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カイコ  作者:
50/52

人形

「いい匂いです、ユーリ様」


鼻をスンスンさせてリンちゃんがいう。

お揃いの編み込みお下げも可愛いね、うきうきわくわく!


「ほんと?、私はまだわからないなぁ。リンちゃんは本当に鼻がいいね!」


オーブンに近づき、そっと匂いを嗅ぐ。


顔を近づけても、熱いのもあって、よくわからない、、


「ねぇ、リンちゃんはこんなに近くで熱くないの?」


「そんなに熱い、ですか?」


あらキョトンとしてる。

お菓子を焼くオーブンの温度は、140〜180度くらいじゃなかったっけ?

ここはお姉さんの私がしっかりしなきゃ。

このオーブンはてっぺんに五徳(ごとく)がついていて、保温調理も出来る、つまりてっぺんもそれなりに熱いのだ。


「ここはお鍋を置くところで、お湯が沸くくらい熱くなるんだよ。気をつけないと、火傷するよ。」





突然ですが、プレゼントは、私専用キッチンになりました!

「グレンにお菓子を作りたい」が何故キッチンなプレゼントになるのか不思議ではありますが、結果オーライ、嬉しいです。


厨房横にあった小部屋を改装して、窓際には小さいテーブルと椅子のセットがあって、メモをとったりも出来る、ハッキリ言うと素敵すぎるお部屋。



でも、難ありなのが水道オーブンやコンロで、これすべて魔力必要、、


火力維持とか無理すぎるよ!



ぽそっと、「手伝う」と言ったグレンの提案はピピンさんに却下され、私は魔法の先生も兼ねるリンちゃんと、今、初パウンドケーキを焼いています。



小麦とか卵、砂糖とバター、全ての材料は在庫があって簡単に揃った。

これが上手くいったら、ドライフルーツを入れたり、紅茶やお酒を入れたりしてみよう!


あ!


「リンちゃん、ほんと!いい匂いがするね」


残念なことにオーブン前扉はガラス窓じゃないから、中がどうなってるかは見えない。


ほんとはちょっと表面が焼けたところで切り込みを入れると綺麗な形になるんだよね。


あ、ってことは、開けてもいいんじゃない!


「リンちゃん、一度、開けて中を見たいの。お願いしてもいい?」


リンちゃんは、怪訝な顔だ。


「大丈夫、開けても、失敗しないケーキだから!」


「つまみ食い、、」


「ち、ちがうちがう!切り込みを入れるんだよ、そしたらフワッとするの!」


ナイフを手に動作を説明する。


しばし思案し、わかりました、少しだけですよと頷いた。


何が少しだけなのか、全くわかってない気がするけど、善は急げ、だ。


私はナイフ片手に待機して、リンちゃんがケーキを取り出す。


はしからはしまで、真一文字に表面を切り裂いて、よし、いい感じ、設定温度もちょうど良いみたい。


さっと立ち上がり、オーブンから離れ、いいよと合図してリンちゃんにケーキをしまって、オーブンの扉を閉めてもらう。


「ふぅっ、熱かったね!リンちゃんありがとう!」


私にもミトンがあれば、出来るかな、、、


ミトン?


キャー!


み、みず、水っっ!


私はリンちゃんの手をむんずと掴み、蛇口を探すが無い!


そ、そうだ、魔法、魔法、水っ


でない!


「リリリンちゃん、水っ、水、お願い!」


「はい」


突如現れた水の固まり。


「ちがうの、流水〜」


「ハイ」


「ユーリっ!」


なんとか流水にリンちゃんの両手を突っ込み、ホッと一息ついたところにグレンが突入してきた。


「どうしたっ」


「リンちゃんに火傷させちゃったの!」


ごめんなさいを繰り返しながら云う。


「リン!?」


「エ?」


後からきたピピンさんが声をかけたら、リンちゃんまだポーッとしてる。


「酷いのか!」


「何故治さない?」


「え?エト、、」


「見せてみなさい!」


「ハイ、、」


何故かバツが悪そうに差し出されたリンちゃんの手は赤くもなってない、ホッとしたけど、まだ油断しないで、すぐ治そうね。


「痛むか?」


更にピピンさんが手をとって問いかけると、俯いて、小さくいいえ、、


は!


遠慮しないで!

私が悪いんだから!!


「そうか、驚かせてすまなかったな。話には聞いていたが、、、我々は犬のことを良く知らないのだ。障りの無い範囲で教えてくれると嬉しい。」


こくこく頷いたリンちゃんは、顔をあげて、またハイと云った。


「この身体は、人形(ひとがた)といいまして、皆様でいうと服の様なもので、、つまり、、」



すっごく丈夫らしい。

よくわからないけど、、

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