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カイコ  作者:
24/52

幸せとは。 グレン視点

少し前を振り返ります。

「奴隷商を使ったようだな。」


ピピンを救助し、父と合流した。


我が国では人身売買は犯罪だが、異国へ売られていく、もしくは異国から売られてくる者達は無くならない。


異国人の需要が高いのは、どこの国も同じだ、特に嗜好的な目的では。


だが、この港の港湾は優秀だ。


まさに水際で港湾に保護された者は、身寄りがあれば戻し、なければ教会で受けいれ、自立への道を促している。


幸い、我が州の主産業である手工芸や漁業は人手を多く必要とし、まだ養うに困るといったことにはなっていない。


異国から売られてきた者も、改宗を拒ばない限り同様の道を辿る。


余談だが、それ故か、城下町は色彩豊かな人々で溢れ、それが異国情緒が楽しめると評判も良い。


だが、港湾の負担は大きい。


今回の様に祝い事と祭りが重なり、多くの船が荷を持ち込むと、帰りに積む荷が足りなくなる。

積荷無しで帰るよりはと、通常扱わない荷や、今まで取引の無い相手の荷も請負うこともある。

混んでいるので、停泊費用も値上がりし、長居したくないのであまり詮索もせず何でも請負うというのが実情だろう。


すると港湾は荷改めに追われ、その処理に追われというわけで、城からも応援を送り対応した。


その結果、ピピンが襲われ、ユーリが拐われるという今にいたる。


「よもや、補佐官を襲撃拉致し、更に混乱に乗じて城に侵入し、城主の花嫁をさらうとはな。」


父の云う通りだが、考えればユーリにはその価値があるだろう、水の精霊の加護は豊さと同じ意味を持つ。


例えば、逼迫した状況にある国の者に、お前の国を民を助ける為といえば命がけでも突入してくるだろう。

離れればこそ、国を思う気持ちは強くなるものだ。

成功すれば、国に帰れると、夢を見るものは後を立たぬだろう。









OOOOOO





ユーリを保護出来たが、現場への足がかりとなった犬は取り逃がした。


泣きじゃくりながら私の名を呼び、疲れて眠ってしまったのを港の屋敷に運ぶ。

彼女の香りと温もりは私を満たす。しかし、そのあまりに小さく細い身体に落ちつかない気持ちにもさせられる。


急ぎの案件以外はピピンに任せ、部屋に戻ると、先程はじっくり見ることができなかった「花嫁」がしどけなく座っている。

抱き寄せ、髪を頬を撫でた。


一足早く見ることになった花嫁姿に、私の瞳の色に染まったままの彼女のピアスに、愛しさがこみ上げる。


食事よりもまず風呂に入りたいらしい。

水の加護を受けている彼女は風呂が好きで、放っておくとでてこないくらい風呂好きだ。

昨日から着替えや風呂どころか、髭もそってないので、私にも入れということだろう。


着替えを手伝い、出会った日を思い出してしまった私は、つい出来心で自分の肌着を彼女に被せた。



私の来ていた肌着を嫌がりもせずに着て、嬉しそうなユーリ。


その微笑みをみて、やっと私の気持ちが解れる。


恥ずかしがり、肌着は自分で解くという。魔法が使えない彼女が戻ってくるのを承知で一度手放したのだ、そして彼女から肌着を解いてくれと云ってくるのを待つ時間の幸せ。


そしてやはり彼女は私を頼り、それは途轍もない幸福感で私を満たす。


私の指先が触れる肌の感覚に、身体を震わせる姿も愛おしい。







聞いたこともない旋律を口ずさみながら着替えている様子に、本当に風呂が好きなんだなと思う。


部屋の風呂を改装しよう、彼女の喜ぶ顔がみたい。

湯につかり、彼女の幸せそうな小さなハミングを聴く、至福の時だ。


浴室に入ってきた彼女は、私の姿をみて、眠っているのを邪魔してしまったと思ったらしい。

私が彼女を邪魔だと思うはずが無いのに、ふらふらと歩く様は、彼女がまだ本調子ではないことを示していて、急に心配になる。


無理をさせないように、身体を洗ってやると、恥ずかしいから見るなという。


なんでもしてやりたい。

まだ足りない。ただ私を頼り、私に全てを委ねて欲しいのだ。


こんなに美しいのに、何が恥ずかしいのか。


つるつる滑らかな身体を思う存分堪能した。

くんくんと啼いて顔を赤らめて目を潤ませる、反則技に意識が遠のきそうだ。


終了を言い渡されて、手から離れた肢体を思い出しながら頭を洗う。


奇跡が起こった。


私の身体を洗ってくれるという。


夢なのか、夢じゃ無いのか?

ああ、先ほどまでは、世話をする幸せにこだわりすぎといた。

彼女に世話をしてもらうのは、これこそが最上の幸せなのか。



私はこれに続く時間を耐えきり、知ってしまったこの幸せを守りきる為に完璧な浴室を整備することを胸に誓った。





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