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カイコ  作者:
30/52

手紙 フェイ視点

コウム様のお世話をさせて頂くことになり、ユーリ様に話しかけて頂く機会が増えた。


ユーリ様は、私の髪や目の色が濃いことへの親近感からか、随分優しくして下さる。私は肌も濃い色で、ぱっと見た印象は全然違うと思うのだけども。


私はせめてもの償いに、ユーリ様がせがまれるまま、島の話をした。


「いいなぁ、貝汁や、焼いた貝かぁ。」


「私も懐かしくなりました。」


「フェイは、、、帰りたい?」


「はい、、いえ、、

懐かしくはありますが、帰りたくはありません。」


そう云うと、ユーリ様は悲しそうな寂しそうな顔をして、それ以上何も聞いてはこられなかった。

ユーリ様は森の妖精でいらっしゃるから、森をでた時に森の記憶の一切を封じられていると聞く。


そんな彼女を前に生まれ育った村の記憶があることが、なんだか申し訳なく感じた。

私には要らないものなのに。


「フェイ!」


本館へと続く使用人扉、あの事件以降、ここにも門番が立つ様になった。

といっても、顔と鍵を見るだけだ。


「フェイ!!」


扉の外には荷受所があり、定期的に飲む薬や家族からの手紙などプライベートな物、仕事で必要で買い付けた物品など全てを扱っている。

隣には店や食堂もあるので、荷を運んで来た者が簡単な食事をしたり、商談をしたりと様々だ。


「フェイ!」


肩を掴まれ、ビクりと顔をあげると、あの人の、友人がいた。


「会えて嬉しいよ。

あいつは今怪我をして動けないから、手紙を預かっていたんだ。」


要らない。


とっさに出てきた感情は、面倒、鬱陶しいというもので、少し驚く。


生きていて嬉しい、じゃなくて、面倒。


彼の友人は、私に手紙を押し付けて、さっさと消えてしまい。


私には重たく鬱陶しい手紙が残った。






どうしよう。



以前は輝いて見えたであろうこの手紙。

舞い上がる気持ちで受け取り、精いっぱいの返事をしたためただろうに。


今はただ厄介だ。

つき返せば、逆上されて、あの事件の協力者だとバラされるかも知れない。

優しいユーリ様はともかく、ユーリ様を愛する人達は、彼らからユーリ様を奪う手助けをした私を許さない、きっと。


捨てるには、内容を確認しないと、危なすぎる。


読むには、もう何の感情もわかない男からの手紙、ただ気持ち悪いような、胸にわだかまるモノがある。


話、いや、ただ挨拶をする相手が欲しくて、失いたくなくて、何をするつもりかも聞かず通した。

何をする?

違う、貴族の住居への侵入は死罪。つまり、死罪に値する犯罪を犯す覚悟で彼は扉を通った。


私に何も説明せず、同意も求めず。


上手くいけば、ユーリ様を連れて、国へ凱旋?

失敗すれば、死罪か逃亡生活。


そのどちらにも、私は含まれていない。


なんと浅はかだったんだろう。




ひとりになる場所を探して庭にでた。


そして、手紙を読んだ。


不気味な内容だった。


「一緒に逃げよう?」


逃げる?

訳がわからない。


彼は動けない重症ではないのか?

そもそも、これは彼の字なのか?


行けば口封じに殺されるのか?

また何処かへ売られるのか?

行かなくても、危険かも知れない。


もう、考えたくない。


「それじゃあ、また同じだぜ?」


確かにそうだ。

でも、頭がぐちゃぐちゃで。


「お前は、どうしたいんだ?」


どう?


「帰りたいのか?」


ううん。


「出て行きたいのか?」


ううん。


「その男に会いたいか?」


ううん。


「では、罪を償うか?」



「踏みとどまるか、逃げ続けるかは、お前次第だ。お前は既に罪を知っている。」


罪という言葉にびくりと顔をあげる。


「コウム、さま」


「お前の責任は、お前がとるんだ。」


「はい」


コウムさまはゆっくり頷く。


「首をだせ。」


「はい」


御使いに断罪して貰ったら、みんなのところへ行けるんだろうか?



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