酔う
イザベルさんのお茶を手短に楽しんで、そろそろと云われ、ホールに戻る。
グレンさんのまわりには、作業している人もいるけど、確かに大体終わってるみたい。
急いでグレンさんの方へ寄っていく、グレンさんは相変わらずムスっとした無表情で、カールさんの手下達とやりとりをしている。
私に気づいたグレンさんが顔をあげ、少し心配そうに表情が動いた。
「おまたせしましたっ」
自分を元気づけるように、明るい声をだす。
グレンさんはああと短く頷いて、カールさんの手下達も場所を片付けだした。
「もぅいいんですか?」
「ええ、あまり華美なのは嫌だと仰って。」
手下1は仕方なさそうに微笑む。
なるほど、グレンさんのいつもの格好からすると、これもかなり華美だけど、普通はもっと煌びやかなのだろう。
またムスっとしたグレンさんを見て、微笑みが漏れた。
「ふふっ、、グレンさん、素敵だから、派手にしてもきっと似合うのに。勿体ないですね」
味方しなかった私の発言が心外なのか、グレンさんは少し目を見開いた。
手下1は、まぁご馳走様と云って、下がる。
「大丈夫なのか」
「はい、ダンス、頑張りましょう!」
直視して、その濃厚な色気にすこしやられながら、慣れだ慣れ、と自分を励ました。
これって、チークというやつじゃないんだろうか?
私は全く踊りに関する経験はないが、こう、なんていうか、チークというやつな気がする。
新婚さんダンスを始めてから、やっと初めての休憩だ。
確かにこれでは、複雑な動きは無く、大きな失敗で転げたり、慌てたりすることは無いだろう。
踊るところまで進み出て、皆様に正式な礼をして、お互いに礼をして、、と、曲自体は長くないので、その後また礼をして、席の方へ移動する手順の確認をする。
礼と移動の辺りだけちゃんと出来れば、後は心配なさそうだ。
踊り自体は、練習する意味があるのかどうか、っていうくらい、ただひたすら身体をくっつけ合っている。
これを衆目の中実施するのは、さすがに如何なモノかっていう、エロさ加減だ。
エロオーラの発生地点をそっと伺い見る。
今同じソファのとなりで、襟元をゆるめてしどけなくもたれている姿も、相当濃厚だ。
多分すごく忙しくて、疲れてるんだろうな、、、緩く閉じられた目元も蠱惑的です。
慣れだ慣れ!
そう唱えて、もう一度、ちらっと見てみる。
ただ見たいだけじゃないんですよ、これは訓練です。使命なのです。
正直、この人との間に硝子でもあれば、一日眺めてたって厭きないどころか、別な病気になりそう。
さ、もう一度!
観察しましょう、慣れる為です。
ちらっ。
「どうした」
びくうっっ
今、口、動いた。
起きてる、見えてる、見てました?
見る間に目がばちっと開いた。
ばちっと開いても細い目が、問いかけるようにこっちを見ている。
「ア、、、あ、、」
口は開いたり閉じたりするけど、言葉がでてこない。
小首を傾げたっ
この破壊力で、私がバラバラにならないのが不思議です。
抱き寄せてくれたので、目線が外れて、ほっと一息。
ほんと、そのうち、慣れるんでしょうか。
私の答えを待っている様なので、今しかないです。
「ぐ、、ぐれんさんが、、あんまり素敵なので、見て、ましたっっ」
呆れた内容に、グレンさんが硬直してます。
いけっ、云っちゃえ!
思い切って顔をあげた、玉砕するかも知れないけど、これだけは、云わないときっと後悔する。
「わたっ、わたし、、、、ぐれんさんのこと、大好きなんですっっ」
云った!云えた!
云ってやった!!
正直グレンさんは表情が無かった。
仏頂面のままだった。
見ている私が不安になるほど、表情が無いので、興奮した気分はがくんと下がり、涙がでそうになった。
「め、めいわくだった、、らっ」
途端にがしいっと強く抱きしめられて、グレンさんの声がした。
「愛している。」
確かにそれは聞いた、だけど、なかなか頭に入らない。
OOOOOO
微笑ましい恋人たちの様子に、私達はそっと部屋を辞した。
客人との夕食も、もてなすのはお父上のギルフォード様の役目。
式が終わるまで主が出席する必要はない。
廊下にでると、ホールから披露宴の段取りや予行練習の音がにぎやかに響いている。
人々は待ち望んでいた花嫁の到来に。
主と契約している私達は、流れ込んでくる強く美しい力に、酔っている。




