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カイコ  作者:
48/52

「グレンさま。」


余程のことか、走ってくる足音に仕方なく仕事を中断する。城内はセキュリティ上転移は使えない。


急ぎ、何の警報もないことを確認した。

やはり主の極個人的な緊急事態なのだろう。


今度は何だろう。


血液、精液の次は乳でもだしかねない主を思うと溜息がでる。




「ピピン!」


廊下で出来る話と限らないため、部屋で待っていた私に、もどかしく話しかけてくる声とともに主が現れた。


「はい、グレン様」


つとめて、静かに迎え入れる。


「もうしないと誓う、助けて欲しい。」


わかりやすい。


「お姿は?」


「繭を」


「意識は?」


「、、ない」


急ぎましょう、と言いながら封具をまとめ、共に走りだす。思った以上に悪い事態だ。



途中、警備を最高レベルにするよう申し渡し、犬には森の様子を見てきて欲しいと頼んだ。


蚕は危険を感じると魔物を呼ぶこともあるという。



部屋には先に駆けつけたイザベルがいた。目があうと言葉もなく、首をふる。

やはり意識は戻っていないのか。


私は平常時なら決して踏み入ることのない、主の寝所へと進む。顎を汗が流れた。



そこには、息をするのも忘れるほどに美しい、黒く輝く、繭。


余りの美しさに惚けている横で、グレン様が突然叫びだす。

繭が、目の前で虹色に光を放ち、形が揺らぎだしていた。


まさか、この重い結界を破って、転移するのか?


出来るのか?



そして


呼ぶのか?

消えるのか?



「ユーリ!」


グレン様の声に我にかえる。


逃がさない、コレはグレン様がたった一つ望まれたモノ。


素早く封具をイザベルにも渡し、繭の頭部と胸部に押し当てる。



強い振動と、押し戻す力



グレン様の何度目かの呼びかけに、すっと抵抗が薄れ、ユーリ様に意識がもどる。

驚いたことに本人は繭を全く認識していない。出てきてくれるよう話しかけると、あっさり結界は破れた。

私達では封具越しでなければ、触れることもままならない、これが蚕の結界、繭の強さ。


飛び込んできてユーリ様に抱きついた元凶(グレン様)を、飽和寸前の封具でイザベルと挟み撃ちにして沈め、猛省を促す決意をする。

何をやらかしたにしろ、原因はグレン様意 以外ありえない。

ユーリ様を失ったグレン様を支える自信が正直もてない私達に出来ることは、犯人(グレン様)の教育以外に無いのだから。



ただ、救いなのは、ユーリ様が無意識で繭を作ったこと。

そして繭が完成していなかったこと。


そして、繭がなんであるか、まだ気づいていないことだ。




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