オトナ。
馬上である。
港から進んで、市街地を通過したあたりだ。
なんとグレンさんは、テレポートまがいのワザで、神殿に行けば、すぐヒョンとお城へ帰れるらしいのに、私にそれは出来ないらしいのだ。
練習すれば出来るのかと問えば、何故かわからないけど、自分独りでは出来ないらしい。
これからピピンさんが詳しく教えてくれるらしいけど、私は魔法らしきものは一切使えないという。
なんか、凄いがっかりだ、自分。
「グレンさん。」
振り仰いで声をかける。
「市場とかは、あるんですか?」
無言で目を合わせるのも、慣れてきたな。
「そしてその、、市場では、屋台で食べるご飯とか、、、おやつ、とか、、」
ああ、とようやく何が云いたいのか解ったと頷いた。
「昼食は用意してある、この先の丘で食べよう」
お腹が空いたんじゃ、無いんです!
私はクレープとか、ワタアメちっくな、なんていうか、たこ焼きとか、かき氷とかりんご飴とか、ワッフルみたいな、、
首がだるくなるまで見つめ合ったが、やはりここはアレだ、折れよう。
衣食住世話になっている身で、それ云ってはいかんだろう、私。
すっと目線をはずして、わかりました~と云う。
「疲れたか?もたれていろ」
頬に唇を寄せて囁き、最後に口付けを落としていく。
おおうっ
なんか、何かを振り落としたみたいに自然にエロく触れてきますね。
こういうのを一皮むけたって云うのかな、グレンさん。
いやでも、グレンさんは初めから距離が近かった様な。やっぱり隠れ美形だからもてるんだろうな。
なんてったって、領主様だもんね。
ふぅーーーん。
でも、独身なんだよね。
あれかな、若い頃にひどい失恋をして、アレがアレになっちゃったのかな。
曰く、親友とか弟と恋人が駆け落ちしたとかっていう、、、
OOOOOO
馬から下ろしてもらった。
馬には私専用にクッションみたいなのが取り付けてあったので、覚悟していた、太股やお尻がすり切れるような事態は起こらなかった。
某将軍さまみたいに思いきり駆けてるわけじゃないしね。
そのクッションみたいな座席?は丁度前に傾斜がついているような感じで、ちゃんと手で持つ輪っかもあるし、背中はグレンさんにぴったりくっついているので、もう安定感は抜群だった。
そこは、丘に大きな木が枝を広げていて、吹く風もさわやかで、物語だったら綺麗なお姫様が遠くの恋人を思って、風に髪をなぶられるままにたたずんでいるのが似合う様な、場所だ。
「この丘を越えれば、街だ。大丈夫か」
「はい!乗り心地が良かったし、景色も楽しめました!」
かぶりを振ってから、ありがとうございますと微笑みかえす。
ワタアメとかクレープとかはまだしつこく頭の中をぐるぐるしてるけど、これはまた次のチャンスまで待つとしよう。
今日は馬にのるので、膝丈スカートみたいなのの下パンツを組み合わせたような服装で、聞けば女の子が乗馬する時の服装らしい。
誰が服を用意してくれたかというと、イザベルさんだ。
イザベルさんも、ピピンさんもヒョンヒョン人だ、私がみそっかすなのかな?
まぁでもイザベルさんの用意してくれたランチ、楽しみだなぁ。
「ちょっと、お散歩してきて、いいですか?」
私を片腕で抱き上げたままのグレンさんに問う。
みんなの様子から、すぐ食事ってことはないだろう。
それとも調理しないお惣菜で、すぐ食べれるのかな?
ああ、と頷いて見返してくるグレンさんに、小首を傾げてかえす。
「え、、っと?」
「どこに行きたいんだ」
「あっちの、小川の上の方です」
みんなのいるこの場所から見える範囲の岩場のある小川のほとりを示した。
馬達が休んでいる少し上流に花をつけた木が見える。
わかったといいおいて、歩き出すグレンさん。
違うんですよ?
私はこの辺りを歩いてみたいんです。
自分の足でね?
「グレンさん、、」
なんだと歩みをとめずに云う彼に、そっと誤解を解こうと伝える。
「あの、、」
「、、、あ、あの、あっちに見えるのが、神殿ですか」
チキンな私にはやはり云えなかった。
「そうだ」
「いっぱい建物がありますね」
「ああ、学校、寄宿舎、孤児院、病院
、図書館と、薬草園もあるからな」
そのまま、向かいに見える山や村の名前、産物などを尋ねながら小川についた。
「水、さわってみたいです」
小川に着いても、突っ立っているグレンさんに、勇気をだして問うてみると、案外簡単に着地することができた。
屈んでそうっと水をすくうと、冷たくて気持ちがいい。
程よく石があって、ぬかるみで靴を汚す心配もない。
顔でも洗おうとフードに手をかけ、はたと気づいた。
この黒髪のせいで、攫われたりするのなら、染めるとか脱色をすればいいのでは?
「グレンさん」
取りあえず、フードをとっていいかと聞くと、怪訝な表情だ。
「水が気持ちいいから、顔を洗いたいんです」
尚も怪訝な表情ながらも頷いたので、フードをずらす。
水面に顔を近づけて、すくい取った水に浸す。
生き返る!
冷たくて気持ちいい。
二度、三度とばしゃばしゃし、満足して顔を上げると、側でしゃがみこんでフードと髪が垂れないように持っていてくれたグレンさんが、その服で顔を拭いてくれた。
なんて甲斐甲斐しい、、
「ありがとうございます、グレンさんも如何ですか?すっごく気持ちいいですよ!」
上機嫌の私がすすめると、グレンさんも同じように顔を洗う。
ね?と笑いかけると、ああ、と答える。
なんだかすごく気分が良くなって、私も自分の服の一部で顔を拭ってあげた。
こういうとき、びらびらした服はとても便利だ。
やはり抱えられて戻りながら、先程の質問をなげかけてみた。
「こちらでは、髪を染めたりしないのですか?」
いつも通りいきなりの私の言葉にグレンさんは黙って先を促す。
「この髪がいけないんだったら、染めたらいいんだと思うんです」
グレンさんは言葉を選ぶ風に少し黙った。
「黒い髪は、変えることも変わることも出来ない」
?
「黒くすることも、黒くなくすることも出来ないということだ」
「そうなんですか?」
「それに、封具をつけていても、黒髪の魔力は隠し通せるものでは無い」
「魔力?
私は魔法を使えないのでは?」
「ああ、魔法は使えない。
だが、高い魔力がある」
「魔力って魔法を使う力じゃないんですか?」
「少し違うんですよ」
と、ピピンさんが参入して、簡単に説明してくれた。
蚕姫は高い魔力を持ち、魔力を持つ子を成すことが出来るが、魔法は使えない。
封具はダダ漏れの蚕姫の魔力を吸い上げて、一時期保存することができる充電池の様な物。
「封具ってつけてないと、どうなるんですか」
「一所に籠もってらっしゃると、瘴気となり災いを成します」
「、、、わたし、大丈夫なんですか?」
「ピアスを介して器へ流れるので大丈夫です」
「ピアス?
じゃあ、グレンさんも魔力がダダ漏れだったの?」
「俺はお前の器だ、ユーリ。」
「じゃあ、グレンさんに瘴気がたまるの?大丈夫なの?」
「器にとって、貴女の魔力は食事の様なもの。全く害にはなりえませんよ。」
食事?
例えが変だ!
「ピアスをつける前は?大丈夫だったんですか?」
それは、、と、ピピンさんが黒ピピンな笑みを浮かべ、また次の授業で説明差し上げますといった。
OOOOOO
お昼でお腹が一杯で、帰りは眠気がやってきた。
子供の身体はこれだからいけない。
くったりと背もたれに身を任せ、揺られながら先程の話を反芻する。
魔力があるけど魔法は使えない私。
グレンさんは、魔力があり魔法が使え、私の魔力まで引き受けることが出来る。
移動陣は魔法が使えないと使えないということ?
ピーターは、魔法で移動した様な?
でも、あんなところに移動陣あったのかな?
ヤバイ、流石に寝たら落馬しちゃう!
いくら賢いお馬さんでも、寝ている人を乗せて運ぶのは無理に決まってる!
はっと身体を起こした私は、まだかかるから寝ていろと囁かれ、すっかり寝こけていたらしいことを知った。
OOOOOO
時々休憩を挟みながら、半日かけて城下町に着いた!
結構遠いんだなぁ。
城下町は職人さんが多くいて、手工芸が盛んな処だ、是非見て歩きたいけど、、
ダメだろうなぁ。
街をぶらぶら歩いて、お茶するなんて、デートみたいで素敵だなぁ、、
でも、恋人同士に見えない、かな
「どうした」
小さい溜息も漏らさないグレンさんが、すかさず問いかけてくる。
黙っておくつもりだったけど、この距離をちょっと窮屈に感じて黙ってられない。
「わたし、いつ大人になるのかなって、思ったんです」
グレンさんは意味がわからないらしい。
「見た目です。いつになったらイザベルさんみたいになるのかなって」
グレンさんキョトンだ。
「ユーリは、成人してるのだろう?」
勿論です
「成人すると、姿形は変わらない、、あまり」
は?
「じゃ、じゃあ、、一生子供の人もいるわけですか?」
「ごく稀ではあるが、、」
ゆっくり成長するは聞いてたけど!
成長が止まるとは、聞いてないよ!
、、、たぶん。
「わ、わたし、成人してるの、でしょうか?」
「、、、、、、。」
私達は盛大に沈黙し、全会一致でこの問題の先送りを決めた。




