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ようやく一息

「これで一息吐けたな…」


「うん。でも、こう言う風に行動起せる流山が凄いよ。俺だったら本当に途方に暮れて何も出来なかったし。これも全て流山のお陰。有難う」


「いや、最初に巻き込んだのは俺の方だしな」


 最初に巻き込まれていたのは吉永の方だが、こんだけ更にややこしい事態に巻き込んだのは俺だ。だからこれ位しないとな。そんな風に二人で話していると、途中で携帯が鳴った。


「ん…? ああ、風紀副委員長だ」


 鳴ったのは吉永の方の携帯。


 風紀の管轄で俺は委員長の下、吉永は副委員長の下にそれぞれが着く事になったので別段おかしい事では無い。それにこの流的に、吉永のクラスに関する事だろう。


「はい…。はい。え、本当ですか? はい。分かりました。有難う御座います」


 それだけの会話をするとピッと音を立てて携帯を切る。そして吉永は嬉しい感情を隠しきれない表情で此方を向いた。


「俺のクラス替え無事に済んだって! 明日から宇宙人と違うクラスになれるってさっ!!」


「…良かったな」


 無事にクラス替えも終了して俺達の願いは二つとも聞き入れられた。


 此処まで順調だと何だか別に恐い物がある。


 もっともクラス替えに関しては別口で理事長に俺からも進言させて貰った。その時フザけた事をあのくそ理事長が抜かしやがったが、理事長の恐ろしい物を口にして仕返しをさせて貰ったがな。因みに奴の恐い物は奴の姉とその夫であり、理事長の秘書だ。


 夫婦揃ってあの糞理事長の手綱を握っている。


 それだったらあの宇宙人の手綱も握って置いて欲しい物だが、二人も何かと忙しいらしくてそこまで手が回っていなかったのが事実。って言うか情報ではその二人もあの宇宙人と宇宙人の絡んだ糞理事長を相手するのが嫌らしい。


 ……宇宙人はやっぱり宇宙人一家なんだ。何故わざわざ地球に、しかも日本に移住して来るんだ。


「ああ。何だか夢みたいだ! やっと宇宙人絡みのゴタゴタから遠ざかれる!」


 幸せが一気にやって来た表情だ。此処で俺は良かったなと言ってやりたいが、現実問題それは適わない。


「…だが、此処までしても奴は俺達の予想斜め上を行く地球外生命体だ。本能に何処までも忠実な奴だから、これが引き金になって枷が外れてどう言った行動に出て来るか正直俺にも予想不可能だ」


 言った途端、空気が重くなった……。


「だよな……。親衛隊の嫌がらせとかは無くなったとしてもあの信者共の行動も予想不可能だ……」


「信者は思い込んだら恐ろしい行動に出るからな…」


 そして二人揃って遠い視線になる。


「……兎に角、もう夕食時間だし、ご飯にしようか……」


「そうだな…。幸い、食料は買い込んで来た。今日は面倒だから料理はしないが、カップ麺で過ごせる」


「賛成……」


 俺達は幸いな事に二人揃って料理は出来る。この寮には各部屋にそれぞれ立派なキッチンスペースがあって調理も可能だ。だが、またしてもこの学園内の人間には無駄な機能の一つでもある。坊ちゃんが料理出来る筈が無い。殆どが購買か食堂のどちらかを利用する。


 俺も吉永も飯に高い金を払うのは嫌なので、殆どが自炊だった。


 宇宙人が来た当初はその調理も出来ずに過ごしていたが、これからは自炊も出来る。よって宇宙人との交流機会もぐっと下がると言う訳だ。


 何故、俺達が…と思わないでも無いが、相手は宇宙人だからと諦めがすぐについてしまうのだった。


 そして俺達は侘しいカップ麺で夕食を済ませると交代で風呂にも入り、早々に部屋に入って休む事になったのだ。


 お互い、数週間ぶりの幸せな休息に安堵の息を吐いたのは言うまでも無い。

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