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決まったら即行動

 俺と吉永がまず行った事は宇宙人と吉永の部屋強制交代だ。


 書類には既に風紀から印を貰っている。そして荷物移動の手はずも整っている。後は寮長に貰うだけ。


 そう言えば、寮長には色々と間接的にお世話になったな。きっちり礼もしておくか。


 そう考えながら俺と吉永は寮長室前に来ていた。そしてインターフォンを押す。


「あれ…? 出て来ない……?」


 もう一度今度は吉永がインターフォンを押すが、中から返事が無い。おい。居留守か。俺には分かってるんだぞ。気配が二人…いや全部で五人分。丁度良い。この気配は宇宙人とその番犬ズのものだ。


 奴等はきゃっきゃするのに忙しくてこっちの応対に出たくないのだろう。


 それならば。


 横についているインターフォンを俺は超高速連打で宇宙人ばりのピンポンダッシュをしてやる。


 すると漸く俺達の行動に痺れを切らしたのか中から寮長が凄い形相で部屋から顔を出した。おお、美形が台無しの般若の様な面だな。


 吉永はその表情に恐れをなしたのか俺の後ろにサッと隠れる。俺は何とも感じないのでにっこり笑ってやった。


「……何の用だ…」


 いかにも楽しい所を邪魔されて不機嫌ですと言う表情。いや、あんた寮長でしょう? 寮長は寮内の揉め事を率先して静めるのが役目だ。


 俺達のは直ちにって訳では無いから良かった物の、もし怪我人とか病人の緊急連絡の場合どうすんだよ。職務怠慢も良い所だぞ。


「お遊びに夢中の最中に申し訳「ああああ~~~!! 四紀!! 透!!!」


 お約束の様に乱入してくる宇宙人。


 だが、無視する。


「今回は至急寮長に了承の判子を頂きたく、参りました」


「ちょっ! 何だよ!! 無視する事ねーじゃんよ!! 朝、あれから大変だったんだぞ!!」


「はーいはい。地球外生命体君。少し煩い。俺は今寮長に話があって来ている。よって後ろの番犬共々少し黙ってろ」


 そう言って俺は懐にしまってあった粘着力の強い布テープを取り出し、それらを地球外生命体及び番犬三人の口元に素早く貼り、ついで手足をぐるぐると巻いて邪魔されない様にした。


 一瞬の出来事に見えたから宇宙人と番犬共は目を見開いてその場で固まっていた。


 ったく。これでようやっと寮長と話が出来る。


 視線を向けると心なしかビクッと肩が動いた気がしたが、そんなのは気にしない。


 俺は今までの恨みを込めた最高の笑顔で寮長と対面した。


「さて、先程の続きですが、宜しいでしょうか。此処にはぶっちゃけ一分でも居たくない位なんで」


「あ、ああ…。それで……何の用だ?」


「これに有無を言わず判を押せ」


 そう言って目の前に風紀の判が押してある、部屋交換許可証を見せる。


「これは……」


「そうだ。俺の後ろにいる吉永を俺の同室に、そしてあそこでもがいている地球外生命体を一人部屋に突っ込む為の許可書だ。風紀の判は押してある。後は寮長の判だけだ。こちらの安寧を守る為、そしてあんた達にとっては絶好のチャンスだ。勿論、許可を出すよな?」


 半分ドスを聞かせながら寮長に言う。


 寮長は少し考えるそぶりを見せてから宇宙人の方を見て、俺達の方を見て頷いた。


「分かった。部屋交換の許可は出そう」


 そう言って寮長は素早く保管してあった寮長の判を出すと、その書類に押してくれた。よっし。第一段階成功!!


「有難う御座います。…………これで貴方のベッドに大量のアマガエルを解き放つ必要がなくなりました」


 最後のボソリと呟いた言葉に寮長の体はビクリッと振るえ、こちらをとてつもなく恐ろしい何かを見るように見てきた。良かったな、寮長。


 でも俺はあんたに恨みはまだ残っているんだ。今度は夜道以外も気を付けろよ。


「ちょっと!! 部屋交換ってどう言う事だよ??!」


 ……話が纏まった所で、縄抜けならぬ布テープ抜けから馬鹿力でもって抜け出したのであろう宇宙人の猛抗議が始まった。


「見て、聞いていた通りだ。本来、お前は一人部屋になるべき人間だったんだ。別に一人部屋でも良いだろ。寧ろ一人部屋になれた事を嬉しがれ。お前が部屋を出てってくれると俺も喜ぶ」


「何でだよ??! 俺、別に四紀と一緒のままでも構わないんだぞ??! なのに何で??!」


「一つ、お前が来てから他のやつ等までやって来て、煩い」


「あれ? もしかして部屋にいた事もあったのか? だったら一緒に混ざれば良かったのに…」


 それが嫌だって何回言わせれば気が済むんだ。この宇宙人!!!


 だが、突っ込みを入れても平行線なのでこのまま無視して話を続ける。


「…第二に人のプライバシー領域に寮長が持っているマスターキーを使って勝手に開け様とした」


「やっぱりあの時居たんだ!!」


「お前には常識が無さ過ぎる」


「なっ! そんな酷い事言うなよ! 友達だろう?!」

「これは友達云々以前の問題。それに俺はあの時に確かにはっきりと友達になる気は無いと言った。それをどう解釈して友達になるんだ。いいか。もう一度言う。俺は勿論、そこの吉永はお前と友達になる気は一切無い。今後関わって来るな。…で、お前には一人部屋を与える。その方が被害も少なくて済む。有無を言わせない」


「そ、そんな…! でも…っ!!」


 何かを喚きながらも言っているが、これ以上こいつの相手をする気はこれっぽっちも無い。


 寮長の許可証の判も押された事だ。強制執行に出る事にする。


 徐に懐から携帯を取り出すと、ある所に電話を掛ける。


「あ、もしもし。先程部屋の移動をお願いした流山ですけど。……はい。部屋移動開始して下さい」


 ピッと電源を切る。


「良かったな。後十分後にはお前は新しい部屋だ。吉永の部屋の荷物は全て運ぶだけになっている。お前の荷物はまだダンボールのままのやつが多かったのが幸いした。今回は風紀のマスターキーを貸して貰った。部屋に入って荷物に勝手に触った事は謝ろう。だが、お前にはこれ位をしないと分からないからな」


 勿論、相手が宇宙人でこの移動が一筋縄でいかないと分かっていたから、無理を言って風紀に借りた。まあ、相手も分かっていたからすんなり行ったけどな。


 そう言って俺は視線を吉永に向ける。視線が合い、それぞれ頷きあう。


 吉永は懐からカードキーを取り出し、それを宇宙人に投げ渡す。


「これが、今日から君の部屋のカードキーだ。既に情報も書き換えてある。寮長は後で確認しておいて下さい。そして…」


 言いながら吉永は懐からもう一枚カードキーを出す。これは俺が宇宙人から掠め取った物だ。


「これからはこのカードが俺の物になるからね。部屋、戻る時は間違えないでね」


「え? え? ええ??」


 話に付いて来られない様だ。本当にこいつ勉強だけは出来る馬鹿だな。


「じゃ、話は終わった。俺達はもう行く」


 そう言って、何か声を掛けられる前にさっさとその部屋から退散した。


 第一のお願いはこれで終了した。


 部屋に行くと既に宇宙人の荷物が撤去され、吉永の物が入っていた。


 俺達は風紀委員室を出た後、学校の授業を今日一日休んだ。


 勿論、此方には風紀の許可を貰っているので授業は公欠扱いだ。今ままで強制連行されていて出れなかった授業分も風紀が公欠扱いにして置くと言ってくれた。


 生徒会の奴等は特権とかで授業に出なくても点数さえ取れれば良いなんてもんを持っている。


 オマケに一般生徒を公欠扱いにする事も出来る。


 が、奴等が吉永の為にそんな事をする筈も無い。結果、吉永はかなりの日数を休んでしまう事になった。


 だが、同様に風紀にもその許可を出す事が出来るので、今回は今までの休みを公欠扱いに有難くして貰った。


 それもあってか吉永の顔色はすこぶる良い。


 まあ、少しでも宇宙人の被害が減ったからだろうが。


 俺達はその公欠を無駄にしないよう、すぐに部屋を交換出来る様に吉永の部屋の物を片付けた。そして移動するのに業者を手配をしておいたのだ。お坊ちゃん学校御用達の。御用達だからすぐに来た。


 何て素早い。


 しかも費用は風紀持ちでしてくれると言うからますます有難い。


 いや、本当に有難い。


 そして部屋に戻ると、俺は早速吉永の持っているカードにも手を加えた。これは共用玄関もまた改造してマスターキーで強引に開けられない様にする為だ。


 風紀の持つマスターキーカードでは開けられる様にしておくけど。


 勿論、この部屋を使い終わった時には元に戻す。


 そうしてその作業が一段落するとリビングの備え付けのソファに二人揃って座る。


 どちらからも一斉にため息がこぼれた。

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