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カイコ  作者:
8/52

魔法マント

翌朝、やっぱりグレンさんが巻き付いていた。


だけど、今日はいつもと左右が入れ替わっている。

昨夜私があのままグレンさんのエリアで眠むっちゃったからなんだろう。

起こしてくれてもよかったのに、っていうか、横に転がしてくれてもよかったのに。そんなことでは起きないよ私。


それはともかく本当、みかけによらず繊細な心配りのできる人だ。


「おはよう、ユーリ。」


そうして、真正面の顔を見上げる。

私は右を下にして眠るので、今日は真正面バージョンなのだ。

変に距離をとられても寂しいし、どうしようとか考えていたのは私だけだったみたいでほっとする。


「はい、おはようございます。

あの、、昨日の、、、何だったんですか?」


グレンさんの唇をみたら、なんか生々しいナニかを思い出しそうで、鼓動があがってきたので目をそらす。


一応うやむやに聞いておく。

本当は、キスのこと聞きたいけど、どっちにとられても構わない。


まぁ、戻ってきていつもの様に眠っていたんだから、外の騒ぎはたいしたことでは無かったんだろうけど。


「私も聞きたいことがある、悪いが先にいいか?」


あら、思ったよりシリアスな状況らしい。

またグレンさんが怖い顔になっている。


私はこくりと頷いた。


「口付けは、初めてだったか?」





!!!!!!なっ、なんっっ

ドン、バッシャーーーンッッ


また、盛大な水音に私のパニックは遮られた。


水音のした方をみて、どうなってるんだとグレンさんの方に視線を戻すと、グレンさんは今日は水音の方を振り返りもせずにじっと私のことを見ていた。


「あ、あのあの、、」


「どうだ?」


スルーさせてはもらえない様な強いまなざしに負けて、下を向いて、こくりと頷く。

なんちゅー恥ずかしい告白を強要するんだ!


異性に、それもファーストキスの相手に、ファーストキスでしたって、翌日に告げるのは、なんていう罰ですか?


恥ずかしすぎて、きっと首まで真っ赤なんだろう、、熱くなってきた。


そっとグレンさんの手が頭から顎におりて、顔を持ち上げようとする。

羞恥で涙まででそうな私は必死でイヤイヤと抵抗する。


胸に顔をうずめた私を強い力で引きはがし、目をあわせてきたのでせめて睨み返してやる。


「はっ、初めてですっ」


「、、、、、光栄だ。私もだ。」





嘘付けこの××野郎っっっ!!

(語彙がつたなく、適切な罵倒文句が出てこなかった為、決して卑猥な表現を意図したものでは、、)





OOOOOO






今日は、グレンさんは狩りに行かないとかで、ピピンさんと勉強をみてくれるという。


グレンさんが平然としてるのと、初めて宣言のおかげで、私も昨晩と比べると、随分気持ちは楽になった。


けっ!



対するピピンさんからは、ある種の緊張を感じる。

主人立会いの授業への緊張か?

むしろ親同席の家庭教師ぶりのプレッシャーなんだろうか?


けけっ



ファーストキスをうやむやにされた私がいちばん可愛いそうだよ、、





二人が待っていたらしい品物が届いた。


イザベルさんが持ってきた箱をあけて、何やら布を取り出した。


「ユーリ。」


おいでと手招きされ、側に立つ。


ファサリとその黒っぽい布を被せられ、「うん。ちょうどいい。」と呟きが聞こえる。


ほぼ目元しかでないフードつきマント。その他の何物でも無い気はするが、期待に応えて聞いてみる。


「これ、何ですか?」


「マントだ。」

でしょうとも。


端的な返答に視線を巡らせピピンさんを見やる。


「魔法のマントですね。」


さくっと魔法といいましたが、やっぱり魔法があるんでしょうか?しかし、魔法があるというのは日本語の表現としてどうでしょう?いやそれより、今日は何の勉強をするんでしょう?

二人もいそいそと、同じようなマントを被り、怪しい三人組の完成です。二人はフードは被ってはいませんが。



行くぞと声がかかり、グレンマントさんが私を抱えます。

まさか、黒っぽいミサとかじゃあ、ないでしょうね?


黒っぽいマントの三人組が庭にでて、池の畔へと歩いて行きますが、誰も何も思わないのでしょうか?

何事も無く、目的地に着いた様です。


私が思うほどヘンテコな行為じゃなかったみたいですね。

まぁ、庭には他に誰もいませんけれど。



何が起こるのか、グレンマントさんとピピンマントさんを見やります。


「ユーリ。」

はい?


声がかかりました。


見上げると、グレンマントさんが私のフードを外してくれます。

でもその怖い顔が、そのままぐんぐん、、


「、、、っふ、、、くっぷ。」


怖い顔のまま、さらに顔が近づいてきて、その口で口を塞がれました。

少し反応が遅かったかもしれませんが、それでもグレンさんの身体を離そうと突っ張る腕が、息苦しさに力が入りきらず熱く痺れて、開いた唇の隙間から、し、舌がはいってきて、同時に息を吸いこみ、視界の隅でピピンさんの唖然とした顔が!


バッシャーッッン


次に見えたのは巨大な水柱。

すぐに形が崩れ、盛大な水飛沫になりました。


「ふっ、、は、、ゥン、、」


カクリと私が落ちるまで、キスは続いていました。





OOOOOO






気付け薬(あの酸っぱいジュースの無糖ソーダ割)を飲み込んで、ぼんやり見上げた先はやっぱりグレンさん、なんかどっと疲労が押し寄せてくるんですが、言葉がでません。


今、口移しを初体験しました。

ついでですが、当然のように、舌が口に入ってきてました。


もぅ、、、何がなんだか。


呆然とグレンさんの顔を見返します。


「やはり間違いないと思う。」


あなたが少女趣味の変態さんだってことがですか?ええ、ええ!同感ですよ!!



無言の私にかさねて云います。


「ユーリ。君は水の精霊の加護をうけている。」


涙がにじんできました。

乙女にはそんなことより先ほどのアレのほうがショック大なんです。

なんか完全に意思の疎通が遠くへ逃げていってしまって、手がかりもつかめそうも無いです、頭の奥がぼうっとして、じれったいです。


尚も、すごくもの言いたげな私を気遣う様にそっと囁いてくれました。


「云いたいことはわかる。

次からはもっとやさしくしよう。」


次?

つぎ、ですと?!


「グレンさん、、、」


大分萎えてしまった勇気を振り絞り、声をだします。

人間決めるときはびっし!と決めないと。

これまたある意味人生の曲がり角です。


「私は、、私のいたところでは、あの様なことは!

恋人や夫婦でしかしないんですっ!!」


さぁ、謝れ!

少女のいたいけな口に、許可も無くいきなりそれもでかい突っ込んだ己を猛省したまえ!

子供が酸欠で朦朧とするまで貪った己を恥じたまえ!!






「光栄だ。

私を選んでくれて嬉しいよ、ユーリ。」


しばし無言で睨み合った後、ぽそりとグレンさんの口からでた言葉は静かで、しかし力強かった。







OOOOOO






何かをふるい落としてすっきりした様なグレンさんは用事で席を外し、また夕食でと「軽く口付け」を落としていった。


グレンさんから、ふるい落とされた何かで埋まった様な重苦しい雰囲気の中、私はやつあたりを籠めて今ピピンさんを睨んでいる。


「、、、、、、」


鼻息もあらく、睨み付けている。

納得できるまで逃がさないぞ。

主人の責任は君の責任でもあろう!


一蓮托生


旅は道連れ


朱に交われば赤くなる


坊主憎けりゃ袈裟まで憎い


何かわけのわかる解説が出来る物ならしてみるが良い。


「あの、、ユーリさま?」


さすがに沸騰しそうな少女が無言で睨め付けてくる様が不気味なのか、先ほどまでのアレに気圧されているのか、言葉を選んでいるようだ。


「お、おめでとうございます?」


疑問形?

やっぱり今の会話の流れにひっかかりを感じているよね?


「なにか、、会話の流れ、おかしかったですよね?」


「は、、はぁ、、まぁ、、」


ひとしきり強くおしまくって、何時になく歯切れの悪いピピンから彼なりの解釈を聞き出す。



概略はわかった。

ピピンさんは頭がいいな、よくまとまっているし、話に無駄が無い。


ツマリ


昨夜、私がグレンさんを押し倒して口付けた。

→これは女性からの精一杯、いっぱいいっぱいのプロポーズらしい。

→それも私なりに本を読んで勉強してプロポーズに挑んだらしい(あの本は確かにそういうシーンだったけども!)


その感情のたかぶりが、精霊の泉の水をひくこの池に反応して、どんばしゃばっちゃん。

→昨日はおかげで大騒動。曰く、精霊がお怒りかと!同じく水の精霊の加護のあるグレンさんが見に行って問題ないことを確認。


グレンさんは自分の動揺が池の水を動かしたのかも知れないとも思ったので確認することにした。

→朝の羞恥プレイはその為に私を観察。グレンさんは封具をつけていたのでシロ。


確信したグレンさんは教育係のピピンさんと一緒にその様子を見ることにした。

→みんなが被っていたマントは魔法防御マント、害意ある第三者の存在を懸念した為。

ピピンさんも念のため封具をつけていたので、確定私の仕業。


現在に至る。




ちなみに、「あの様なことは恋人や夫婦でしかしないんです。」という、私の言葉は


ーこんなこと、あなたとだからしちゃうのよ?あはんー


ってな感じの愛の囁きと理解され。


光栄ですっていうのは、愛に応える慣用句らしい。






そんなん、最初の授業でゆっとけやー!!





「、、、、大分、年齢差があると思いませんか?」


それでも努めて冷静に、解決の糸口を捜して問いかける。


「ユーリ様は、成人してらっしゃるとうかがいました。

大きな力をお持ちの方には、特に身体の成長がゆっくりでいらっしゃるのは良くあることです。」


はい。

攻める方向を変えよう。


「グレンさんって、おいくつなんです?独身だったんですか?」


地味に美形だけに、はじめてとか納得できない。


「53におなりです。結婚はおろか、お付き合いもなされていません。」


そりゃ問題あるで、そこ!胸張って答えるようなこと?

それにあなた、「お付き合い」まで把握してるんだ!?

っていうか、グレンさんは、やっぱりロリコンだったんだ?

そいでファーストキスというのも、のも!本当なんだ!?


「いえ、そういった問題はございません。

領主様は力が強く、皆様長寿でいらっしゃいます。

よって急いで子をもうける必要もなく、かなりの間、独身のままで過ごされる方もいらっしゃいます。

グレン様のお父上のギルフォード閣下もまだ独身です。」


私の胡乱顔を完全否定してみせた。

いまさくっと、へんなこと聞いたきがするけど、それはいい。


「でも、いきなりプロポーズって、、いくらなんでも、私たち並んだら親子ですよね?」


普通そうとるか?

誰がみても、血縁の無い親子だろう。

あれをニアミスじゃなくて、プロポーズと受け取るかな、普通?


「親子には見えないと思いますが?」


ピピンさんはわけが解らないという様な顔で見返す。


頭のよさそうな人に解らないという顔をされるのは、何故だか存外むかつくもんだと思いながら問いただしていくと、精霊の加護をもつ女は珍しく貴重な為、少女の外見で結婚しているとか子持ちなのは普通のことなんだそうだ、、、だそうだ、、、。


こんなに濃い色(髪と瞳)は、相当強い魔力を帯びている筈だから、狙われないわけがない程貴重らしい。


そして実際に力の発現(精霊の加護)まで証明されたと。




わけわかりたくないわ!


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