手紙 フェイ視点
コウム様のお世話をさせて頂くことになり、ユーリ様に話しかけて頂く機会が増えた。
ユーリ様は、私の髪や目の色が濃いことへの親近感からか、随分優しくして下さる。私は肌も濃い色で、ぱっと見た印象は全然違うと思うのだけども。
私はせめてもの償いに、ユーリ様がせがまれるまま、島の話をした。
「いいなぁ、貝汁や、焼いた貝かぁ。」
「私も懐かしくなりました。」
「フェイは、、、帰りたい?」
「はい、、いえ、、
懐かしくはありますが、帰りたくはありません。」
そう云うと、ユーリ様は悲しそうな寂しそうな顔をして、それ以上何も聞いてはこられなかった。
ユーリ様は森の妖精でいらっしゃるから、森をでた時に森の記憶の一切を封じられていると聞く。
そんな彼女を前に生まれ育った村の記憶があることが、なんだか申し訳なく感じた。
私には要らないものなのに。
「フェイ!」
本館へと続く使用人扉、あの事件以降、ここにも門番が立つ様になった。
といっても、顔と鍵を見るだけだ。
「フェイ!!」
扉の外には荷受所があり、定期的に飲む薬や家族からの手紙などプライベートな物、仕事で必要で買い付けた物品など全てを扱っている。
隣には店や食堂もあるので、荷を運んで来た者が簡単な食事をしたり、商談をしたりと様々だ。
「フェイ!」
肩を掴まれ、ビクりと顔をあげると、あの人の、友人がいた。
「会えて嬉しいよ。
あいつは今怪我をして動けないから、手紙を預かっていたんだ。」
要らない。
とっさに出てきた感情は、面倒、鬱陶しいというもので、少し驚く。
生きていて嬉しい、じゃなくて、面倒。
彼の友人は、私に手紙を押し付けて、さっさと消えてしまい。
私には重たく鬱陶しい手紙が残った。
どうしよう。
以前は輝いて見えたであろうこの手紙。
舞い上がる気持ちで受け取り、精いっぱいの返事をしたためただろうに。
今はただ厄介だ。
つき返せば、逆上されて、あの事件の協力者だとバラされるかも知れない。
優しいユーリ様はともかく、ユーリ様を愛する人達は、彼らからユーリ様を奪う手助けをした私を許さない、きっと。
捨てるには、内容を確認しないと、危なすぎる。
読むには、もう何の感情もわかない男からの手紙、ただ気持ち悪いような、胸にわだかまるモノがある。
話、いや、ただ挨拶をする相手が欲しくて、失いたくなくて、何をするつもりかも聞かず通した。
何をする?
違う、貴族の住居への侵入は死罪。つまり、死罪に値する犯罪を犯す覚悟で彼は扉を通った。
私に何も説明せず、同意も求めず。
上手くいけば、ユーリ様を連れて、国へ凱旋?
失敗すれば、死罪か逃亡生活。
そのどちらにも、私は含まれていない。
なんと浅はかだったんだろう。
ひとりになる場所を探して庭にでた。
そして、手紙を読んだ。
不気味な内容だった。
「一緒に逃げよう?」
逃げる?
訳がわからない。
彼は動けない重症ではないのか?
そもそも、これは彼の字なのか?
行けば口封じに殺されるのか?
また何処かへ売られるのか?
行かなくても、危険かも知れない。
もう、考えたくない。
「それじゃあ、また同じだぜ?」
確かにそうだ。
でも、頭がぐちゃぐちゃで。
「お前は、どうしたいんだ?」
どう?
「帰りたいのか?」
ううん。
「出て行きたいのか?」
ううん。
「その男に会いたいか?」
ううん。
「では、罪を償うか?」
!
「踏みとどまるか、逃げ続けるかは、お前次第だ。お前は既に罪を知っている。」
罪という言葉にびくりと顔をあげる。
「コウム、さま」
「お前の責任は、お前がとるんだ。」
「はい」
コウムさまはゆっくり頷く。
「首をだせ。」
「はい」
御使いに断罪して貰ったら、みんなのところへ行けるんだろうか?




