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つかの間…の平穏?

 そしてまだまだ劇的ビフォーアフターは終わらない。黒もじゃぐるの教室も見回って取り敢えずゴミを一気に捨てて、素敵な花瓶と活けてある花と机の落書きはそのままにして置く事にした。


 委員長もそこまでお人よしじゃ無いので、それだけするとさっさと特2-Sの教室を出て、その足で俺と今日から吉永の教室にもなる部屋へと巡回する。


 誰もいない教室に変化があった。

 俺は席が一番後ろだったし、人数の関係で今まで隣はいなかったのだが、俺のその横に真新しい机が設置されていた。きっとこれが吉永の席だ。


 そしてその横の俺の机を見てまたもや爆笑した。


 いや、俺の机までピカピカの新品だったのよ。ついでにロッカーの文字も消えている。


 しかも俺と吉永の机の上には綺麗な季節に合わせた色取り取りの花々がゴージャスに活けられており、更にはそれぞれの机の上には反省文が置かれていた。


 うん。ごめんなさいと許して下さいとその二言がびっしり書き込まれているだけの謝罪文だったがそれはそれで良しとしよう。


 これで面倒事の小物連中一部は無事に解決。


 付き合って頂いた委員長もそれを見て頷くと、俺達の朝のお勤めは終ったのだった。

 



 それから風紀委員室に戻って報告を終えると、今日一日のスケジュールが渡される。


 基本的に風紀は授業に出るのだが、最近の状況では結局公欠扱いで授業を休んで委員が交代で一日見回りをしているそうだ。


 俺は兎も角、吉永はペーペーなので暫くはその交代に組み込まれる事は無い。


 だが、委員長に仕事を教えて貰った後は基本的に攻撃型と穏健型がペアを組んで校内見回りをするので俺は吉永とペアを組む事は決まっている。


 委員長も暇な人で無いので比較的自由の効く朝と放課後に仕事を教えてくれるのみの為、俺も授業に出てれば良い訳だ。


 んで、教室に俺が行くとさっと注目が集まるが、すぐに逸らす奴とマジマジと見てくる奴が半々だった。サッと逸らした奴はきっとあの面白い贈り物に加担した覚えのある連中で、見てくる奴は何でこんな影の薄い奴、今まで気付かなかったのに何でいきなり風紀になってんだ的な目で見てる訳だが。


 まあそれ以上に害は無いので俺はさっさと自分の席に着くとHRが始まるまで話しかけたら殺す敵な雰囲気を醸し出し、話を聞きたそうな連中をけん制する事にした。だって相手面倒。


 それにあの時不幸の始まりの元、黒もじゃぐるに引き渡した怨みは当分残っている。


 そんな風にしていると周囲の動揺が伝わってくるが無視だ無視。


 そして教室内が不思議と静まり返り、HRをする為担任がやってくるまでそれは続いた。


 同時に吉永も一緒に付いて来たので、教室内が静かにざわめく。


 ま、そうだわな。


 いきなりクラスメイトが一人増えるんだからな。


「え~。そんな訳でクラスメイトが一人増えたから宜しく~」


「どんな訳だよ!」


 しかも担任の説明超適当かつ端折り過ぎ。流石ににクラスメイトの誰かがツッコムが担任はだるそうにそれを無視すると俺の横の机を指差した。


「吉永、お前の席は我がクラス随一影と気配の薄い男流山の隣だから~。ほれ、さっさと行け」


 そう言って吉永を促すと、戸惑いながらも吉永はこちらに歩いてくる。っつーか担任、今まで俺の事そんな風に思っていたんだな。


 …担任はもしかしたら俺の実家を知ってるかもしれない。それ以上特に何も言う気配は無い。


 この担任かなりの面倒くさがり屋なのだ。顔は良いけど。


 まあ、優越感に浸っているアホな教師とか見下す様な馬鹿教師とか媚売りに必死な教師とか何処でもセフレハーレム作ったアホなホストもどき教師よりはマシな存在である。


 だから面倒事が嫌いなのか、さっさとHRに入って勝手に喋ってさっさと話を終らせると教室を出て行った。


 …逃げたとも言う。


 吉永と俺への質問が直接出来そうに無い状態なのでせめて担任から説明を…と言う連中に説明が面倒なのだろう。質問しようとして居た奴らは肩を落としていた。


 そんな風にクラス内を眺めていたら吉永が声を掛けて来た。


「何だかずいぶんと面白い先生だね」


「まあ、やる気が無い先生だが、他のアホ教師よりマシな部類の先生だな」


「そうだね。でも最初はすっごい緊張したけど、このクラス何だか居心地良いね。S組の時はこんなんじゃ無かったし」


「それは成績と実家の功績の余韻に浸ったアホが沢山在籍してるからな。実際此処のクラスは成績普通、家柄極一般的よりちょっと良い位の庶民寄りばっかりだしな」


 俺達の会話を周囲の連中が聞き耳立てているのは分かるが、隠してもしょうがないのでズバリと言ってやる。これで耐え切れず特攻掛けて来る奴がいたら大馬鹿決定なんだけどな。


「うん。静かだしようやく平穏に過ごせそう」


 …ちっ。流石にアホでも仕掛けて来ないか。どちらが上か今回の事でハッキリしてしまったからアホは釣れない模様。幾人か拳を握り締めて悔しそうにしている輩もいたが、取り合えずそいつ等の名前は覚えておく。

 だが、次に俺が紡いだ言葉で奴等全員が顔を青ざめさせたのが伺え知れた。


「クラスでアホな行動に出て来る奴には俺が今後自分の平穏な学園生活を守る為に、防衛手段…つまりは武力を持って実力行使にてとっくりと言い聞かせてやるしな…。静かに見守る位だったら俺も何もしない」


「流山本性がちょっと出てるね…」


「いや、流石に今回の騒動で頭キてるから。マジで。この間の俺売り渡し行為まだ覚えてる。なので俺の平穏乱す奴は許さん」


「あはは。流山と一緒だとかなり安心出来そうだよ。このクラスで穏やかに無事に過ごせそうだね」


 吉永は本当に穏やかに笑いながら次の授業の準備を始めていた。


 そして周囲の俺達の会話に聞き耳を立てていた奴らの顔色が青ざめて、要注意と名前を覚えた奴も一緒に混ざっていたが、そいつらと同じく沈黙を確認。騒ぎ立てる事も無いのでそのまま放置して俺も鞄から教科書を出した。


「あ、暫く教科書見せてね。新しいの来るのちょっと時間掛かるんだって」


 アホ共の被害に遭った教科書達はまだ届いて無い様だ。


「はいはい」


 こうして周囲とは違い穏やかに会話をしながら俺と吉永は授業開始を待った。


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