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悪の巣窟生徒会室にて

「ふーん。で?」


 いきなりの宣言に俺の機嫌は一気に急降下だ。やっぱり予想通りの宣言だよ。意外性も何も無いわ! こんだけの為に力発揮してどーすんだよ。この馬鹿共は。


「なっ! 退学??! 何でいきなり??!!」


 俺の変わりに驚いたのが皆川だった。皆川はバ会長に詰め寄る。


「どう言う事だよ! 四紀はまったく何も悪い事してねーじゃんかよ!!」


 確かに俺は何もしていない。だがしたのはお前だよ皆川。


「歩はこんな平凡に傷付けられたと言うでは無いですか。それに先程のあの態度。大切な人を傷付けられて我慢出来るほど私達は大人ではありません」


 だろうな。こんな奴らが大人であってたまるか。って言うかお前等も猿同等の小学生だ。あ、この侮辱は猿と小学生に失礼だな。


「そうだ。こんな奴は歩の為にならん。と、言う訳でお前は退学だ。まあ、あれだ俺達は心優しいからな自主退学にしてやるからその自主退学届けを出せ」

「けど…っ!」

「歩は黙っていて下さい。これが歩のためなんですから」


 ……なんと言う茶番。もう駄目だ。忍耐もへったくれも無い。これを笑わずに何とするか。


「ぷぷぅっ!」


 先程からだんまりと下を向いたままの俺の姿に生徒会共は勝ったと確信していたのだろう。残念な事にそれは違う。 肩プルプル震えてたのは向こうは勘違いして俺が泣いていると思ったのだろう。

 んな訳あるかっ! アホらしいコント内容に今まで笑いを必死に笑いを今まで堪えていただけだ。


「あーはっはっはっはっ!」


 そして最後のコントに俺の笑いは止まらなくなった。いくら訓練されていたって此処では仕事で来ている訳じゃ無い。なのでアホのコントに笑いを堪える必要何て無かった。


「何が可笑しいというのですか?」


 これには流石の腹黒副会長筆頭に生徒会役員と番犬3人もうろたえている。


「これが笑わずにいられるか。あんたら馬鹿だろう?」

「な…っ?!」

「ってめーっ!!」

「俺は知ってんだよ。あんた達生徒会が昨日の時点で俺に対しての退学処分申請書を出してたのを」


 そう言うと部屋の空気が一斉に固まる。


「何故、それを……」


 信じられない者を見る様に腹黒の笑みが驚愕になっていた。


「ある筋で情報を貰ってたんだよ。ったく。んで、その申請をしたがどれ理事長からは許可が降りなかった。だからあんた達は考えた。許可が降りなかったが、俺本人には退学が受理された事にして、それじゃあ対外が悪いだろうと優しく持ちかけて自主退学届けを出させようとな。ホント、下らない事に頭が回る奴等だな。そんな事してる暇があったら周りに溜まっている仕事でも片付けろや。こんな事にしか能力を発揮しないなんて低能さと財閥次期跡取りとやらの生徒会が聞いて呆れるぜ」


 図星を指されたのか奴らが一斉に怒り出す。


「てめぇ…っ! 少しは痛い目を見ないとわかんねー様だな、ぁあっ?!」

「秋・冬は歩と一緒に非難していなさい」

「うん。分かった」

「行くよ、歩!!」

「ちょっ?! えええっ?!!」


 そして皆川は狩野秋・冬コンビに引き摺られて非難して行く。

 それを見届けてから俺の周りに番犬三人と生徒会長、副会長二人が囲む。どうやら集団リンチの様だ。

 これじゃあ生徒会もただの悪役だな。まあ、本人達は皆川を守ると言う正義の元で行おうとしているんだからな。そんなの言い訳にしかならない。最後には暴力に訴えるとは本当に人間がなってないな。


「はっ。お前の人生これで終わりかもな」

「俺達を散々怒らせたんだ。その当然の報いを受けるんだ」

「そうだねー。とっととやっちゃおうよー」

「ああ、こいつには一発入れときたかったんだ」

「そうだね。歩を傷付けた奴なんだ。手加減はしないよ」

「…お前…殴る…」


 一発触発の雰囲気の中俺の視線の先では固まって身動きが出来なくなっている吉永の姿が目に入る。

 成る程ね、皆川が無事ならそれで良いんだな奴らは。だったら彼は助けてやらんとな。こうなった事への巻き込みの謝罪として。


「ちょっ! おまえらっ!!」


 そこで慌てた様な皆川の声が届いた。が、それを合図に生徒会長が俺に殴りかかって来た。

 しかし遅い。確かに喧嘩慣れしている様子が窺えるが、所詮はその程度。プロの訓練を受けた俺には手に取る様に分かる。

 さっと避けると、後ろから来た小松原と泡島の蹴りを飛んで交わす。そしてそのクロスした部分にとんっと立ってやる。縛りの術も大奮発して使ってやった。それだけで二人は動けなくなる。


「なぁ…っ!」

「遅い」


 そしてそれをばねにして飛び上がりざま副会長二名と橋が三方から殴り掛かった攻撃をかわす。そして見せ付けるようにまた三人の腕を二人と同じ様にしてその上に立ってやる。


「全然駄目。なってねーな。そんなんで俺が傷つく訳ねーだろうが、この甘ちゃん共が」


 足を乗せている三人は手を動かそうともがくが、一般人にこれを解ける筈が無い。

 その光景を目にしながらバ会長の忌々しそうな声が掛かる。他の奴らも信じられない目で俺を見ている。

 

「…何もんだてめぇ…?」

「あれ~? 知ってたんじゃねーんですか? 俺の本名ちゃんと知ってましたよね~? それとも俺が平凡だからちゃんと調べなかった? そうだとすると等々力家も、もう駄目なんじゃね?」

「なっ!!」

「ま、あんたらの家がどうなろうと俺の知ったこっちゃねぇけどな」

 

 俺は地面に降りると無様な面を向ける奴らを鼻で笑ってやる。


「質問の答えになってませんよ?」

 

 いらいらした様な声で腹黒が言う。おーおー、本性丸見え。指摘はしてやらんがな。


「あんたらの質問に答えてやる義理は無い。これで用事は終わったろ? 俺は帰らせて貰う。あ、そこのソファで固まっている吉永も来い。一緒に帰るぞ」

「えっ?!!」


 突然話を振られて吉永は戸惑っている。まあ、そりゃあそうだな。いきなり大乱闘を目の前でおっぱじめたりしてたんだからな。

 此処で漸く我に返ったであろう皆川の声が響く。


「ま、ままままま待てよ。おれ全然、話が読めなんだけど??! ってか四紀帰ろうとすんなよ。透も!」


 出た、子供の我が侭。

 だが、これこそ俺にはそれに答えてやる義理も義務も無い。

 元々こうなったのはてめーのせいなんだからな。騒ぐ皆川を放置して、俺は吉永の側に行く。そして懐からある物を取り出した。


「んじゃあ、俺達はこれで用は終わったので失礼します」


 にっこり笑ってやって懐から取り出した物を思いっきり床に叩き付ける。

 瞬間、俺の目の前に白く濃い煙が吹き出て、一気に生徒会室全体に広がる。

 そうこれは煙幕だ。

 昔から定番の忍者が姿を消す時の道具。こんな奴等に使ってやるのは勿体無いが、これ以上の追求もされるのが面倒だ。

 一気に広がった白い煙が視界を悪くする。俺はこっそり出していたハンカチを吉永に渡す。


「これで口と目を覆っておいて。これ、ちょっと俺が特別に改良した特殊な煙幕だから」

「は、はい!!」


 急に言われうろたえながらも素直に吉永はそれらで顔を覆う。


「良し、出るぞ!」


 そうして俺は吉永を連れて悪魔の巣窟から見事に脱出する事に成功。

 そして扉を閉めた向こう側ではむせる声とくしゃみを連発する音が響き渡っていた。

 何の事は無い、とうがらしと胡椒をブレンドしてやっただけだ。目を洗えば多少は落ち着くだろう。


 俺達は二人揃ってその場から離れた。

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