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風紀の現状

 風紀室に初めて来た。それは生徒会室も同じ事だったがあちらは異界。こちらも生徒会室同様、煌びやかではあるが、品の良さが漂っている。


 所属する人間の違いがこうも部屋に表れているとは…。


 委員長様が先に中へ入ると声が聞こえて来た。気配から一人部屋にいた様だ。



「おや? 八城はん、ようお帰りにならはったんどすか?」


 滑らかな京弁で答えたのは老舗呉服店を営む実家を持つ新垣芳春あらがきよしはる


 風紀委員の副委員長だ。


「ああ、見回りに出たらあの地球外生命体一派の被害に遭った生徒を拾った」


 言いながら委員長様は此方を見る様に副委員長様に示めす。自然と副委員長様と目が合う。


「おやおや、そら災難どしたねぇ。どないぞ中にお入りおくれやす。ちょうど里から届おいやした京お菓子がおますんや」


 何か調書がついでのお茶会に突入した。


「それにしいやも、ほんまに阿呆ばっかりどすなぁ…。恋は人を変えるとはよう言いるけど、変わりすぎどす」


 極上の玉露に京菓子を振る舞いながら副委員長様が言う。


「馬鹿なのだから仕方が無い。二人の話を聞くと理不尽極まりない。流山と言ったか」


「はい」


「お前の場合は特に酷いな。吉永への暴力もだが、言葉の通じない猿をあしらっただけで退学とは…。まぁ、今回はあの甥馬鹿理事長の気紛れで助かったが」


 気紛れじゃなくあのアホ理事長が勝手にじじいを怖がっただけだけどな。


「大人しく奴らの言う事を聞く気はありません。奴らのお陰でどれほどの被害を被っているか。俺も吉永も二次災害にも遭ってるんで」


「そうです…。あの生徒会に勝手に熱上げておいて奴等の周囲に蔓延り、被害妄想も激しい彼らにも」


 風紀委員の態度に緊張が解けたのか吉永も同意して、現状を訴える。


「親衛隊か…」


 すると二人の表情も苦々しい物になる。こちらも相当手を焼かされているのだろう。


「あいつらん気持ちも分からなくはあらしまへんが、此処数週間で校内ん雰囲気も風紀も過去最低ん悪さや」


「俺達も本来なら普通に授業を受けている筈なんだがな。正直人手が足りない位の忙しさに見舞われいる」


 確かに、授業中不届きな事をしないやからがいない訳では無い為、風紀委員が見回りを交代でしてる。だが、それ以外はきちんと真面目に授業を受けている。それは勿論この二人も同様だ。


 そこまで状況が悪化しているのだろう。


 そう言えば最近、風紀委員を見てなかったのはそのせいだ。だから俺も吉永も彼らの存在をすっかりと忘れてしまっていたのだった。


 此処にまで被害が。恐るべし皆川。


「それにお二人には謝らねばなってまへん。二人ん事は他ん委員からも報告に上がてたんや。すぐに風紀を回そないとどしたらそれ以上ん速さで例ん転校生が問題を起こしいや、間に合わおへんどしたのどす。ほんまに申し訳あらしまへん」


「いいえ。風紀委員の忙しさが目に浮かぶ様ですので」


「俺も集団で暴行やら下駄箱とかの古典的な嫌がらせは受けましたが、それ以上の目にはまだ遭ってませんし…」


 吉永の方が状況的にも酷い。だが、小心者でチキンと言っていた割には案外、強い。精神的に強いタイプなのだろう。だから、此処まで耐えて来た。だが、こんな事がこれから先も続けば吉永は更にボロボロになってしまう。


 俺と違って特殊な訓練等を受けたのでは無い。ごく普通の生徒なのだ。


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