最後の警告だったのにな
それでも何とか表面上は保っていたのが副会長の微笑みの貴公子様(笑)だった。
まあ、まあ取り作った表情でも目が笑ってないので、怒っているのは一目瞭然だったりもする。
「……その鑑定こそ偽者でしょう? 政府やそれ相応の機関がたかだか一高校の生徒の依頼をすんなりと受ける筈が無い」
「………警察でもすぐに分かる」
伊集院と親を警察官のエリートに持つ泡島の言葉を聞いてアホ共が復活した様に非難轟々と口々に切り出す。
「これって恐喝だよね?」
「だよね?」
「ママ達に言ったら裁判勝てるんじゃない?」
「だよね。贋物だったらこっちの勝ちだよ」
「はっ。流石風紀委員もここまで落ちたか。捏造なんてやってるそっちの方を解体投票にした方が良いんじゃ無いのか?」
「ですね」
……ドヤ顔で言われても俺達はため息しか出ない。まあ、奴等にとっては最後の無駄な足掻きだからどんな事を言ってくれるか楽しみにしていたのだが…。
アホにはやっぱりアホな考えしか出来ないみたいだな。
こいつ等忘れてるな完全に。俺と言う流山の存在を。
まあ、間違った認識をして、変な宣戦布告してきやがった副会長もいたからそれ以上を求める事は出来ない。
それに気が付いたのか俺以外の断罪者達は一斉に愚かなと言う風にため息を同時に吐いた。
それは壇下で見守っている生徒も一緒で、もの凄い冷めた目を生徒会及び番犬と宇宙人連中に向けていた。
その視線の意味にも気付かない。
終ったな。
こいつら。
そこまで考えてから俺は風紀委員長の前に入り込むと奴等が気付く位に思いっきり溜め息を吐いてやった。
そこで奴等が開いていた口を閉じて、これ以上アホな事を言い出さぬ内にさっさと話を切り出した。
「貴方方こそ。これが贋物だとどうして判断出来るんですか? 確かにこの依頼を請け負った研究機関は一般からの依頼は受けたとしても結果は随分と先にこなしてくれるでしょう。たかだか高校生と言いますが、俺達は既に社会を学ばなければならない階級にいる人間だ。家の仕事を手伝っている者もいるし、また人脈も得る事も出来る。まあ、貴方方は遊び呆けて、しかもその人脈作りを疎かにしていますし、また今回のこの件で貴方方に手を貸そうとする人脈の道も絶たれたと言っても構わないでしょうね。貴方方はお忘れかも知れませんが、意味不明な見当違いも良い所の所業を繰り出した、先程映像に映った生徒…。今回の画像と音声を提供してくれた人物は流山四紀…。そう。あの流山家の直系の者。会長方、幾ら貴方方でも流山の名前の意味を知らないとは言いませんよね?」
俺がそう言ってやると会長達の顔色が変わった。分かってないのはあの宇宙人だけである。
流山の名前が出た途端に一般の生徒からも微かに息を呑む音が聞こえてきた。
こう言った上流の社会に生きている者達こそが正しく情報を掴んでいて当然の家系なのだ。流山と言う存在は。
今度は風紀委員長達が攻勢に入った。
「お前達、随分な相手に結構な言葉と迷惑行為を掛けたな。武石の言う通り、我々が使ったのは人脈だ。これに勝る物は無い。金も人脈があってこそ使う事だ。ああ、心配しなくてもこの費用に金は掛かってはいない。本来なら出すべき所だが、紹介状を流山が出してくれたお陰でな。費用を受け取らず、すぐさま証明書を出して来た。鑑定はその機関で第一人者であり、責任者たる方が請け負ったのだ。それこそ証拠も山積みだからこの依頼は簡単だったとのお言葉も頂いた」
「お前達が納得行かないなら再度鑑定に出しても構わん。ただし、不正を防ぐために俺達と一緒に行って研究機関に証拠の物を一緒に提出しよう。お前達に渡すとそれこそ贋物に摩り替えられる可能性もあるからな。…それでも言い逃れする気か?」
委員長と三笠の攻撃に言葉を失った生徒会共。
しかし、此処で騒ぎ出すのが宇宙人なのだ。
「な、何だよ! みんな揃って弱い者虐めするなんて俺は許さないぞ! お前達がやってる事こそ立派な犯罪じゃ無いか!」
「…一番周囲から被害届けが風紀に届けられている主犯のお前が口にするべき言葉では無いな。お前のやっている事こそ過剰防衛って言葉を知っているか? 口だけで、手も上げていない人間に対しても暴力を振るったそうでは無いか。相手は全治2週間の怪我。被害者はそれ以外にも沢山いる」
「俺に嫉妬して見当違いな事を言って殴って来たんだ! こっちも正当防衛だ!」
「お前の正当防衛は過剰防衛と言っているんだ。そもそも口でしか忠告してない者を殴る事からして論外。色々と調べさせて貰ったが、お前はこの学校に来る前にも内でも外でも色々と騒ぎを起こしたらしいな? 被害者の規模はそれこそ50名以上に上っている。彼等は近々お前に対して訴訟を起こす準備を揃ってしていると言う情報も手に入れた。それに器物破損等の被害も我が校からも出ている。そろそろ自分がしでかして来た事に対しての罰を受ける時が来たんだ」
委員長のその言葉に宇宙人がショックを受けた表情をして、そのまま涙を流し始めた。するとアホ会長達は宇宙人を庇うかの様に更に呆れる言葉を吐き出した。
「てめぇ等、よってたかって歩を苛めてんじゃねぇぞ、糞が」
「そこまで言われると此方も虫唾が走ります。歩は悪く無いです」
「そうだよー! 歩ちゃんが可愛そう!!」
「ホント、風紀って必死で歩ちゃん追い出そうとかしてるのが見え見え」
「ああ? てめーらの頭のが可笑しいじゃねえのか?」
「歩、優しい。そんな事、しない」
「歩の優しさが分からないなんて、風紀も可笑しいですね」
「みんな…!!」
茶番劇の台詞に宇宙人は感動して、そして尊敬の眼差しを向けていた。
………。
もう時間の無駄だよな。これ以上やってもまた無限ループに入るだけだ。いい加減無限ループに入りそうになり、俺は風紀委員長に視線を配ると、それだけで委員長は頷く。
こちら側の人間は最早うんざりしている。そして一般の生徒達も険しい視線のままにうんざりとした表情をしていた。
そして俺が最後に口を開こうとした先に、宇宙人に指を向けられた。
「忠義! 仲間をそんな風に苛めるなんて許せないんだからな!! 優しい俺でも怒るぞ!!! もう、叔父さんにこの事言ってやる! お前達の方が悪いんだからな!」
…子供の告げ口かよ。
「………いい加減にしろ、カスが」
おおっと本音で武石の声で出てしまった。
すまん、武石。
これでお前の印象変わったら後で土下座で謝る!
だが、言わずにはおれん。
宇宙人の理解しなささとアホ会長達の態度。
先に親を出したのはお前達の方。
だから…。
俺もお前等に合わせた方法で徹底的に根性を入れてやる。
お前達は分かっていない。ここに居るのは何も生徒ばかりでは無いのだ。
今日は正真正銘、目の前の奴等にとっても最後の踏ん張り所で最後のチャンスだったのだ。
それに気付かず、愚かな事を言った宇宙人達。
そろそろ最後の断罪者に登場して貰おうか?




