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急病人発見

 俺達の行く道の真ん中で倒れていたのは、今まで話に出て来ていた武石だ。この書類の散乱振りと倒れっぷりからして明らかに宇宙人被害の末の過労だろう。


 顔色が青白い事からみて食事も睡眠もまともに取れずなおかつ貧血で倒れた様だ。


「ど、どうしよう?!」


 冷静に状況分析していた俺の横で吉永が慌てている。


 まあ、突然倒れた人がいたらどうして良いか分からなくなるもんだ。一般人は。


「…取り敢えず此処で慌てても何にもならんな。吉永悪いけど俺の弁当箱持ってて」


「う、うん」


 そう言うと吉永は俺の言葉に何をするのか即座に気が付いたのか嫌がりもせずに大人しく弁当箱を受け取った。


 それを見て俺は武石の側に寄ると武石を抱き上げた。


 身長的に武石の方が俺よりも高いし、体質的に武石の方ががっしりしている。そんな武石を運ぶ手段はお姫様抱っこだ。


 やる本人よりやられた本人の方が精神的に来るものだろう。


 だが、今の武石の状態を考えると俵担ぎとか背中に背負って行くと言う手段は余りに宜しくない。


 こんな事なら俺の一族秘伝の栄養満載の兵糧丸と気付け薬を形態しておくべきだったかな。まあ、後悔しても仕方が無い。


 俺が武石を抱き上げるとその横では散らばった書類を纏めていた吉永に声を掛ける。


「このまま保健室に運ぶ。手が塞がっている所悪いけど、委員長か副委員長に現状報告もしてくれ」


「了解!」


 そう言うと吉永は器用に弁当箱を脇に抱えて書類をなるべく汚さぬ様に携帯を取り出すとすぐに連絡を取る。


 それらをしながら俺達は心持ち急ぎ足で保健室へと歩き出した。


 今の武石の状況は緊張状態が高まった学園内の生徒に取っては一気に暴動を起こしかねない状態だ。


 俺は気配に気を配りながら他の生徒の視線を避けるようにして保健室に向かう。その横では吉永が声を潜めながら副委員長に報告をしている。やっぱり状況を良く理解しているような、吉永は。


 武石は軽い。俺とタメを張る位まで体重が落ちている。


 俺の場合は訓練と体質そして気を配って身軽が動けるまで極力体重を落としているから問題は無いのだが、俺よりも身長が高い武石が俺と同等なのはまずい。しかも武道を嗜んでいるとは言えないまでに筋肉も削げ落ちてしまっている、此処までになると最悪入院の必要が出て来る。


 そうなったら生徒会の機能は実質ストップ。生徒会顧問も同じ様な状況なのでどうにもならない事態だ。


 俺の横で報告をしていた吉永は携帯を切るとひそっと話し掛けて来た。


「このまま特別棟第一保健室へ運んで欲しいって。委員長と副委員長もそっちに向かうからって」


「ああ」


 この学園は金持ち学園なだけあって、保健室の質も上等だ。


 特別棟第一保健室は下手すればその場で簡単な手術が出来る上に、そこの主は保健医でありながら医師の免許も持て居る。


 たいそうな美形だが、此処には滅多に生徒は近寄らない。


 その特殊性もあるがけど、そこの先生が学園の奴等を鬱陶しがっていて、そんな目的を持った生徒はすぐさま追い返したりしているからだ。


 因みにお約束の様に保健室をラブホ代わり&黒もじゃぐるの狂信者となった保健医は第二保健室にいる。


 なので俺達の足取りは最初から第一の方だったから問題無い。


 そして誰にも合わず保健室まで無事に来れた。


 俺は届く範囲に手を持って行き、ノックをすると、中の返事を聞かずにさっさと開ける。緊急事態なのでこの辺は勘弁して頂きたい。


 すると中の保健医こと橘川博史きっかわひろしの傍迷惑そうな表情が伺えたが、俺が抱き抱えている武石が目に入って、すぐさまその表情が医者の物となる。


「急患です。中庭と第一棟の間で倒れてました。何時から倒れてたかは分かりません」


「すぐにベッドに移動させてくれ」


 手短に状況を説明すると、それに橘川が頷きベッドを示す。俺はそのまま武石をベッドに運び、俺の後ろにいた吉永がそっと保健室の戸を閉めた。



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