くのも気まづい。


正直自分でも、グレンさんと、その、そういうことをするのが嫌かというと、よく分からなかった。

グレンさんに触れられるのは全然嫌じゃないし、むしろ、グレンさんと離れるのは嫌、、だと思う。

アレから毎日、日に十回はキスをされる、だけど、ちっとも嫌じゃない。


だけど!

これが好きという気持ちなのかどうか良くわからないし、そもそもグレンさんから好きだとか云われたわけでもない。

結婚してくれ

とか

幸せにする

とか

側で守らせてくれ

とか

指輪

とか

花束

とか

子供が欲しい

とか

何も云われてないし。

グダグダと答えのでない思考のなか、取りあえずグレンさんが寝てからベッドに入ろう!と長風呂していた。


ちょっと横になりたいなぁとふらつきながら浴室からでる。


そしたら私の部屋に、風呂上りのなんだか色っぽいグレンさんがいて


やっぱり?


これはまさに貞操の危機なんじゃないかと身構えた。


無駄な知識の「お姫様抱っこでベッドイン」的なね?


でも用意されてた下着がイザ!って感じになってたわけでもなかったし、まさかいきなりそれはないよね、、と言葉無くグレンさんを見上げる。


「ユーリ。」


おいでと手招きされたので、ソファの方へいく。

顔が赤いと云われ、ユーリは風呂が好きだな、、と、炭酸水を淹れてくれた。


あれ、テーブルに何か箱が置いてある。


その箱をみて、もう一度グレンさんを見上げると、グレンさんが膝に私を抱き上げて、キスをして、ピアスをつけて欲しいと云った。


「え、えっと、私、ピアスしたことないので、穴が、、」


まさか、今、この場所で穴開けるんじゃないでしょうね?

消毒とか大丈夫なんでしょうか、、


「心配ない」


そういって、グレンさんは私を抱えたまま器用に箱を開ける。

透明な水晶みたいな石のついた1揃いのピアス。

私だけがつけるのかな?

なんとなく、グレンさんも一緒につけるんじゃないかと思っていただけに、少し残念だ。

赤信号みんなで、、、って、昔ゆったよね?


「グレンさんは?」


穴あけないの?と言外に匂わして問うと、二人とも左耳につけるのだという。

よかった、私は右を下にして寝るから正直助かる。

これだけで随分気が楽になって、グレンさんの手元を見てなかった。


プッ


「グググ、、ぐれんさんっ!」


なんというか、私の手がグレンさんの指にペン先みたいなのを刺してる!

正確には私の手ごとペンを握ったまま、グレンさんが自分で自分の指を指してる!!?


血がぷつっとでてきて、慌てる私をよそに、グレンさんはピアスの一つにその血を付けた。

もう言葉もでないそのヤバメ行為になんだか目を離せないでいる私にグレンさんがようやく言葉を発した。


「ありがとう、ユーリ。」


あ、ありがとう?

そこ、ありがとうって云うとこ?

首をねじって見上げるとグレンさんは相変わらず色気をしたたらせた目で、そっと私の頬をなでた。


「受け取ってくれ」


そういって、私の左耳を愛おしげに撫でる。


「ま、麻酔とかしないんですか、いきなりこんなのっ、入りますか、、いっ、いぃ、痛そうで、怖いんですけど、、」


さすがに嫌という言葉はなんとか飲み込み、でも、もう、早口でまくしたて、逃げようにも逃げられない恐怖に汗が滲む。


「私がお前を傷つけるわけないだろう?」


いえ、今、まさに傷つけようとしてますよねっ?!

ピアスって、穴あけないと入りませんよね?

穴って、傷つけ


ブッッ


耳に確かに衝撃があった?

けど、痛みは無い?!

そうっと手をやるともうピアスはついていて、血もでてないみたい?


まほう?きた!?


不思議さに混乱している私の指に今度はペン先が向いている!!


わわわっ!

今度はわたしの指?

でもこれも、やっぱり痛くないの?


と、みている前でペン先みたいなのが親指の腹に刺さり、イッと声がでる。

こっちは普通に痛いじゃんよっ!?



少し涙の滲んだ目で恨めしそうに見上げると、グレンさん、お、おかしいよ?顔、朱くない?

いつもお酒を飲んでたって、まったく素面のグレンさんが、さっきよりさらに、明らかに熱っぽくなってる。


そうっと、残りのピアスに私の血をつけて、ピアスを私に渡してきた。


「付けてくれ。」


きたーっ、、

展開上、こうなることはなんとなく予想できました!が、人の耳にこれを突き刺すなんて無理っ

絶対無理、無理無理無理!

もう勘弁して下さい!


「で、ででっでき、ませ、、」

「痛みはなかったろう?大丈夫だ。手伝うから手を添えて、場所を決めてくれればいい。」


「ばしょ、、」

「お前が決めてくれ、ユーリ。」


そ、それだけならと左耳の耳たぶの真ん中あたりにそっと先を押し当てる。

斜めにならない様に、まっすぐにして、こくりと頷くと、グレンさんが力を込めた。


ブッッ


そうして私は見た!

少し固まりかけた血が、石に溶けていって、透明だった石が黒っぽく変色し、金属で出来てると思ったピアスの針部分もくにゃりと変形し、耳にくっつくのを。


ま、魔法っていうか、魔物?

マモノキター


目の前で起こる色々に、もう、なんか言葉も無い。

そんな私の手にグレンさんの手が添えられた。


手が持ち上げられて、グレンさんの口元に運ばれて、口の中に、、

血がついたままの親指。


ヌルッとした。


舌が何度も親指を舐め、美味しそうに啜っている。


傷は舐めときゃ治る系だったんですか、この世界?

魔法とかで、サクッと治しちゃいましょうよ!あるんでしょ?

まほう!


尚も名残惜しげに私の指を舐めてるグレンさんから、そっと指をひいてみる。


そしたら、今度はグレンさんの指を口元に充てられる。


な、舐めろって、、?

上目に見上げた顔の真剣さに負け、舌を伸ばす。

口に広がる錆の味。

ぐ、グレンさん?

顔、ちょーコワ、、痛いの?


指が唇に強く押し当てられ、抱きかかえられてる私は逃げ場なく、指が口の中に入ってくる。


ゾクリとした、気持ち良くて。


眉間をゆるく顰めて、私を覗きこみながら、ゴツイ指が口中をかき回す。

私は何故かそれが凄く気持ちよくて、頭がぼぅっとする。

溢れた唾液を飲みこむと、なんとも言えない芳しく甘い味がして、舌が熱心に味のするところを舐め、啜ってしまう。


味がしなくなって、名残り惜しくグレンさんの指から口を離すと、彼が何か呟いたのが聞こえたが、頭に入らなかった。






OOOOOO






それで、夏祭りには結婚式をしちゃうらしい。


それで、なんでみんながそんなに浮かれているかというと、グレンさんが結婚することで、グレンさん達の部下の結婚がおおっぴらに許可されるからみたい。

普通に結婚くらいゆるしたれや!って、心の中でつっこんだのは勿論だ。


それで城下はみんながドレスやら宝飾品やらを買い求める為に景気がよくて、よそから商人も駆けつけているらしい。


何しろグレンさんが女性に微塵も気をやらないもんだから、みんな生涯独身を覚悟までしていたらしい。

それを聞いたとき、何故ピピンさんがグレンさんの女性関係をみっちり把握したかが、よくわかった。

自分の結婚がからむ問題だから、みんなが注視してたのだろう。

逆にそんなけ期待かけられたら、グレンさんも安易に動けなかったんじゃなかろうか?




カーラ&カールさんも大忙しの様で、最近ちょっと目付きがおかしくなってきた。

カールさんは、元から色々におかしいけどね。


目出度いお祝いを、是非、私の衣装と同じお店で、というあやかり注文がどーんとやってきて、それの期限がみんな夏祭りなものだから、最近出す物もだしてないとカールさんがこぼす。

嘘だろうとおもったが、スルー。

そんな下品なつっこみを嫁入り前の娘がするわけにはいかない。


そんなこんなで、一緒にくるはずだった宝飾品の商人と予定が合わず、カーラ&カールさんは先に帰り、私は式次第の訓練をイザベルさんとそのお母さんのエステルさんとから受けながら待つ。


主にセリフと動きなんだけど、履いたこともない10cmはあろうヒールと、裾をひいたドレスと高く結い上げられる頭とのバランスが、絶妙に無理な感じ。


この上ドレスに宝石がついて重くなるなんて、是非ともカーラ&カールさんの居ない間に宝石減量したい!早く来い来いこの野郎!そうして私に休憩を!


内心苛つきながら宝石商を待っている。


「遅くないですか、、」


私の呟きに、もう、ほんとに敬語はやめて下さいっと云いながら、イザベルさんが様子を見てきますと云って、休憩となった。

なんだ、こんなに簡単に休憩になるんだったら、早く呟いてみれば良かった。


エステルさんがお茶の用意に立った隙にソファにぐでーんっと倒れ込む。

もう、足が痛いんだか、腰が痛いんだか、首が痛いんだか、全部だよ全部。


案の定、柔らかい睡魔がやってきた。

すぐにイザベルさんが見つけてくれるだろうからドレスが皺になるほど眠るわけじゃないし、とか、うとうとしながら考えた。






OOOOOO






「イザベル、どういうことだ。」


私はグレン様のこの様な姿を初めて見た。


グレン様の留守中に、ピピンからの定時連絡が途絶え、その焼け焦げた剣が届けられた。

確認に妹である私と、母が呼びだされ、その隙をついてユーリ様を攫われてしまった。


ユーリ様はいらっしゃった時と同様に、忽然と消えてしまわれた。


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